未来遺産運動ニュース2024年12月号増刊:企業と共に地域の自然を未来へつなぐvol.3
未来遺産運動では、地域の自然・文化の保全と継承を目指して、企業の社会貢献活動との連携を進めています。今回は、当連盟とダンロップの協働事業「チームエナセーブ未来プロジェクト」の一環として、 福井県越前市、岩手県一関市に続き、 10月6日に福岡県福岡市で実施した活動について、受入団体「和白干潟を守る会」の声をご紹介します。
大都市近郊に残された渡り鳥のオアシス
博多湾の東奥部に位置する和白干潟は、大都市近郊にありながらも国内では数少ない自然海岸が残された干潟です。貝、カニ、ゴカイなどの多くの底生生物が住む砂質の干潟には、水鳥などのこれらを餌とする多くの生き物たちが集まり豊かな生態系を育んでいます。また、東アジアの渡り鳥の渡来地として国際的にも重要な湿地であり、湿地を保全する国際条約であるラムサール条約の登録に向けた国内の潜在候補地にも選定されています。
危機を乗り越え、今もなお続く和白干潟への思い
かつて、この和白干潟は、高度経済成長の中で持ち上がった博多港港湾計画による埋め立ての危機に瀕していました。消失の危機にあったこの貴重な自然を守ろうと福岡市に対して請願書を出したことが契機となり、和白干潟の大切さを伝え続けるために1988年に「和白干潟を守る会」を結成。和白干潟の自然観察会、クリーン作戦、そして干潟の健康度を測るための調査を活動の柱として、35年以上にわたり干潟の変化を見守りながら活動を継続してきました。(この活動は2013年に 「プロジェクト未来遺産」に登録)
10月6日の「和白干潟の自然観察会とクリーン作戦」
ダンロップ社員とそのご家族総勢32名にご参加いただき、自然観察会とクリーン作戦を実施しました。観察会では、干潟に集まってきたホウロクシギやクロツラヘラサギやカワウ、サギの群れなどを観察した後、砂洲に移動してカニ探し、その後は沖まで行ってアサリを探しました。
続くクリーン作戦では、干潟のゴミ拾いを行いました。沖合に建設された人工島の影響で、近年この時期をピークに大量発生しているアオサの回収が中心となり、皆さん汗だくになりながら計30袋分のアオサを回収していただきました。堆積したアオサは放置するとヘドロ化し、水質低下や悪臭の原因となり、アサリの大量死にもつながるので、多くの方の手できれいにすることができ大変助かりました。
子どもたちやダンロップ社員のみなさんが一生懸命に手伝ってくれる姿は、私たちにとって大きな励みになっています。
活動を通して伝えたいこと
自然観察会では、五感を使って和白干潟が育む豊かな生態系に実際に触れることで、生命の大切な営みを理解し、干潟の生き物たちも私たちと同じ地球の仲間だということを体感していただくことを重視しています。クリーン作戦では、まずは「ゴミを捨てない」という意識を持ってほしいと思います。とりわけ子どもたちの吸収力はすごいので、小さいうちにこうした経験ができる場をつくることが大切だと考えています。今回参加してくれた子どもたちも、実際に自然に触れて感動する体験を通じて、将来に渡り自然を大切にする心が育ってくれることを願っています。また、参加いただいた皆さんには、これをきっかけに企業活動でも環境を守る意識をもってもらえたら素晴らしいと思います。
今回の活動の詳しい様子は、当会ホームページでもご紹介しています。ホームページには、今後の活動予定や、和白干潟の自然や生き物たちの紹介、当会独自の環境教育プログラムのリーフレットなども掲載しています。私たちの活動に加わってくれる会員やボランティアも随時募集していますので、ぜひお気軽にご参加ください。
未来遺産運動では、多くの方々に身近な地域や全国各地の「プロジェクト未来遺産」に関心を持っていただくことで、地域を越えた新たなつながりを生み出し、全国に応援の輪が広がることを目指しています。
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