【活動報告・ネパール】親子の学び合い ~家庭内識字クラス~
ネパール寺子屋プロジェクトでは、2020年からの識字教育施策として、家庭内識字クラスを行っています。新型コロナウイルスの影響による遅延はありましたが、この度プロジェクトとして初めて4ヵ月のコースを終えましたので紹介します。
家庭内識字教育とは、「家庭は(人生で)初めての学びの場であり、親子は互いに初めての先生である」という考えに根差し、各家庭の教育環境づくりを重視しています。
UNESCO生涯学習研究所(UIL)もその有効性や好事例を研究し、広く奨励しています。
このクラスは子どもが親に文字の読み書きを教え、親が子どもに伝統文化や生活の知識を教える形式で行います。教員は、あらかじめ親子に対し、教える内容や伝え方の指導をし、家庭での学習活動にも立ち会う形でサポートします。
ネパール南部の3郡(ルパンデヒ、カピルバストゥ、ナワルパルシ)で、合計100組の親子が参加しました。参加家庭の概要は以下のとおりです。
・保護者100人(内訳:母親98人、父親2人)
・子ども100人(年齢:11~19歳、学年:小6~高2)
・民族とカースト 少数民族64%、ダリット(不可触民)34%
・日常の使用言語 第1言語:各民族の言語100%(ネパール語は0%)
参加家庭には、公用語であり識字教育で教えられるネパール語(※注)を、普段から話している家庭はありませんでした。
ネパール語を「第2言語として使う」という家庭でも、全体の30%に留まりました。国内でも社会的に不利な立場で、教育機会が限られていた人たちが、寺子屋の家庭内識字クラスに参加できたということが分かります。
子どもが親に行った識字学習は、ネパール語のアルファベット、数字、人や物の名前、携帯電話の使い方、自己紹介(初対面の人との話し方)などが多くありました。一方、親は子どもに料理、民話、道徳、文化・宗教、児童婚(のリスク)などを教えました。
事後調査の結果、多くの家庭で「親の教育に対する考えが前向きになった」「子どもの親への尊敬の念が増した」「親子とも、伝統文化への理解が深まった」「家の書物の数が増えた」など、さまざまな変化が報告されました。
現地では、この活動を更に充実させ、より効果的に多くの人が学べるよう、実践を重ねていく予定です。
多くの方々のご支援のおかげで、こうした教育支援を続けることができています。
今後も、温かいご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
(※)ネパール寺子屋プロジェクトでは、識字教育の言語を、各少数民族の母語ではなく、ネパール語を採用しています。理由は、少数民族の言語は、話し言葉と書き言葉で体系が違い、習得の難易度が高いケースがあることと、少数民族の母語の識字能力は、仕事に結びつきにくく生活の向上に寄与しにくいという面があるためです。