フリーアナウンサー久保純子広報特使による「特使通信」カンボジア訪問記【第9回】
世界寺子屋運動30周年を記念し、 ユネスコ世界寺子屋運動の久保純子広報特使が2019年3月、10年ぶりにカンボジアを訪問。第9回目の「特使通信」カンボジア訪問記を配信いたします。
タヤック寺子屋では、月曜日から土曜日までの午前中、毎日、幼稚園クラスと復学支援クラスが行われています。私が訪れた日も、復学支援クラスに通う子どもたちが大勢集っていました。授業の後、3人の生徒にお話を伺うことができました。スー・テリーンさん(13歳)、コーン・スレイマウさん(15歳)、そして、トウーン・シーカイさん(14歳)です。白いシャツに、紺色のスカートやズボンを身につけ、ネックレスをつけた姿は、日本で見かける学生とまったく変わるところはありません。ただ一つ違うのは、皆、寺子屋に通いながら、出稼ぎに出ている両親に代わって、祖父母や兄弟全員分の食事を作り、炊事、洗濯すべての家事をこなし、兄弟の面倒や牛の世話までしているところです。
笑顔がとても素敵なテリーンさん。はにかみながら、一つ一つの質問に丁寧に言葉を紡いでくれました。これまで教材費をまかなうことができず、地元の学校へ通うことは諦めていたそうです。去年の夏、12歳の時に寺子屋と出会い、地元の学校への入学を目指して、復学支援クラスに通い始めました。寺子屋では、衛生管理の方法、例えば、病気を防ぐために、いかに清潔な食べ物や飲み物を口にすることが大事かを学べたことは大きいと話していました。中でも英語の授業が好きで、実際、英語でいくつか質問を投げかけてみたところ、美しい発音で、スラスラと流暢に答えてくれたのです。クメール語の読み書きや計算のみならず、他の言語にも興味を持ち、すなわち世界を見ようとしている姿に触れることができたのは、嬉しい驚きでした。寺子屋に通ったことによって、「夢は叶う。叶えることができるんだ」ということがわかったと、力強く語るテリーンさんの将来の夢は、先生になること。いつか再び先生になったテリーンさんと再会できることを、今から心待ちにしています。