大規模災害発生による、避難所としての学校と地域との協働の模索

―工業高校のものづくりを生かした、災害時に強い地域づくり―

兵庫県立飾磨工業高等学校

活動に参加した児童生徒数/1~3学年100人
活動に携わった教員数/20人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/30人

実践期間2018年4月1日~2019年3月31日

活動のねらい

・緊急時に炊き出し用コンロとして使用できる防災ベンチを開発し、校内・近隣避難所・地域への設置を呼び掛ける。
・学校近隣の避難経路を研究し、避難経路マップを作成し、地域住民の災害時の迅速な非難へ寄与する。
・避難所になった際の、校内の夜の安全性を向上させるなど、近隣避難所のリーダーシップを発揮する。
・上記の開発、研究、作業、アピールを生徒が主体的に行うことにより、生徒の防災力向上を狙う。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
1学期
 ↓  防災ベンチ設計・開発
 ↓  (課題研究)
2学期
 ↓  防災ベンチ製作・寄贈  避難経路研究     環境整備:反射テープ設置(実験)
 ↓  (課題研究)        (総合学習)      (課外活動)
3学期
 ↓  防災ベンチ研究発表   避難経路マップ製作  環境整備:反射テープ設置
 ↓  (課題研究)        (総合学習)      (課外活動)

2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。    昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
 
昨年までは、予算が少なかったため、活動に対して、材料の検討、工具の選定、設計・製作手順と、全ての目途が立たなければ製作・実施にかかれず、遅々として進まなかった。今年度は、本助成金を含め、予算が確保され、新規設計のもと、製作にかかり、その工程中に手順修正、工具の変更が可能になり、一気に計画が進行できた。

3)実践の成果
減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
「防災ベンチの開発」に関しては、ほぼ形、サイズ、製作手順は確立でき、今年度1件寄贈が出来た。引き続き2台目、3台目の製作にあたっている。また、その過程において、生徒により改善点、改良点が発見され、材料、工程が進化し続けている。しかし、姫路市内には、100を超える避難所があり、来年度以降の活動に、壮大な広がりを感じている。
今後、ものづくりを主眼に置く工業高校からの防災教育へのアプローチとして、引き続き活動を続け、他校への協働を働きかけたい。

児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
防災は投資であり、いつ起こるかわからないものへの備えであることから、生徒も当初は不要な活動との印象であった。しかし、「防災ベンチの開発」、「避難経路マップ製作」、「避難所環境整備」のいずれにおいても、活動が進行するに従い、いずれ起こるであろうその時を想定し、使用者や必要者の立場にたった考え方が出来るようになった。特に「防災ベンチの開発」については、平時の使用者が小学生であるので、材料の肌触りにも気を配れるようになっていった。また、生徒から、地域住民(学校外部の者)が避難者として学校に避難した際、校内に不慣れな人への案内等新たな視点の防災力向上に向けた発言も出るようになった。

教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
「防災ベンチ開発」については、今年度、まず一つの小中学校(小中一貫校)に寄贈が出来た。該当小学部には、防災クラブがあり、今回の贈呈式が発動の弾みになり、このベンチが今後の活動の視点として役立つ旨の話が、担当の先生からあった。また、他校からも寄贈の依頼をもらっており活動の輪が広がりつつある。しかし、寄贈した学校で、実際に「防災ベンチ」を使用した報告書をいただいたが、若い先生は、火をなかなか着けられない等新たな問題もクローズアップされた。今後は、ハード面だけでなく、使用方法の紹介等ソフト面のアプローチが必要なことが分かった。
今回の贈呈は、新聞社2社に取り上げられ、記事として掲載された。
学校評議員会において、防災ベンチを地域の公園に寄贈してほしいと、連合自治会長から話をいただいた。ただ今、今後の活動として交渉中である。

4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
各実践とも、ある程度生徒作品の完成を見てから、小学校や近隣自治会等外部に呼びかけるため、時間がかかる。また、より良いものへ発展させるため、終わりのない取り組みである。「防災ベンチ」は、次年度以降も製作を続けより多くの小中学校、自治会への寄贈を目指したい。「避難所としての環境整備」は、近隣自治会へのよびかけが次年度の活動となるが学校と自治会双方が影響を受ける関係を築きたい。

5)その他
「防災ベンチ」の取り組みを、他府県の工業高校へ呼びかける機会があれば、是非声をかけていただきたい。

 

活動内容写真

活動において工夫した点

「防災ベンチの開発」には、多くの工具が必要であり、また、購入した。専用の部屋が確保できないため、立てたボードに各工具を引掛ける専用のものを作り、材料の確保、工具の収納から工夫を重ねた。

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