フリーアナウンサー久保純子広報特使による「特使通信」カンボジア訪問記【第4回】
世界寺子屋運動30周年を記念し、 ユネスコ世界寺子屋運動の久保純子広報特使が2019年3月、10年ぶりにカンボジアを訪問。今月の「特使通信」カンボジア訪問記を配信いたします。
前号で紹介したチョンクニアの水上寺子屋では、他にも素敵な出会いがありました。寺子屋運営委員で、収入向上プログラムの担当をしているオム・ナレンさん。11歳の時に、地元の小学校に入学し、成績優秀で、いつも一番をとっていたというナレンさんですが、突然、5年生の時に、両親から退学するように言われたとのこと。その理由は、父母が漁業に出るため、幼い兄弟の世話と家事の一切をまかなうためでした。
当時の思いを振り返って、「学校に行きたかったので、とてもがっかりした」といいます。その後、3度の食事作りに始まって、市場への買出し、5人の兄弟たちの面倒まで、家事に専念し、学ぶ機会はありませんでした。転機が訪れたのは、寺子屋ができて、そのスタディツアーに参加した20歳の時。ホテイアオイ製品の研修を受けて、カゴ作りを開始。漁業がふるわなくなってきていた家計の手助けができるようになったのです。以降、精力的に活動し、31歳になった今では、収入向上プログラムのリーダーであり、若い世代から憧れられる存在になっていました。
ナレンさんは、女性が教育を受ける大切さをこう説いています。①家族から尊敬を得て、結果、自尊心につながる。②収入を得ることで生活を向上させることができる。③夫から敬意を払われ、妻の存在意義を問うことができる。④子どもへの教育の大切さを痛感する。ナレンさんの思いから、女性の地位向上や差別解消が求められていることが伺えます。先進国では、今では当たり前のように捉えられている価値観も、カンボジアでは、依然、切実な問題なのです
夢は、結婚して夫と二人の子どもと幸せに暮らし、文具店を営むこと、と語るナレンさん。今は、「誰も結婚しよう!と言ってくれないの」と笑って話す彼女でしたが、パワーみなぎる力強い姿は、最高に輝いて見えました。