2020.09.15
バイヨン寺院ナーガ像・シンハ像修復プロジェクト完了!
世界遺産「アンコール」は、クメール王国の栄華を象徴する遺跡群で、1992年に世界遺産リストに登録されるのと同時に、
危機遺産リストに登録されました。日本をはじめとした多くの国々の協力により、2004年に危機遺産リストから削除されましたが、
カンボジアに平和が訪れた後も、依然として課題を抱えています。
日本ユネスコ協会連盟では、遺跡の保存・修復と、人材育成や子どもたちへの教育といった総合的な世界遺産の保存・継承を目指し、
2つのプロジェクトに取り組んできました。
アンコール遺跡群のあるシェムリアップ州は、世界中から観光客が訪れる著名な観光地です。しかし、少し外れた地域に住む人たちの多くは、アンコール遺跡に訪れたことがなく、その歴史について学ぶ機会も少ない状況です。そのため、遺跡の一部を建築材として使用したり、売買したりする問題も発生しています。
シェムリアップに住む子どもたちが、身近な文化を楽しみながら学ぶことを目的に、アプサラ機構(アンコール地域遺跡整備機構)、シェムリアップ州教育青年スポーツ局とともに世界遺産「アンコール」をモチーフにした塗り絵教材を制作しています。それらの教材を用いて、学校や寺子屋の復学支援クラスの子どもたちに、アンコール遺跡の歴史や文化を伝えています。
授業の中で、アンコール遺跡の歴史や遺跡に使用されているモチーフの意味や神話等を学んだ後、実際に遺跡に訪問して学びを深めています。
【これまでに開発した塗り絵教材】
・第1弾「アンコール遺跡群の石像・レリーフ」
・第2弾「カンボジアの無形文化遺産(伝統舞踊アプサラダンスなど)」
・第3弾「カンボジアの伝統的な暮らし」
タヤック寺子屋に通うヤム・ビッセイさん(14歳)
バイヨン寺院の課外学習会に参加できて、本当に楽しかったです。この課外学習会を通じて、他の寺子屋に通う新しい友だちができたこと、また、歴史や修復作業の方法など、たくさんの新しいことを学ぶことができてうれしい。また学習会に参加したい!
タヤック寺子屋に通うファイ・チョヴィーさん(復学支援クラス1年生)
遺跡にはこれまで来ることができず、見るのが夢だったのでうれしかったです。歴史や神話についての先生の解説は、全部面白かったです。もっとたくさん遺跡を見て、もっと勉強したいと思いました。
アンコール遺跡群の一つ、バイヨン寺院の外回廊に設置されているシンハ像・ナーガ像および欄干は、崩落や破損が進行していました。また、遺跡の一部が周辺に散乱し、さらにその上に土砂がたまり、大きな土塁となっていた箇所もありました。
2012年からJASA(日本国政府アンコール遺跡救済チーム)の技術協力を得て、JST(アンコール遺跡人材支援機構)とともに、彫像群の修復と、カンボジアの人びとの手で遺跡を守り伝えていくことができるよう若手の人材の育成を行いました。
©︎NFUAJ/JST, JASA
2020年8月、本修復プロジェクトが完了しました。
地盤の緩みや寺院の基礎部分の沈下によって、彫像・欄干を支えていた床石が割れ、多くの遺跡が散乱していましたが、それらの元にあった位置を特定し、倒壊の危険のある個所の解体・再設置作業を進めた結果、景観が整い、安全面も向上しました。
同時に、カンボジアの人たちの手で持続的に遺跡の保全・継承を行うことを目指し、9人の青年を技能員として育成しました。事業終了後、彼らはJASAの修復現場で活躍しています。
©︎NFUAJ/JST,JASA©︎NFUAJ/JST, JASA
バイヨン寺院敷地内にあるバイヨン・ハット脇には、世界遺産活動にご寄付いただいた方々のお名前が刻まれた銘板が設置されています。
本事業完了後は銘板も含め、カンボジア政府の管理下となります。
©︎NFUAJ/JST, JASA
コン・ラックスメイさん
多くの技術が必要なこの仕事を、とても楽しんでできました。仲間たちも、いまでは石材修理、新材加工、機材運転などさまざまな分野のエクスパートです。より技術を磨き、次世代へと引き継ぎたいです。
ノヴ・ソピアックさん
遺跡にはこれまで来ることができず、見るのが夢だったのでうれしかったです。歴史や神話についての先生の解説は、全部面白かったです。もっとたくさん遺跡を見て、もっと勉強したいと思いました。
私たちの活動には、多くの方々にさまざまなかたちでご協力・ご支援をいただいています。
わたしたちの想いに共感してくださる方を、心よりお待ちしております。ひとりひとりの力を未来の力に。