識字教育がもたらす「変化」
カンボジアでは現在、シェムリアップ州20カ所の村で、15歳以上の成人(約400人)を対象に、読み書きや基本的な算数を学ぶ「識字クラス」を行っています。
今年からは、過去に識字クラスを受けたものの、その後の学習機会に恵まれず、読み書きを忘れてしまった人の受け皿となる「続・識字クラス」も開き、2カ所の村で合計47人が参加しています。
「識字クラス」「続・識字クラス」では、ただ単語の書き方や計算方法を覚えるのではなく、色々な生活の知恵や経験のある大人が理解しやすいように工夫されています。例えば「料理」など、親しみやすいテーマが多く扱われます。
11月のある日のルエル寺子屋(民家-のサテライト教室)の授業の様子です。
先生が模造紙に書いた鶏肉料理のレシピを、皆で読み上げます。先生に指名された人が一人で読み、全員での復唱を繰り返したら、グループに分かれて適切な水や調味料の量を計算していました。
ルエル寺子屋の女性たちに、識字クラスに入った理由と、学んだことで何が一番変わったかを教えてもらいました。
ユットさん(42)(写真右)
若いときに戦争で学校に通えなかったので、他の人は普通にできる読み書きや計算が、私にはできませんでした。以前は秤の目盛が読めず、買い物の時に量や金額をごまかされていました。1キロ買ったはずの食材が、実はとても少ないということも良くありました。でも寺子屋で学んだお陰で、今は大丈夫。家族も喜んでいます。
フイさん(41)(写真左)
17歳の時に地雷で左足を失って、それ以来学校に通えませんでした。寺子屋に通うことにしたのは、とにかく文字を読めるようになりたかったからです。
私が一番変わったのは、書類にサインをする前に内容がきちんと分かるようになったことです。それと、お店の売掛金を書いて記録できるようになったことです。今までは全部記憶に頼るしかなく、いくら請求するのか忘れることもありました。どれも大切なことなので、本当に嬉しいです。
近年は経済発展が進むカンボジアですが、その一方で格差が広がり、発展の恩恵が受けられない人びとが大勢います。今も、全国で約240万人もの15歳以上の大人が読み書きできません。そのうち69%を女性が占めています。(UNESCO Global Education Monitoring Report2016)
一人でも多くの人が学べるよう、今後も「世界寺子屋運動」にご協力をお願いします。