自他のいのちを守り,震災の経験を語り継ぐ~地域に貢献する防災教育活動~

宮城県多賀城高等学校

活動に参加した児童生徒数/1~3学年150人
活動に携わった教員数/30人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/200人

実践期間2016年4月11日~2017年3月24日

活動のねらい

多賀城市では東日本大震災において188名の犠牲者を出した。そのほとんどが都市型津波(海の見えないところからの津波や海とは逆方向からの津波,河川を遡上し溢れた海水などが建物を迂回し道路を水路として複雑な流れを作る津波など)によるものである。私たちは,震災時にどのような津波が発生し,それがどのように襲ってきたのかなど地域の震災デジタルアーカイブを活用し,震災の記憶を将来に生かすべく現在の地域,特に将来の住民のリーダーとなる小・中学生に対して「伝承」する活動を行い,防災意識の啓発をはかることを目的とした。また,本校を訪れる学校間交流の生徒等へも同趣旨での活動に取り組む。

活動内容

1)助成活動内容
〇継続活動
①「小学生ふれあい防災活動」…隣接する小学校の学区の公民館が主催した「防災キャンプ」(小学校高学年)や同小学校の児童館の生徒(小学校低学年)を対象に,地震・津波の被災を想定し,防災マップづくりや防災の心構えなどを協働作業やワークショップを取り入れたアクティブラーニングの手法を用いて学び合った。この活動の中で,本校生徒の自主性やリーダーシップ,さらには協調性を伸ばすことにつながった。
②津波痕跡の「津波波高標示プレート」設置活動および同プレートに沿って津波被害の様子を案内する「まち歩き」を行った。プレート設置活動は,活動の幅を広げ,地域住民や被災企業関係者への聞き取りも行い,プレート設置場所を広げていった。また,本校に交流にきた全国の生徒や海外の大学の研究者等に「まち歩き」を取り入れた防災ワークショップを行った。
〇新規活動
①東北大学災害科学国際研究所が小学校と連携活動している「減災ポケット『結』プロジェト」(小学5年生対象)のファシリテイターとして,多賀城市立東小学校5年生100名の防災ワークショップに参加した。
②「東日本大震災メモリアルday」(全国防災キャンプ)(3月4-5日開催予定)…全国の高校生を中心とした若者が,自らの課題研究などの成果を発表しあい,さらにワークショップ等を通して意見交換することで,東日本大震災の経験と教訓を後世に継承し,さらに国内外の減災に貢献していくリーダーを育成していく。今年度は,北海道や兵庫県,新潟などの高校生41名,隣接の多賀城市立東豊中から12名が参加し,2日間にわたり活動する予定である。

2)成果
成果① 減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
地域に貢献する防災教育・学習活動をESDとつなげていく中で,主に①「防災教育」の視点としては,「津波波高標示プレート」設置や通学防災マップ作り,各種の防災ワークショップとして取り組めたと考える。また,②「国際理解学習」の視点としても,被災地国際案内ボランティアやフィールドワークに取り組んだ。

果②③ 児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり,どのような力を身につけたか。(地域,関係機関等の視点も含む)
多賀城市と連携する中で,「津波波高標識設置活動」をはじめ本校の防災活動に対する理解が深まり,種々の活動に対し同教育委員会はじめ近隣小中学校や公民館,児童館,地域住民の方々,そして地域企業等々から全面的に支援と協力をもらって活動できている。これまでの小学校や公民館児,市ジュニアリーダーに対する関わりあいや,今後近隣の小・中学生に対しそれぞれの学校の教育活動の中で,本校生徒がファシリティターとして活躍していくことで生徒個々の自主性やリーダーシップの伸長を期待し,生徒個々の中で十分涵養されていると思う。また,本校生徒の姿を通し,小・中学生が模範としてくれ,地域の方々に頼られる存在として地域の中で本校生徒が活動する場面が見られ,今後もさらに広がることが期待される。

3)実践から得られた教訓や課題と今後の改善に向けた方策や展望
①現在連携している多賀城市東小学校と東豊中学校の1小学校1中学校から,今後多賀城市立の全6小学校4中学校との連携を進め,継続的な取り組みとして位置づけられるものを確立していく。さらに,市ジュニアリーダーや各公民館主催の防災リーダー育成事業や防災キャンプに継続的に積極的に関わり,多賀城市の防災教育の拠点校としての役割を担っていきたいと考える。
②震災アーカイブの活用については,「ひなぎく」(国立国会図書館)をはじめ宮城県や多賀城市などのアーカイブをベースに本校の防災減災教育活動の継続的かつ記録的な活用をさらに図っていく。

活動内容写真

  • 「減災ポケット『結』プロジェクト」の様子

  • 「津波波高標示プレート」更新作業の様子

活動において工夫した点

「津波波高標示プレート」は,標示内容の見直し・更新を行うことで活動の継続性を保つとともに,津波痕がほぼ消えてい
る中で,地域住民の方や被災企業への津波被害の聞き取り等を行い,新たな「津波波高標示」の在り方を工夫・改善している。
また,様々な防災ワートショップを行う上で,本校生徒がファシリティターとして取り組み,主体的リーダー的存在として
活動できるように,その質を高めていくとともに,東北大学災害科学国際研究所が推進している「減災ポケット『結』プロジェト」に参加させてもらうなど,関係機関ともより広く連携して活動の幅を広げている。
以上の工夫などにより,「まち歩き」ボランティア活動の質の向上にもつなげ,被災地多賀城を訪れる方々に震災の実際と経
験を伝え,そこに学ぶ高校生として地域の防災・減災活動により主体的かつ協働的・対話的な活動を展開していきたい。

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