「プロジェクト未来遺産2024」に4プロジェクトの登録が決定!
日本ユネスコ協会連盟は、2009年から日本の豊かな文化や自然を、地域の“たからもの”として100年後の子どもたちに伝えていくことを目指す未来遺産運動を行っています。
この度、地域の文化・自然の保全・継承に取り組む市民の活動を登録する「プロジェクト未来遺産2024」が決定しました。
今年度は、全国から32件の応募があり、書類選考を通過したプロジェクトに対し、専門家による現地調査を実施し、12月16日(月)に開催した未来遺産委員会(委員長:西村幸夫/國學院大學 観光まちづくり学部 学部長)での最終選考を経て、以下4プロジェクトの登録が決定しました。
今後、各登録地において登録証伝達式を開催する予定です。
「プロジェクト未来遺産2024」登録プロジェクト紹介
標津遺跡群の魅力世界発信プロジェクト
団体名:特定非営利活動法人 自然・文化遺産保存活用ネット
エリア:北海道標津郡標津町
■プロジェクト概要
標津遺跡群は、根室海峡沿岸地域に位置し、標津町ポー川史跡自然公園の「伊茶仁カリカリウス遺跡」(国指定史跡)を中心とする遺跡群。縄文時代早期からアイヌ文化期に至る一万年の生活の痕跡を伝える日本最大規模の竪穴住居群で、冷涼な気候により、約4,400を超える竪穴が埋まらずに窪みとして残る。その自然環境の保護や復元、普及啓発を進めてきた3つの町民団体をつなぐ組織として設立された自然・文化遺産保存活用ネットでは、藪に埋もれた100以上の国指定史跡の竪穴住居群を視覚的に顕在化させる活動のほか、周辺の森林保全、地元の小中学校への出講、遺跡ガイドツアーやカヌー体験プログラムの実施など、行政と連携しながら遺跡の保護と価値の普及を目指す取り組みが進められている。
「寺崎のはねこ踊」保存・伝承プログラム~先人の財産を未来へ~
団体名:寺崎はねこ踊り保存会
エリア:宮城県石巻市
■プロジェクト概要
旧桃生町が発祥とされる「はねこ踊り」は、「寺崎のはねこ踊」(県指定無形民俗文化財)として寺崎地区にのみ現存し、江戸時代に豊作に歓喜した人びとが神社に詣で、踊り跳ねたことが始まりとされる。寺崎地区ではさらに工夫を加え、軽快な踊りと徐々に早くなる曲調にあわせて乱舞する舞いが特徴で、田植えや稲刈りなどの所作が見られる。寺崎はねこ踊り保存会では、4年に一度開催される「寺崎八幡神社大祭典」での奉納のほか、地元小中学校や大学生、企業への指導、出張公演など後継者の育成と普及活動が進められている。また、毎年実施される「ものうふれあい祭~はねこ踊りフェスティバル in 桃生~」へ協力し、裾野を広げた伝統芸能の継承と地域振興を視野に入れた取り組みが行われている。
小鹿野歌舞伎継承プロジェクト
団体名: 小鹿野歌舞伎保存会
エリア:埼玉県秩父郡小鹿野町
■プロジェクト概要
小鹿野歌舞伎(県指定無形民俗文化財)は、江戸時代後期に江戸歌舞伎がこの地域に伝えられたのが始まりとされ、それ以降、町内6地域に伝承されている。山車(だし)に張出を設けた「屋台歌舞伎」や、役者のみならず、三味線、衣装、鬘の手入れなどの裏方も全て自前で揃えているのが特徴。小鹿野歌舞伎保存会では、6地域の神社祭礼に奉納する際の演技指導や道具・音楽などの協力のほか、芸能祭や国内外での上演、地元小中学校や「子ども歌舞伎」での指導、裏方養成講座の開催など、氏子以外にも歌舞伎の型・演目の正確な伝承と後継者の育成に努めている。多くの町民が歌舞伎経験者で、若手も指導者を担うといった持続的な体制を整え、「歌舞伎のまち」として民俗芸能の継承が進められている。
クモが紡ぐ!地域のきずな~日本三大くも合戦 横綱決定戦~
団体名:富津フンチ愛好会
エリア:千葉県富津市
■プロジェクト概要
千葉県富津市富津地区で行われている「くも合戦」は、「フンチ」と呼ばれるネコハエトリという1cm程のクモを戦わせる遊びで、江戸時代に漁師の間で広まったと言われ、 昭和40年代頃までは他地域でも行われていたが、時代の変化とともに減少している。富津フンチ愛好会では、繁殖期にオスがメスを取り合う習性を利用して、将棋盤ほどの大きさの土俵で戦わせ、横綱を決定する横綱決定戦の開催のほか、地元の小学校などにおけるクモの採取・飼育講座を実施し、郷土愛の醸成と後継者の育成に努めている。また、大会後はクモを生息地に戻し、クモの生態や生息地の環境に配慮しながら、地域を代表する行事としての継承を目指している。
未来遺産委員会委員長 総評
西村 幸夫
國學院大學 観光まちづくり学部 学部長
今年は最終的に4プロジェクトが選ばれました。全体として次世代へ継承するための創意工夫が見られ、高いモデル性があると実感しました。どのプロジェクトも、地域の歴史と風土の中で育まれてきた身近な文化を、行政や教育機関、企業、地域住民など様々な関係者と協力関係を築きながら、地域振興の核として継承をはかっていこうという視点を取り入れた「プロジェクト未来遺産」が選ばれたと思います。
未来遺産運動では、多くの方々に身近な地域や全国各地の「プロジェクト未来遺産」に関心を持っていただくことで、地域を越えた新たなつながりを生み出し、全国に応援の輪が広がることを目指しています。