「プロジェクト未来遺産2023」に4プロジェクトの登録が決定!
日本ユネスコ協会連盟は、日本の豊かな自然や有形・無形の文化を、地域の“たからもの”として100年後の子どもたちに伝えていくことを目指す未来遺産運動を行っています。
この度、地域の自然・文化の保全・継承に取り組む市民の活動を登録する「プロジェクト未来遺産2023」に4つのプロジェクトの登録が決定しました。
「プロジェクト未来遺産2023」には、全国から19件の応募がありました。書類選考を通過したプロジェクトに対し、専門家による現地調査を実施し、3月8日(金)に開催した未来遺産委員会(委員長:西村幸夫/國學院大學教授)での最終選考を経て、以下4プロジェクトの登録が決定しました。
今後、各登録地において登録証伝達式を開催する予定です。
「プロジェクト未来遺産2023」登録プロジェクト紹介
巨大防浪堤を未来へ~岩手県宮古市田老の津波防災伝承活動~
団体名:特定非営利活動法人 津波太郎
エリア:岩手県宮古市
■プロジェクト概要
岩手県宮古市田老地区は明治29年と昭和8年の三陸大津波によって壊滅的な被害を受け、昭和9年から村長の掛け声のもと、村民たちが石を運んで積み上げた最初の防浪堤(防潮堤)が今も残る。
特定非営利活動法人 津波太郎は、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた田老地区の復興支援を推進してきた団体を前身とし、未来に向けた「まちのこし」活動を行っている。その活動は、防浪堤をシンボルとしつつ、津波被害の実態や記憶を記録・伝承し、地元の教育機関と連携した防災教育を主軸とするものである。津波防災の先進地として、海と共存しながらふるさと愛を醸成し、日本そして世界の津波防災・減災の取り組みにつなげていくことを目指している。
伝統芸能石見神楽を未来に継承サポートプロジェクト
団体名:どんちっちサポートIWAMI
エリア:島根県浜田市
■プロジェクト概要
「どんちっちサポートIWAMI」は、島根県西部の石見地域を中心に伝承される石見神楽の後継者育成と、石見神楽を通じた青少年育成を目的に設立された。
「どんちっち」とは子どもの言葉で石見神楽を意味し、浜田市内の11団体に所属する各子供神楽の相互連携を図り、総合的な公開の場として「いわみ子供神楽フェスタ」の開催や、神社清掃、自主製作した「石見神楽カルタ」を用いたカルタ大会を実施している。
自身の所属する団体だけではなく、市内全体を視野に入れた活動に参加することで子どもたちの伝承意欲を高め、実際に子供神楽を経験した青年らが神楽のために地域に残り、本団体の活動を支え、石見神楽の伝承を確実なものにしている。
歩こうこどもたち!~未来につながる「備中とと道」~
団体名: 備中とと道トレイル推進協議会
エリア:岡山県笠岡市、矢掛町、井原市、高梁市
■プロジェクト概要
「備中とと道」とは、明治から昭和初期にかけ、瀬戸内海沿岸の笠岡市金浦から新鮮な魚を吉備高原山中の吹屋まで、屈強な魚仲仕(うおなかせ)が夜掛けのリレー方式で運んだ南北約60㎞にわたる山道である。近代化によりこの道は使命を終え、森の中に放置されたが、「備中とと道トレイル推進協議会」の前身団体や地元の個人らによる膨大な作業の末、2017年に1本の道を同定した。この復元した道を「歩く遺産」として後世に残すため多様な活動を展開している。定期的な草刈り、沿道の歴史、文化、自然に触れるトレイルウォーク大会の開催や地元の学校での出前授業、道標整備、ガイドブックの発行等、沿道地域の歴史文化や暮らしの記憶を発掘し、次世代へ継承している。
五島に残る玉之浦神楽~子どもたちへの伝承プロジェクト~
団体名:白鳥神社神楽保存会
エリア:長崎県五島市
■プロジェクト概要
五島列島では神楽が盛んで、福江島の西端に位置する玉之浦町も、400年以上前から、白鳥神社の例大祭などにおいて、宮司と社人によって玉之浦神楽が舞われてきた。そして国の「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に指定された2001年に、白鳥神社神楽保存会が設立された。しかし、地区の高齢化と人口減少により、近年は例大祭において神楽を舞うことができていない。このため、かつて賑わっていた商店街の店の一部を改装した常設の演舞場を創設し、いつでも神楽を舞い、稽古ができる体制を整え、演舞会や子ども神楽教室を開くなど、例大祭の場に限定せず、現状にあった持続可能な形で神楽の継承に努め、子どもたちが地元の伝統文化に触れられる機会を創り出している。
未来遺産委員会 委員長 総評
西村幸夫
國學院大學 観光まちづくり学部学部長
今回応募のあったプロジェクトの多くは、困難の中でも活動を継続し、コロナ禍という大きな試練をも乗り越えてきた力のある素晴らしいものばかりでした。その結果、例年以上に「プロジェクト未来遺産」の趣旨に合致するものが多く、議論は白熱し、審査は非常に難航しました。最終的に選ばれたプロジェクトは、携わる人びとの熱意と工夫が詰まった活動であり、100年後の子どもたちに継承すべき活動でした。また、例年であれば登録に至っていた可能性のある活動も、厳しい競争の中で残念な結果となってしまいましたが、今後も活動を継続していただきたいと思います。
未来遺産運動では、多くの方々に身近な地域や全国各地の「プロジェクト未来遺産」に関心を持っていただくことで、地域を越えた新たなつながりを生み出し、日本全国に応援の輪が広がることを目指しています。