未来への絆 - 東日本大震災の教訓をふまえた防災教育の推進 -

亘理町立高屋小学校

活動に参加した児童生徒数/1から6学年47人
活動に携わった教員数/15人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/160人

実践期間2017年4月10日~2018年3月23日

活動のねらい

・本校は東日本大震災における被災校であり,町唯一,児童の津波犠牲者のあった小学校である。また,在籍児童の中には就学前,流された幼稚園バスから救助された子どもや避難途中で津波に巻き込まれた子どもがいることから,長期に渡っての心のケアを行う必要がある。しかし,地域の復旧・復興とともに風化しつつある震災の教訓をふまえ,あらためて児童の減災学習を深めることが必要であり,本年度の指導の重点課題として掲げている。以上のことから,机上の減災学習だけでなく訓練や防災キャンプを実施することで,実践を通して児童の災害対応能力を向上させていきたいと考える。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
①系統的で継続的な防災学習(毎月11日・減災にかかわる学校行事の前後)
・毎月11日の“月命日”に合わせて,みやぎ学校安全基本指針に基づいて,「みやぎ防災教育副読本」を活用した系統的で継続的な減災学習を設定する。
・着衣水泳や避難訓練等,これまでの学校行事を生かして減災意識を醸成する。写真(1)
②家庭や地域と連携した防災訓練(6.11)
・全町で行う防災訓練をきっかけとして,学校を取り巻く地域の現状と課題をふまえた訓練と有事を想定した学校・家庭・地域の協働態勢を構築する。
③実践的な技能習得を目指した防災キャンプ(7.1~7.2) 【③防災キャンプで避難所づくり】
・学校を会場とした防災キャンプを実施し,教室に宿泊することで避難所生活を体験する。災害時の非常食や学校地域の災害を想定した実践的なプログラム(ライフジャケット活用やロープ避難の体験等)によるスキルの習得を目指し,災害対応能力の向上を図る。
④未来へ向けた復旧・復興状況の調査・振り返り(各学年の校外活動)
・東日本大震災からの復旧・復興状況を振り返ることで,震災後,多くの人々の尽力によりふるさとが新たな町づくりを行っている現状を学び,未来への志をもたせる。
⑤防災学習に活用できる防災用品の充実
・防災頭巾等,避難訓練や減災学習で活用できる用品を充実させる。 写真(2)
⑥防災教育や東日本大震災からの教訓の伝承活動
(H29.6.11,7.19,8.30,9.28,12.1,12.20,H30.1.19,2.9,2.13等)
・災害が想定されている地域への伝承機会を設け,東日本大震災以来,支援を受けてきた学校等へ感謝の念を込めて本校の減災教育の情報提供を行う。
   【⑥他校での伝承活動と減災学習】

2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
  昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
・9月の研修最終日に,校長職によるグループワークを行う中で,減災教育を推進する中での共通した課題や方向性を協議することができた。このことから,自校における教育活動の展開においては,人的環境の整備と人材育成に努めることを第一に考えて取り組むことを再確認できた。
・助成金の活用に関しては,通常の学校配当予算では対応しきれない教材・備品および旅費等の諸経費について,有効に活用して充実した減災教育とその準備を行うことができている点が特筆できる。
・研修会で知り合った指定校の校長や教員との情報交換,交流を図ることができた点も大きな財産である。

3)実践の成果
減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
・継続して実践的な減災教育に取り組んだことより,児童の減災(防災)の意識化が進んでいる。
・教員や参加した保護者,地域住民の減災意識が高まり,連携して実践に取り組むことができた。
・減災教育に係る予算化により,教材・備品等の将来的な備えを準備でき,保護者の負担軽減が図れた。

児童生徒にとって具体的な学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
・減災や防災という見方・考え方で学ぼうとする意欲,自分の思いを積極的に表出すること
・防災訓練や防災キャンプを通した地域連携の視点,大人とかかわることでのコミュニケーション能力
・有事の際には情報を確実に習得し,適切に対応しようとする姿(態度)

教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
・学校(児童)を中心にすえた,地域連携による減災(防災)意識とその取組(企画と運営)
・担任サイドからの減災(防災)教育プログラムの教材選定と指導方策の研究・吟味
・地教委や県出先機関等の関係諸団体,地元県立高校との連携・協議。(他の面でも意思疎通が図れた点)

4)実践から得られた教訓や課題と今後の改善に向けた方策や展望
・年度が変わっても,教員が代わっても継続して取り組んでいくことのできる組織・運営の構築を図る。
・風化してきている3.11の教訓を,被災校としてあたらめて語り伝えていくことに努める。
・指定校を外れてからの継続的な予算化については課題である。

 

 

活動内容写真

  • 防災キャンプの避難所運営

  • 防災授業の様子

活動において工夫した点

・保護者の経済的負担の大きさを考慮し,防災教材・備品の計画的な購入に対して十分に対応できた点
・被災校であることの責務(減災教育の充実,3.11の教訓をふまえた伝承活動)を再認識できた点
・町内他校への情報提供と取組の波及効果が上がっている点

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