“魔法の手”でよみがえる?
はじめまして。星埜と申します。
8月の末、宮城県石巻市旧雄勝町に伝わる国の重要無形民俗文化財「雄勝法印神楽」への支援のため現地を訪れました。
旧雄勝町は、およそ90パーセントが被災。神楽に使われてきた太鼓や面、笛、衣装などのほとんどが津波で流されてしまいました。遠く金華山沖まで流された太鼓が一つ、傷だらけの状態で発見されたということもありました。
穏やかになった雄勝湾で雲丹を洗うひと
さて今回のミッションは、津波で流された神楽のお面をよみがえらせること。
財団法人美術院国宝修理所のご厚意で、はるばる奈良から宮城県石巻市旧雄勝町までお二人の国宝修理人に足を運んでいただきました。
“お面をよみがえらせる”と聞いて「はて?」とイメージのわかない方も多いかもしれませんね。私もどんな風に行われるのか、想像もつきませんでした。
もともと保存会で使っていた神楽面は、常時27面ありました。能面とは風合いの違う特色のある雄勝法印神楽のお面。残念なことに、今回の津波ですべて失われました。面が無ければ、一演目も演じることはできません。
「あー、あの人がつける姫面はえがったな。」
「会長はあっちを使うけど、おれはこっちがお気に入りだったんだ」。
保存会の会員一人ひとりが、一面一面それぞれの面について着けなれた形と厚み、大きさ、そして微妙な表情に強い愛着を持っていました。そして、その愛着ゆえに復刻が難しくなっていることも事実です。
この保存会の方々の面復刻への切なる願いにお応えすべく、難しい作業に取り組んでいただいたのは、美術院国宝修理所の古谷副所長と片山技術補。
おふたりは、雄勝湾に面する葉山神社内に設置されたプレハブの保存会事務所に到着するとすぐに、持参した白い作務衣を羽織り、残された写真や数種の面を頼りに、面の厚さ、各部分の凹凸、目の表情、地の色などきめ細かく保存会の方に意見を聞きながら、なんと4時間で仮型を彫りあげてしまいました。
それにしても、彫刻刀を握る片山技術補の手の動きに迷いのないことといったら。私は、ただただ、魔法のような手の動きに魅せられてました。このお二人の技術もまた、日本の大切なたからものですね。
出来上がった面の表情を見た保存会の方がたは、口をそろえて「これなら、前のと同じだ、いやそれ以上のすごくいい面になった!」と、安堵した表情で口々に喜びの感想を伝えていました。
古谷さんと片山さんは、奈良に戻り、今回つくったバルサ材の仮型から本来の素材である桐材を使って本面の製作に入り、10月初旬までには完成するとのことです。出来上がったら、さっそくホームページ上でもご報告させていただきます。
ところで、2011年10月9日(日)には、鎌倉芸術祭で東日本大震災復興支援芸能公演として、鎌倉宮にて「雄勝法印神楽」の上演が予定されています。保存会では、本公演のときによみがえったお面を身につけて、みなさんにお披露目するのを楽しみにしています。当日は、ユネスコに関係の深い、人間国宝の野村万作さんも応援にかけつけてくださる予定です。
みなさん、よみがえったお面で舞う素晴らしい雄勝法印神楽の演技をぜひ見に来てくださいね。チケット代金は、そのまま雄勝法印神楽保存会への支援金となります。応援をよろしくお願いいたします。
【名 称】 東日本大震災復興支援芸能公演 「雄勝法印神楽」in鎌倉宮
【主 催】 湘南リビング新聞社・雄勝法印神楽公演実行委員会
【共 催】 鎌倉観光協会
【日 程】 2011年10月9日(日)昼の部13時30分開演/夜の部17時30分~
【場 所】 鎌倉宮境内特設舞台(鎌倉市二階堂154)
【チケット】各部3,000円 (昼夜通し料金=5,500円)
★お問い合わせ★
日本ユネスコ協会連盟未来遺産運動 緊急支援係 TEL03-5424-1121(星埜)まで。