未来遺産運動ニュース2024年11月号増刊:企業と共に地域の自然を未来へつなぐVol.2
未来遺産運動では、地域の自然・文化の保全と継承を目指して、企業の社会貢献活動との連携を進めています。今回は、 前回の福井県越前市に続き、当協会連盟とダンロップの協働事業「チームエナセーブ未来プロジェクト」の一環として、9月7日に岩手県一関市で実施した活動について、受入団体「久保川イーハトーブ自然再生協議会」の声をご紹介します。
自然と人びとの暮らしが融和する理想郷
岩手県一関市を流れる久保川の上流には、起伏に富む地形に、水田や約600のため池が点在する独特の景観と、希少種や絶滅危惧種を含む生き物たちの豊かな生態系が広がっています。当協議会は、宮沢賢治の作品に出てくる理想郷になぞらえて、この地域を「久保川イーハトーブ世界」と名づけ、自然と人間がおりなす恵み豊かな里地里山の景観を守り、次世代へと引き継ぐことを目指して「久保川イーハトーブ世界自然再生事業」(2009年に「プロジェクト未来遺産」登録)に取り組んでいます。
地域の課題と取り組み
この理想郷にも、農業の近代化や、高齢化などに伴う耕作放棄地の増加に加え、侵略的外来種(注1)の侵入による脅威が迫っていました。これに対し、地域内外の関係者が連携し里山の保全再生に取り組むため、2009年に久保川イーハトーブ自然再生協議会を立ち上げました。協議会では、生物多様性を脅かす要因について、保全生態学を基礎とする科学的なモニタリングに基づき対策を検討・実施しているのが特徴です。特に、セイタカアワダチソウやウシガエルなどの侵略的外来種の対策には力を入れてきました。当初は駆除を疑問視する住民も見受けられましたが、継続的な啓発活動によって徐々に理解が得られるようになり、一部では完全排除に成功するなど大幅な防除が進んでいます。
「チームエナセーブ未来プロジェクト」の活動の様子
2014年から数えて8回目となる今回は、ダンロップ社員とそのご家族など約50人にご参加いただき、自然再生地内の散策路整備と植栽を行いました。散策路に間伐材を利用したウッドチップを敷き詰め、外来植物の繁茂を防ぐ対策を実施。さらに、ミズナラやトチノキなど、在来種の広葉樹の苗300本を植栽し、生態系の保全を目指しました。
協議会メンバーの高齢化が進む中、こうした機会に若い世代が関心を持って活動に参加してくれることは非常にありがたいです。毎年この活動を楽しみにしてくれている方がいることも分かり、たいへん嬉しく思いました。今回初めて参加された方々にも、久保川イーハトーブ世界の魅力を知ってもらい、継続的な参加につなげたいと考えています。今年は、活動の最後にイロハモミジを記念植樹しました。来年、その木がどのくらい成長したかを見に再訪してくれることを楽しみにしています。
注釈
- 侵略的外来種:もともとその地域にいなかったのに、人間の活動によって他の地域から入ってきた生物である外来種の中で、地域の自然環境に大きな影響を与え、生物多様性を脅かすおそれのあるものを指す
未来遺産運動では、多くの方々に身近な地域や全国各地の「プロジェクト未来遺産」に関心を持っていただくことで、地域を越えた新たなつながりを生み出し、日本全国に応援の輪が広がることを目指しています。
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