地域の減災レガシー構築のための『総合的な学習の時間』におけるカリキュラムづくり
熊野町立熊野第一小学校
活動に参加した児童生徒数/5学年86人
活動に携わった教員数/11人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/88人
実践期間2019年4月15日~2020年3月15日
活動のねらい
①「被災当事者」でありながら「復興当事者」でもあるという情意的葛藤から「平成30年7月豪雨災害」の被災地で生きる子どもたちと,災害に対峙できるこれからのまちづくりを子どもたち自身が地域の人々とのつながりの中から,その学びを深め,行動・発信につなげる減災教育を推進していきたいと考えた。
②「被災当事者」である子どもたちが,実際の被災経験をもとに,具体的に郷土の減災と防災力向上について復興に携わる人々と関わる中で思考を深め,自分自身が「復興当事者」でもあることに気づき,自分のこととして考えを発信する教育実践である。(児童における実践の特徴)
③今後,地域の「被災経験伝承者」となる子どもたちが,復興に携わる人々とつながる中で,まちの減災について多角的に学び,多面的に考え,発信・行動し続けていくことにヴィジョンをおいた「減災レガシー構築のためのカリキュラム」を作成・実施した教育実践である。(教師における実践の特徴)
活動内容
1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
本活動は,第5学年の「総合的な学習の時間」で取り組んできた防災・減災教育に加え,カリキュラム・マネジメントによって社会科の小単元「自然災害とともに生きる」とつなぎ,地域の減災レガシー構築のためのカリキュラムづくりを目的とした実践である。そうした中,昨年度「平成30年7月豪雨災害」が本校の位置する熊野町で発生した。そこで,急遽これまでの防災・減災カリキュラムを見直すことにした。そのねらいは,子どもたちに「被災当事者」,「復興当事者」,「被災経験伝承者」としての3つの視点をもたせることで,被災経験を単に後世に伝えるだけに留めない点にある。経験を「語り継ぐ」のではなく「語りつなぐ」という点から,復興に携わる多くの人々と関わる中で,災害に強いまちづくりの担い手としての自覚をもたせ,「今できること」「これからできること」を多角的に考え,多面的な視野をもって行動・発信させたいと考えた。
実践内容としては「総合的な学習の時間」で,熊野町の災害について調査し,前述したねらいをもとに自分たちにできることを考えさせ,実際に行動・発信させた。「社会科」では,近年日本各地で頻発する自然災害への取組から,「被災当事者」と「復興当事者」の視点において共通項を見付けさせ,「災害に強いまちづくり」に活かすことができるか等,その関連性に着眼し,「総合的な学習の時間」との相関性をもたせながら思考の深まりを追求した。本実践は,子どもたちが漠然と「災害に強いまちづくり」を構想するものではなく,実際の被災経験から「当事者性」ではなく「被災当事者として」の切迫感の中で情意的な高まりを整理していきながら,「復興当事者」でもあることを認識させていく活動である。子どもたちの「大切な人の命を守る」という想いの強さから紡がれた主体的な行動や発信こそ,家族はもちろん多くの熊野町住民の心を揺さぶり,巻き込み,大きな渦となってまちの復興を支えるものとなっていくと考えている。
2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
昨年度まで(助成金・研修受講前)と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
自校の実践に活かしたこと・活動の変更・改善点については,2)にて,前述している通りである。本プログラムの助成金によって,専門家等外部人材をカリキュラム内で幅広く活用することが可能となった。
3)実践の成果
①減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
すでに1学期より進行していた「総合的な学習の時間」における防災・減災教育活動だが,本プログラムに参加後,接続中学校の該当授業参観や研究協議を行うなど積極的に連携を図った。まだまだ黎明期の段階ではあるが,今後更に自治体内の小・中学校の防災・減災教育連携を図っていく上での礎を構築することができた。
②児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり,どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
本活動を通じて,持続可能な社会の形成者として育んだ資質として,ESDの学習指導過程を構想し展開するために必要な枠組み(国立教育政策研究所教育課程研究センター)に示されている「未来像を予想して,計画を立てる力」と「つながりを尊重する態度」が当てはまると考えた。人々の社会生活における復興とは,被災前のまちの状態に戻すことではない。実際に,失われた人命や人々の記憶に残るまちの姿は還らない。子どもたちは,学習活動を進める中で,当初「被災当事者」という視点を強くもっていた。
しかし,復興に携わる人々とつながる中で,「復興当事者」でもあることを徐々に認識し,災害に強いこれからの新しいまちづくりについて前述した復興に対する価値観をもって,新たな郷土の姿を想像し,自らできることを考える実践を進めていくことができた。
③教師や保護者,地域,関係機関等(児童生徒以外)の視点から
本実践は,テレビ局取材・新聞報道・教科教育誌等でも取り上げられ,保護者・地域・関係機関等にも広く発信することができた。また,第6回広島県ユネスコESD大賞(2019)小・中学校部門受賞実践となった。
4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
本稿で論じた教育実践から,実際に具体的な行動に移し続けていくことのできる子どもたちの姿を期待する。実際に本校減災教育のカリキュラムを履修した卒業生は,「平成30年7月豪雨災害」災害発生後に開設された避難所において,パーテーションの組み立て作業などの初期設営準備を自発的に行い,地域を支える行動に取組むことができている。今後の展望と課題としては,これらの学びを中学校へと接続していくことである。すでに接続学区中学校でも,「総合的な学習の時間」の中で減災教育を取り入れているが,小学校での学びと完全に系統性をもたせたものとはなっていない実情がある。そのため,小・中連携を密に行い,今回の被災経験から,9年間という学びを見据えた系統性をもった減災教育カリキュラム作成に動き始めていきたい。
本活動は,第5学年の「総合的な学習の時間」で取り組んできた防災・減災教育に加え,カリキュラム・マネジメントによって社会科の小単元「自然災害とともに生きる」とつなぎ,地域の減災レガシー構築のためのカリキュラムづくりを目的とした実践である。そうした中,昨年度「平成30年7月豪雨災害」が本校の位置する熊野町で発生した。そこで,急遽これまでの防災・減災カリキュラムを見直すことにした。そのねらいは,子どもたちに「被災当事者」,「復興当事者」,「被災経験伝承者」としての3つの視点をもたせることで,被災経験を単に後世に伝えるだけに留めない点にある。経験を「語り継ぐ」のではなく「語りつなぐ」という点から,復興に携わる多くの人々と関わる中で,災害に強いまちづくりの担い手としての自覚をもたせ,「今できること」「これからできること」を多角的に考え,多面的な視野をもって行動・発信させたいと考えた。
実践内容としては「総合的な学習の時間」で,熊野町の災害について調査し,前述したねらいをもとに自分たちにできることを考えさせ,実際に行動・発信させた。「社会科」では,近年日本各地で頻発する自然災害への取組から,「被災当事者」と「復興当事者」の視点において共通項を見付けさせ,「災害に強いまちづくり」に活かすことができるか等,その関連性に着眼し,「総合的な学習の時間」との相関性をもたせながら思考の深まりを追求した。本実践は,子どもたちが漠然と「災害に強いまちづくり」を構想するものではなく,実際の被災経験から「当事者性」ではなく「被災当事者として」の切迫感の中で情意的な高まりを整理していきながら,「復興当事者」でもあることを認識させていく活動である。子どもたちの「大切な人の命を守る」という想いの強さから紡がれた主体的な行動や発信こそ,家族はもちろん多くの熊野町住民の心を揺さぶり,巻き込み,大きな渦となってまちの復興を支えるものとなっていくと考えている。
2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
昨年度まで(助成金・研修受講前)と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
自校の実践に活かしたこと・活動の変更・改善点については,2)にて,前述している通りである。本プログラムの助成金によって,専門家等外部人材をカリキュラム内で幅広く活用することが可能となった。
3)実践の成果
①減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
すでに1学期より進行していた「総合的な学習の時間」における防災・減災教育活動だが,本プログラムに参加後,接続中学校の該当授業参観や研究協議を行うなど積極的に連携を図った。まだまだ黎明期の段階ではあるが,今後更に自治体内の小・中学校の防災・減災教育連携を図っていく上での礎を構築することができた。
②児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり,どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
本活動を通じて,持続可能な社会の形成者として育んだ資質として,ESDの学習指導過程を構想し展開するために必要な枠組み(国立教育政策研究所教育課程研究センター)に示されている「未来像を予想して,計画を立てる力」と「つながりを尊重する態度」が当てはまると考えた。人々の社会生活における復興とは,被災前のまちの状態に戻すことではない。実際に,失われた人命や人々の記憶に残るまちの姿は還らない。子どもたちは,学習活動を進める中で,当初「被災当事者」という視点を強くもっていた。
しかし,復興に携わる人々とつながる中で,「復興当事者」でもあることを徐々に認識し,災害に強いこれからの新しいまちづくりについて前述した復興に対する価値観をもって,新たな郷土の姿を想像し,自らできることを考える実践を進めていくことができた。
③教師や保護者,地域,関係機関等(児童生徒以外)の視点から
本実践は,テレビ局取材・新聞報道・教科教育誌等でも取り上げられ,保護者・地域・関係機関等にも広く発信することができた。また,第6回広島県ユネスコESD大賞(2019)小・中学校部門受賞実践となった。
4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
本稿で論じた教育実践から,実際に具体的な行動に移し続けていくことのできる子どもたちの姿を期待する。実際に本校減災教育のカリキュラムを履修した卒業生は,「平成30年7月豪雨災害」災害発生後に開設された避難所において,パーテーションの組み立て作業などの初期設営準備を自発的に行い,地域を支える行動に取組むことができている。今後の展望と課題としては,これらの学びを中学校へと接続していくことである。すでに接続学区中学校でも,「総合的な学習の時間」の中で減災教育を取り入れているが,小学校での学びと完全に系統性をもたせたものとはなっていない実情がある。そのため,小・中連携を密に行い,今回の被災経験から,9年間という学びを見据えた系統性をもった減災教育カリキュラム作成に動き始めていきたい。
活動内容写真
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活動において工夫した点
本実践の特徴としては,このカリキュラムの実施内容が,該当学年授業時間のみに留まるのではなく,継続的・横断的・非時限的に取組むことができた点である。引き続き,これら実施カリキュラムにおける教育効果についても,接続中学校の防災・減災教育担当者と共に,学習後の子どもたちを追いながら検証していきたい。
資料ダウンロード
資料なし