多様な体験的活動に基づく防災教育の実践研究

仙台市立郡山中学校

活動に参加した児童生徒数/1~3学年585人
活動に携わった教員数/34人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/629人

実践期間2016年6月30日~2017年2月18日

活動のねらい

中学生が防災教育に関する多様な体験的活動に挑み、防災・減災の知識・スキル・行動を習得し、防災対応能力を培うことにより、地域防災を担う人材が育成できる。また、これらを習得した中学生が、毎年卒業することで確実に地域防災力の向上を図ることができる。さらに、防災教育の活動実践では、小学生や住民を組織的に巻き込み、世代を超えた関わりと繋がりを意図的に設け、小中学生も含めた住民間の絆づくりと地域コミュニティ形成と活性化を図ることもねらいとする。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
平成28年度の防災教育の計画概要は、①震災と教訓を学ぶ、②復興を知る、支援することを実践のねらいとして、8月下旬には本校学区において、町内会と学校が連携し、住民と小中学生が地域清掃活動を共に行い、交流することを通じて、大震災時の助け合い・支え合った共助を風化させずに受け継ぎ、地域の復興・復旧状況を確認している。そして、1・2年生が9月初めに津波被災農家3人による講演を聴き、その後の9月中旬に1年生が仙台市沿岸部、2年生が県南部の沿岸部の津波被災地を視察し、復興支援と農家や中学生と交流を行い、その報告を生徒や保護者、地域住民に行っている。③の防災・減災の知識、スキル、行動を習得するため、10月に学区内の小学校と市民センターが合同で開催する地域防災訓練を中学生が支援する。その後の11月には、本校で中学生が主導して住民・小学生等が参加する地域防災訓練を行っている。④学習成果を発信するについては、ユネスコスクール東北大会で生徒会が成果発表をしたり、防災教育チャレンジプランにて本校の防災教育を実践発表したり、各種の発表会にて学習成果を発信している。今年度には、ボランティア・スピリット賞の北海道・東北ブロックにて11月にブロック賞を受賞し、表彰式において生徒会が成果を発表している。さらに、12月には同賞の全国大会においても、生徒会が実践成果の交流も行っている。⑤として、学習実践の内容と方法そして成果や課題などについて、自己評価や外部評価として生徒と保護者、教員が協働して評価を実施し、その後に外部の方々による学校関係者評価を行っている。さらに、防災教育チャレンジプランにて第三者評価を、防災教育の専門家や研究者からいただく。そして、PDCAマネジメントサイクルにより、次年度の実践に向けて企画・計画を立案する。


2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
  昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
本校学区は東日本大震災により、震度6弱の揺れを受けたものの、津波被害を受けていないため、現在は震災前の日常を取り戻している。このためか、生徒や地域住民においては、大震災の教訓と記憶の風化・忘却が懸念されている。9月研修会に参加し、直接津波被災地を訪れ、大震災の教訓と記憶を新たにしたことから、今年度、本校生徒が津波被災地を視察し、被災者と交流を図ることが懸念を払拭する上で必要かつ重要な防災教育であると再認識することができた。このこともあり、年度初めに計画されていたものの、津波被災者との交流や被災地の視察と支援が円滑に実施され、生徒が大震災の教訓と記憶を継承できるように、効果的で的確な指導を創意・工夫している。そして、1・2年生は津波被災農家の方々に講話をいただき、震災当時の状況や復興に向けたこれまでの心の変容と生き抜く力の糧を学んでいる。その後、右に示した表の通り、1・2年生がそれぞれ異なる津波被災地を視察し、被災者や中学生との交流や支援活動を行っている。この取組は今年度に助成金を受けたことにより、生徒たちが津波被災地に貸切バスで移動することができて、実現した実践である。


3)実践の成果
減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
地域防災力の向上と安全・安心な街づくりは学校と地域の共通目標であり、両者が連携して取り組むことで、目標の達成度はさらに高まる。しかし、これまでは学校がイニシアティブを取り、学校と中学生が主体的に多様な防災教育に挑んでいる。このため、共通目標の達成度をさらに高めには、町内会などの地域組織がより積極的な立場で学校と連携する防災教育に臨むことが必要かつ重要であると考えている。そこで、地域の大規模再開発による住民間の繋がりが懸念される中、地域の教育力は益々低下が考えられることから、今後とも学校が核となり住民参加型の防災教育を継続して推進し、住民間の世代を超えた絆づくりが不可欠であると考える。

児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
中学生が被災地支援と交流を通じて、東日本大震災の記憶の風化を防ぎ、教訓を継承することにつながる。中学生が主導する地域防災訓練等を通じて、中学生は“支えられる人”から“支える人、支え合う人”へ、心と姿勢を変容させ、奉仕的精神や豊かな心と態度の育成に資することができる。またこの実践は、中学生に困難な訓練になるものの、苦難に立ち向かう試練を体験し、どんな困難にも挑み克服する力を育むことができる。

教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
学校や小・中学生そして保護者や住民、行政等が、防災訓練や防災教育を一緒に行うことで、子供も大人も防災・減災の知識やスキルを共に学び、地域防災力と防災意識を高め、安全・安心な街づくりに波及・寄与できた。さらには連携して取り組むことで、地域の結束力や住民の地域所属感も向上し、目標の達成度も高まった。

4)実践から得られた教訓や課題と今後の改善に向けた方策や展望
中学生が主導する多様な防災教育の実践により、地域防災を担う人材が毎年確実に地域に増員され、地域防災力の向上と安全安心な地域づくりに資することができる。そして、この実践の成果と効果をさらに確かなものにするためには、毎年継続して実践することが最大の条件となっている。ところが、この実践を担当する教員や推進している校長が転勤すると、学校経営方針が変更されたり、この実践の必要性や重要性が軽視されたりすることにより、実践継続が危ぶまれることにもなりかねないことから、教員の転勤が最大の懸念材料である。

活動内容写真

活動において工夫した点

多様な防災教育により、中学生は心と姿勢を変容させ、奉仕的精神や豊かな心と態度を育んでいる。この成果と効果を検証するため、本実践研究においてアンケート調査を実施してデータに基づく検証を行っている。また、自助・共助の視点から、いじめ対策と防災教育の融合を図り、早稲田大学と共同研究を推進している。

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