フリーアナウンサー久保純子広報特使による「特使通信」カンボジア訪問記【第6回】
世界寺子屋運動30周年を記念し、 ユネスコ世界寺子屋運動の久保純子広報特使が2019年3月、10年ぶりにカンボジアを訪問。その訪問記をまとめた今月の「特使通信」を配信いたします。
センソック・リャンセイ寺子屋を訪れた10年前、寺子屋には子どもたちの笑い声が溢れていました。カンボジアには、日本と同じ9年間の義務教育がありますが、郊外では、子どもが労働力になることも多く、家の手伝いや兄弟の面倒で、小学校を中途退学する子が多いのが現状です。
特にここセンソック・リャンセイ寺子屋があるトレアス村は、シェムリアップから車で1時間半という市内からの交通の不便さもあって観光産業の恩恵が得にくく、降雨量が少ない上に灌漑設備も不十分なことから、農業収入も少ないため、貧困率が高いエリアなのです。こうした村に住む子どもたちが再び地元の学校へと戻れるように、寺子屋では復学支援クラスを実施していました。子どもたちは、一生懸命先生の話に耳を傾け、今一番ほしいものを尋ねると、「学校に通うための自転車や制服がほしい。学校に通うための道路が整備されてほしい」と。寺子屋への並々ならぬ思いを感じました。
今回の訪問で出会ったのは、寺子屋の幼稚園クラスに通うちびっ子たち。立ったり、座ったり、お友達にちょっかいを出したり、わんぱく盛りの子どもたちです。カンボジアの公用語であるクメール文字を学んでいるところでした。新しく図書館もできていました。図書運営委員のホ・ソピャックさんは、寺子屋に携わって10年。寺子屋を通して、いろいろな人との出会いがあり、見識が広がり、自分に自信が持てるようになったと話します。図書館が作られてからというもの、子どもたちに本を読む習慣ができて、幼い頃から言葉に親しみ、読み書きができるようになって、村はどんどん変わってきているとおっしゃっていました。私が訪れている間も、文字を学んだばかりの子たちが、日本でもおなじみの絵本「大きなかぶ」をクメール語で楽しそうに読んでいました。
村人たちの力で寺子屋を守り、育て、次世代へとつなげていく。「子どもの未来は明るいわ」と語るホ・ソピャックさんの言葉が心に残っています。