「プロジェクト未来遺産2022」6プロジェクト登録決定!~地域の文化や自然を100年後の子どもたちに~
日本ユネスコ協会連盟では、日本の豊かな文化や自然を、地域の“たからもの”として100年後の子どもたちに伝えていくことを目指し、2009年から未来遺産運動を行っています。未来遺産運動は、地域の文化・自然遺産の継承に取り組む市民の活動を「プロジェクト未来遺産」として登録し、日本全体で応援する運動です。
コロナ禍以来3年ぶりの募集となった「プロジェクト未来遺産2022」には、全国から例年を上回る33件の応募がありました。書類選考を通過したプロジェクトに対し、専門家による現地調査を実施し、2月28日(火)に開催された未来遺産委員会(委員長:西村幸夫/國學院大學教授)での最終選考を経て、以下6件の登録が決定しました。 今後は、4月以降に、各登録地において登録証伝達式を開催する予定です。
県内初の登録となる群馬県、千葉県及び山梨県のプロジェクトを含む6プロジェクトの詳細は、以下の未来遺産運動のホームページでご紹介しております。
■「プロジェクト未来遺産2022」登録プロジェクト紹介
【沼須人形芝居継承者プロジェクト~江戸時代の技を今につなぐ~】
沼須人形芝居あけぼの座 (群馬県沼田市)
沼須人形芝居は、幕末の安政年間に始まり、明治中期に最盛期を迎えた一人遣いのハサミ式指人形が特徴の人形芝居である。昭和に入って長らく中断していたが、1975年に保存会が結成されたことを機に「沼須人形芝居あけぼの座」として復活した。
技術の向上だけでなく人間の成長と人と人をつなぐことを大切に、子どもからベテランまでの座員が一丸となって活動している。また、小学校での体験授業や地域での子ども教室の開催を通じて、子どもたちの郷土愛を育むとともに、担い手の確保に務めている。地域の伝統の継承・公開を通じて住民の交流を促がす取り組みは、地域コミュニティの強化にもつながっている。
【こんぶくろ池自然博物公園~市民で育てる百年の森プロジェクト~】
特定非営利活動法人 こんぶくろ池自然の森 (千葉県柏市)
千葉県柏市北部の市街地に隣接し、東京ドーム約4個分の広さの森と湧水からなるこんぶくろ池自然博物公園。市街地開発による周辺地域の環境悪化が進む中で、1980年代に市民による「こんぶくろ池」と周辺の森の自然環境を守るための活動が開始され、現在は、里山保全活動やモニタリング調査をはじめ、近隣大学と連携した希少種の保全再生プロジェクト、市内多数の小学校の受け入れなど、ボランティアを中心に多様な活動が展開されている。都市近郊に残された貴重な自然環境を市民が主体となって守り、次の世代へと継承していくとともに、人と自然が共生する街づくりを進めている。
【若狭町の歴史遺産の縄文文化を全国へ】
若狭三方縄文博物館友の会「DOKIDOKI会」 (福井県三方上中郡若狭町)
日本海に面した若狭湾沿岸にある三方五湖の一つ、三方湖のほとりには縄文時代草創期から前期を中心とした低湿地遺跡である鳥浜貝塚がある。この貝塚の程近くに開館した若狭三方縄文博物館の初代館長 梅原猛の理念に賛同し、縄文のもつ共生と循環の世界観を発信するために地域住民の有志により設立されたのが、若狭三方縄文博物館の友の会「DOKIDOKI会」である。
博物館と縄文ロマンパーク、そして周辺に広がる三方五湖をフィールドとして、博物館と連携しながら、6つの部会(縄文の森づくり・くすりやさん部会、縄文食部会、縄文グッズ部会、広報部会、アンギン部会、縄文学研究部会)に分かれて、縄文文化の魅力を発信するためのさまざまな活動を行っている。
【源流大学~知識だけでなく、生きた知恵を次世代へ~】
特定非営利活動法人 多摩源流こすげ (山梨県北都留郡小菅村)
多摩川の源流部に位置する山梨県小菅村には、源流の豊かな自然の恵みと共に生きる人びとの暮らしが存在する。少子高齢化が進み、源流域の優れた自然や文化が失われつつある中、小菅村とNPO法人多摩源流こすげ、大学そして地域住民の協働により、源流域での体験活動をとおしてこの地域の「生きた知恵」と「技」から学ぶための場として開始された「源流大学」。
体験交流プログラムや源流食文化体験プロジェクト、源流体験教室を通じて、上下流域に暮らす人びとの交流を促し、流域全体のつながりや、豊かな源流資源の保全・活用のための人材育成やコミュニティ形成を目指している。
【三石灯りの街~子どもたちと伝える耐火煉瓦で栄えたまちの記憶~】
Mプロジェクト協議会 (岡山県備前市)
岡山県備前市三石地区は日本の近代化を支えた耐火煉瓦産業で栄えたまちである。その当時の隆盛を伝える近代建築群が織りなす景観と、まちの歴史の記憶を守り伝えるために、地域住民が一丸となって多様な活動に取り組んでいる。
四列穴門等煉瓦溝渠群(よれつあなもんとうれんがこうきょぐん)や三石尋常小学校旧講堂などの特色ある建造物を有する町並みの価値を再発見し現在に伝えるイベント「三石灯りの街」をはじめとして、写真展の開催や地図やグッズなどの制作を通じてまちの記憶を見える化し、新たなまちの魅力の創出と子どもたちの郷土愛の醸成を図っている。
【大東太鼓~北大東島の子どもたちが伝える開拓の文化~】
大東太鼓 北曙会 (沖縄県島尻郡北大東村)
沖縄本島の東方約360kmに位置する周囲13.52kmの小さな島に、八丈島からの開拓者によって持ち込まれた八丈太鼓。北大東島の大東太鼓は、この伝統的な八丈太鼓に、和太鼓奏者 林英哲氏の現代的な太鼓が加わったことで、独自の演奏スタイルの大東太鼓として花開いた。
島内には大人の指導者がいないため、最上級生である中学3年生が下級生を指導することで、子どもから子どもへと技術が継承されている。幼稚園から中学生までの子どもたちによって繰り出される力強い太鼓の演奏は、村の行事や祭事には欠かせない存在となっており、村をあげて子どもたちを応援することで住民の誇りと一体感を生み出している。
■未来遺産委員会 委員長 総評
未来遺産委員会 委員長 西村 幸夫(國學院大學 教授)
今年は全体として、「次の世代に引き継ぐ」というメッセージが強く意識された未来遺産運動の趣旨に沿った応募が多かったと思います。伝統文化や自然を次世代に継承していくことは難しいがゆえに、地域にとって非常に大きな課題となっていますが、それぞれの地域で今回登録されたプロジェクトのようなモデルとなる取組みが出てきて、それを共有していくことで、多様な取組みを100年後に残すことに寄与できると素晴らしいと思います。
「プロジェクト未来遺産」には、これまでに、地域性を反映する歴史的町並みや、伝統芸能・祭事、自然環境などを対象とした、市民が主体となって行われている79の活動が登録されています。登録プロジェクトの詳細は以下のホームページにてご覧いただけます。
未来遺産運動では、ひとりでも多くの皆さまに、身近な地域や全国各地でがんばっている「プロジェクト未来遺産」に関心を持っていただくことで、地域を越えた新たなつながりを生み出し、日本全国に応援の輪が広がることを目指しています。
~未来遺産運動は、以下の企業にご協力いただいています~
特別協力:東日本旅客鉄道株式会社、住友ゴム工業株式会社、ジェットスター
後援: 読売新聞社、環境省、日本ユネスコ国内委員会