フリーアナウンサー久保純子広報特使による「特使通信」カンボジア訪問記【第8回】
世界寺子屋運動30周年を記念し、 ユネスコ世界寺子屋運動の久保純子広報特使が2019年3月、10年ぶりにカンボジアを訪問。第8回目の「特使通信」カンボジア訪問記を配信いたします。
シェムリアップから東へ車に揺られて1時間、タヤック寺子屋は、初めて訪れる学び舎でした。ここでは、収入向上プログラムを見学することができました。収入向上プログラムには、ホテイアオイのカゴ作りや家畜の飼育、カンボジアの伝統音楽を上演するなど、様々な活動があります。その一つが、ライスバンク。農閑期にお米を村人に貸して、収穫期に少量の利子をつけてお米で返済してもらうというシステムです。これを利用すると、農閑期も食料確保のために出稼ぎに行く必要がなくなり、親は子どもたちと過ごすことができます。
61歳になるヴォン・カムリーさんがライスバンクを任されていました。現在、26人の村人に対して、300キロのお米を貸し付けているそうです。誰がどのくらい借りて、いつ返すことができたか。帳簿に細かく記しされている数字から、カムリーさんの几帳面さを垣間見ました。村人に喜ばれている理由の一つが利子。他で借りると、利子が100%というところもある中で、タヤック寺子屋では、15%の利子で借りられるというのが大きな利点です。カムリーさんは、「こんなに重要な仕事を任されるとは夢にも思わなかった。私の生きがいです」と目を輝かせながら話していました。
そして、もう一つの活動、寺子屋からマイクロクレジットといわれる小口融資を受けて、ジューススタンドを始めた女性にも会うことができました。ニュン・チョムパイさんは40歳。$300の資金を借りて、機械を購入し、街角でサトウキビのジュースを売っています。1日$10の収入を得て、子どもの教育費や日々の食料代に充てることができているそうです。自分の手でお金を稼ぐことができていることが大きな喜びだと言います。
寺子屋が、読み書きの学び舎にとどまらず、コミュニティーの発展や村人のやりがいを促す場所として大切な役割を果たしていることを目の当たりにしました。