NO.187
2002.5.15

アメリカのユネスコ・早期復帰を期待する

 ユネスコ復帰・米前向き姿勢 遠山文科相に表明
 【ワシントン2日=共同】ロッド・ページ米教育長官は2日、訪米中の遠山敦子文部科学相との会談で、運営体制への不満を理由に84年に脱退した国連教育科学文化機関(ユネスコ)について「早期に復帰したいと考えている」と述べ、復帰に前向きな姿勢を示した。遠山文科相が記者会見で明らかにした。   
                   朝日2002.5.4朝刊・NHKTVニュース3日他

 アメリカが1984年ユネスコから脱退してから既に17年が経過した。英国とシンガポールがこれに倣ったが、英国は1997年トニー・ブレア首相のもと復帰した。1995年クリントン大統領はユネスコに対し再加盟の用意があると語っており、松浦晃一郎氏は1999年秋ユネスコ事務局長に選出されて以来アメリカの復帰を促している。


 私たちは民間ユネスコ運動に関わるものとして、アメリカが一日も早くユネスコに復帰することを期待する。ユネスコ憲章前文「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」との有名な言葉は、実はアメリカの詩人マックリーシュが磨き上げたものであった事を、すべてのアメリカ人が思い起こして欲しい。そのときマックリーシュはユネスコを創立するために集まった人たちの中でアメリカを代表する一人であった。アトリー英国首相が新約聖書「ヤコブの手紙第4章」を引用した草案を、ここまで美しくユネスコの精神の結晶として格調高く歌い上げた詩人の偉大さを、誇りをもって思い出し、その精神を継承して欲しい。この美しく、世界に平和をもたらす言葉を、アメリカの友人とともに声高らかに唱え、心の中にはっきりと刻みたい。アメリカがユネスコから脱退していた17年間の多大な喪失を一刻も早く修復し、世界の平和に寄与することを切望する。 
              
                 2002.5.4
             目黒ユネスコ協会会長 加藤玲子

あなたがこの「アピール」に賛成でしたら、ご友人の一人にでもこの「願い」をお伝え下さい。
とくにアメリカの友人にお伝え下さると幸いです。小さな願いを大きな願いにしたいと希望します。
 
  脱退理由等、若干の解説を試みました

この項は多数の方のアドバイスを広報委員会がまとめました。ご協力を感謝します 

アメリカ と ユネスコ

 アメリカはなぜユネスコを脱退したのか。アメリカの公式文書によれば次の通り。

◎「数年間にわたり、我々は、ユネスコ政策・イデオロギー上の力点及び予算・管理の傾向がユネスコの効率を損なってきたことに懸念を表明してきた。こうした傾向は、憲章の当初の原則から次第にかけ離れてきたと言わざるをえない。そしてまた、ユネスコの国際的任務というより、加盟国の政治的目的に奉仕してきたと感じている。」   (米国の脱退通告から・1984.12.28)

◎「1: 脱退する旨の決定は、国務長官の勧告に基づいてレーガン大統領によって行われたものである。
2: その勧告は、以下のような経験に基づいている。すなわち、ユネスコは、その扱うほとんどすべての課題を政治化してきたこと。自由社会、特に自由市場や自由な報道という基本的制度に対する敵意を表わしてきたこと。際限なく予算を膨張させてきたこと。
3: 国務省国際機関局は、米国とユネスコとの係わりにつき、「政策レビュー」を実施してきたが、その結果、我々は米国のユネスコヘの継続的参加は米国の利益にそわないとの結論に達した。」
(米国務省発表のステートメントから・1984.12.29)

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◎「米国務省発表のステートメントの2」について
ここには三つの理由が書かれています。政治化とは「南北問題」が背景にあり、アフリカ諸国がソ連(当時)の後押しで発言権が拡大した事に対するいらだち、それを代表する「ユネスコの政治家」ムボウ・ユネスコ事務局長を忌避したことと一般的には受け取られています。二番目は「新世界情報秩序」の問題です。今でも世界に発信されるニュースは西側が圧倒的ですが、発言権を確立しようとした新興諸国の願いは1974年の総会から姿を現しています。アメリカはじめ西側の猛反対もあり、議題として成熟せず不完全燃焼に終わりました。三番目はずさんな経営管理です。アメリカは脱退直後自国の「監査団」を派遣して徹底的な監査をしましたが不正は発見出来ませんでした。

◎ 脱退後のアメリカの姿勢
アメリカは脱退後もユネスコにオブザーバー・ミッションを置いています。そして世界遺産保護・政府間海洋学委員会・人間と生物圏計画等、関心の深いユネスコ事業には必要な資金を拠出しています。しかしユネスコ事務局の分担金(当時四分の一)が支払われないので日本の負担が増えています。

◎ 「日本も脱退すべきだ!。」
 アメリカについで日本も脱退したらどうかという提案が当時ありました。ユネスコ国内委員会で民間ユネスコ代表委員がそれを知り、他の委員と協力してユネスコにとどまることに成功したという苦労話があります。民間ユネスコ活動に携わる私どもにとって、傾聴すべき事であると思います。
 
◎ 私たちの願い
 私たちは、アメリカがユネスコに復帰して、世界の平和に貢献することを願っています。アメリカ政府がユネスコに復帰すると同時に、アメリカの民間ユネスコ活動が政府および行政の支援のもとに、更に活発な活動が出来るようにと願っています。この願いを多くの方々と共有し、手を携えて、大きな願いに発展させて行きたいものです。

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