災害に強い街づくりを考える
鳥取県立鳥取西高等学校
活動に参加した児童生徒数/1学年40人
活動に携わった教員数/3人+大学教員3人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/437人
実践期間2018年4月8日~2019年3月9日
活動のねらい
本校は鳥取城跡に位置しており、背後には久松山の急峻な斜面が迫っている。校地は土石流特別警戒区域に指定され、背後の斜面は急傾斜地特別警戒区域に指定されている。普段は安心して勉学に勤しむことのできる本校が特別警戒区域に位置しているということを自覚することが必要である。また、災害の際には近隣の保育施設や医療施設の方々と避難経路が重なり、同じ避難所に避難することが想定される。そこで、生徒が近隣施設の減災について考えることで生徒が自身の減災についても考えるとともに、地域の機関、施設との日常的な連携でお互いの減災を目指し、災害に強い街づくりを通して「持続可能な地域づくり」をしていくことをこの活動の目的とした。
活動内容
1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
1クラス生徒40名に対して、地震や水害が専門の鳥取大学教員から学校周辺の減災(防災)についての現状を報告していただくとともに、この活動において生徒たちが探究していく課題を提示していただいた。生徒40名は保育施設連携班と医療施設連携班に分かれ、さらにそれぞれの班内で大地震と水害についてのテーマに分かれて探究活動を行った。課題に対する提言をまとめるために、本校近隣にある保育施設と医療施設に出向き避難経路や危険個所について情報収集を行うとともに、災害時に高校生として手助けできることを考察した。探究活動の成果については、鳥取大学教員や保育施設関係者、医療機関関係者においでいただき、まとめた提言についてプレゼンテーションを行った。あわせて、実際に避難訓練などを行い、大学教員や連携機関の関係者と提言を検証した。この活動に参加した生徒のうち希望者が3月に行われるSGH甲子園にオブザーバーとして参加し、SGH指定校の生徒どうしでの交流の中で減災(防災)に関する活動について情報発信するとともに、様々な探究活動の報告に触れることで減災(防災)についての問題解決に関する知見や手法を得る予定である
実施日程及び実施内容
実施日
時間
内容
4月18日(水)
2時間
講義及び課題提示「災害発生時に高校生に期待すること」(鳥取大学大学院工学研究科 教授 香川 敬生 先生、教授 太田 隆夫 先生)
関連資料の読み込み
4月26日(水)
2時間
グループワーク
5月 9日(水)
2時間
グループワーク
5月23日(水)
2時間
グループワーク
6月13日(水)
2時間
グループワーク
6月27日(水)
2時間
フィールドワーク・プレゼン準備
7月 4日(水)
1日
フィールドワーク:久松保育園、渡辺病院など(鳥取大学大学院工学研究科 教授 黒岩 正光 先生、教授 太田 隆夫 先生)
・「久松保育園」班の活動
・「渡辺病院」班の活動
7月11日(水)
2時間
フィールドワーク振り返り・代表班決定
7月13日(木)
1時間
学年発表会
7月14日(金)
午前
全校ポスターセッション
9月5日(水)
1時間
「著者と語る」講演会事前学習
9月12日(水)
午後
「著者と語る」講演会:「グローバル化時代の報道の役割 私たちの役割」講師 林香里 氏(東京大学大学院情報学環 教授)
10月3日(水)
1時間
スキルトレーニング①:マインドマップで自分の興味を知ろう。
11月7日(水)
1時間
スキルトレーニング②:自分の興味関心から問いを立ててみよう。
11月9日(金)
1時間
SGH発表会・海外交流報告会
12月12日(水)
1時間
スキルトレーニング③:問いのレベルをチェックして高いレベルの問い立てをしよう。
1月9日(水)
1時間
1年間の振り返り
3月23日(土)
1日
SGH甲子園での交流(希望者)
2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
今年度の探究活動自体は7月末で一度区切りをむかえたが、その後研究内を学校内外で発表するために内容をグループごとに精査し、改定をしていった。その中で9月の研修会にもあった「自助」「公助」「共助」のうち、自分たちの活動はどこに重点を置いたものなのかを振り返る機会や、病院や保育園と連携することでどのような気づきがあったのかを話し合う機会、気仙沼の小中学生の実践活動紹介、また、研究内容を発信してフィードバックをもらい、次年度以降の改善に活かすこと等を考える時間を設けた。
昨年度までの活動では7月末の校内発表で終わりとなっていたが、今年度は助成金を活用して3月末に関西学院大学での発表会に生徒代表が参加することになり、より長期間、同一テーマの内容を研究することができた。また、県外の高校生などに研究内容を発表するということで、生徒たちの研究に向かうモチベーションが高まったことも昨年度の実践と比較して変わった点であると言える。
3)実践の成果
①減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
本校の総合的学習の時間における課題研究のプログラムには、もともと減災(防災)教育のテーマは入っておらず、これらのテーマに基づいた研究プログラムの構築は急務であった。しかしそのテーマ設定において、阪神淡路大震災を経験した教員は数名であり、東日本大震災を直接体験した教員もおらず、何をどのようなテーマで取り組ませるかを検討するところから始まった。
昨年度の実践を受けて、今年度は大雨で洪水が発生した場合と、地震で道路などが寸断された場合の2グループに分け、さらにその2グループを保育園担当と病院担当に分け、4つのグループで研究を進めることにした。保育園では「一時避難した園児たちに安心感を与え、保護者引き渡しまでの時間に高校生の自分たちが出来ること」、病院では「入院患者を院内の別の場所に移動させるとき高校生の自分たちが出来ること」をテーマとした。
②児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
研究が大詰めに差し掛かった2018年7月に中国四国地方を中心に大雨被害が発生した。
西日本豪雨時の状況
2018年7月6日夜鳥取市南部等に大雨特別警報、県内19万9千人余りに避難指示1800人が避難所へ避難
県東部10棟で床上床下浸水し、智頭町では道路の寸断で6集落が孤立、交通網もJR、高速道路、国道が不通となった。智頭町は7月の観測史上最大の24時間雨量260ミリとなり、本校は7月6日午前11時40分生徒完全下校の措置を取った。
防災グループの生徒の一部(特に雨量が多い智頭町在住の生徒)は想定していた雨量を大幅に上回る降水量、河川の水位上昇にJRやバスでの帰宅に危険を感じた。そこで、研究を進める中で学んだ自助、共助から、他の高校に行っている智頭町在住の生徒と連絡を取り合い、情報を収集し、無理に帰宅せず学校近くの知人の親の事務所に自主避難(10人)するという判断をした。その後JRや国道がストップしこの判断は非常に的確で正しいものとなった。
当該生徒も「この時の判断は、防災減災研究を自分たちが主体となって実施したおかげだ」と語っていた。本校の実践で生徒のこのような判断力がついたことは、プログラムの実践内容、方向性がいざというときに発揮できるものであることを示したと言える。
③教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
本校の課題研究における防災・減災プログラム自体は2年目となり、その年度に担当する教員から次の年度の担当教員への引継ぎがスムーズに出来るようになった。研究を進める上でのポイントや流れを文章化して共有することができた。
保育園、病院との連携についても、初年度の振り返りで出てきた、課題設定の問いのレベルが高すぎる等の問題点を2年目は改善して取り組むことができた。
4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
・継続的なプログラムの実施と各年度の研究内容の蓄積
・連携可能な外部機関の検討
・外部への実践の報告と共有
1クラス生徒40名に対して、地震や水害が専門の鳥取大学教員から学校周辺の減災(防災)についての現状を報告していただくとともに、この活動において生徒たちが探究していく課題を提示していただいた。生徒40名は保育施設連携班と医療施設連携班に分かれ、さらにそれぞれの班内で大地震と水害についてのテーマに分かれて探究活動を行った。課題に対する提言をまとめるために、本校近隣にある保育施設と医療施設に出向き避難経路や危険個所について情報収集を行うとともに、災害時に高校生として手助けできることを考察した。探究活動の成果については、鳥取大学教員や保育施設関係者、医療機関関係者においでいただき、まとめた提言についてプレゼンテーションを行った。あわせて、実際に避難訓練などを行い、大学教員や連携機関の関係者と提言を検証した。この活動に参加した生徒のうち希望者が3月に行われるSGH甲子園にオブザーバーとして参加し、SGH指定校の生徒どうしでの交流の中で減災(防災)に関する活動について情報発信するとともに、様々な探究活動の報告に触れることで減災(防災)についての問題解決に関する知見や手法を得る予定である
実施日程及び実施内容
実施日 | 時間 | 内容 |
4月18日(水) | 2時間 | 講義及び課題提示「災害発生時に高校生に期待すること」(鳥取大学大学院工学研究科 教授 香川 敬生 先生、教授 太田 隆夫 先生) 関連資料の読み込み |
4月26日(水) | 2時間 | グループワーク |
5月 9日(水) | 2時間 | グループワーク |
5月23日(水) | 2時間 | グループワーク |
6月13日(水) | 2時間 | グループワーク |
6月27日(水) | 2時間 | フィールドワーク・プレゼン準備 |
7月 4日(水) | 1日 | フィールドワーク:久松保育園、渡辺病院など(鳥取大学大学院工学研究科 教授 黒岩 正光 先生、教授 太田 隆夫 先生) ・「久松保育園」班の活動 ・「渡辺病院」班の活動 |
7月11日(水) | 2時間 | フィールドワーク振り返り・代表班決定 |
7月13日(木) | 1時間 | 学年発表会 |
7月14日(金) | 午前 | 全校ポスターセッション |
9月5日(水) | 1時間 | 「著者と語る」講演会事前学習 |
9月12日(水) | 午後 | 「著者と語る」講演会:「グローバル化時代の報道の役割 私たちの役割」講師 林香里 氏(東京大学大学院情報学環 教授) |
10月3日(水) | 1時間 | スキルトレーニング①:マインドマップで自分の興味を知ろう。 |
11月7日(水) | 1時間 | スキルトレーニング②:自分の興味関心から問いを立ててみよう。 |
11月9日(金) | 1時間 | SGH発表会・海外交流報告会 |
12月12日(水) | 1時間 | スキルトレーニング③:問いのレベルをチェックして高いレベルの問い立てをしよう。 |
1月9日(水) | 1時間 | 1年間の振り返り |
3月23日(土) | 1日 | SGH甲子園での交流(希望者) |
昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
今年度の探究活動自体は7月末で一度区切りをむかえたが、その後研究内を学校内外で発表するために内容をグループごとに精査し、改定をしていった。その中で9月の研修会にもあった「自助」「公助」「共助」のうち、自分たちの活動はどこに重点を置いたものなのかを振り返る機会や、病院や保育園と連携することでどのような気づきがあったのかを話し合う機会、気仙沼の小中学生の実践活動紹介、また、研究内容を発信してフィードバックをもらい、次年度以降の改善に活かすこと等を考える時間を設けた。
昨年度までの活動では7月末の校内発表で終わりとなっていたが、今年度は助成金を活用して3月末に関西学院大学での発表会に生徒代表が参加することになり、より長期間、同一テーマの内容を研究することができた。また、県外の高校生などに研究内容を発表するということで、生徒たちの研究に向かうモチベーションが高まったことも昨年度の実践と比較して変わった点であると言える。
3)実践の成果
①減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
本校の総合的学習の時間における課題研究のプログラムには、もともと減災(防災)教育のテーマは入っておらず、これらのテーマに基づいた研究プログラムの構築は急務であった。しかしそのテーマ設定において、阪神淡路大震災を経験した教員は数名であり、東日本大震災を直接体験した教員もおらず、何をどのようなテーマで取り組ませるかを検討するところから始まった。
昨年度の実践を受けて、今年度は大雨で洪水が発生した場合と、地震で道路などが寸断された場合の2グループに分け、さらにその2グループを保育園担当と病院担当に分け、4つのグループで研究を進めることにした。保育園では「一時避難した園児たちに安心感を与え、保護者引き渡しまでの時間に高校生の自分たちが出来ること」、病院では「入院患者を院内の別の場所に移動させるとき高校生の自分たちが出来ること」をテーマとした。
②児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
研究が大詰めに差し掛かった2018年7月に中国四国地方を中心に大雨被害が発生した。
西日本豪雨時の状況
2018年7月6日夜鳥取市南部等に大雨特別警報、県内19万9千人余りに避難指示1800人が避難所へ避難
県東部10棟で床上床下浸水し、智頭町では道路の寸断で6集落が孤立、交通網もJR、高速道路、国道が不通となった。智頭町は7月の観測史上最大の24時間雨量260ミリとなり、本校は7月6日午前11時40分生徒完全下校の措置を取った。
防災グループの生徒の一部(特に雨量が多い智頭町在住の生徒)は想定していた雨量を大幅に上回る降水量、河川の水位上昇にJRやバスでの帰宅に危険を感じた。そこで、研究を進める中で学んだ自助、共助から、他の高校に行っている智頭町在住の生徒と連絡を取り合い、情報を収集し、無理に帰宅せず学校近くの知人の親の事務所に自主避難(10人)するという判断をした。その後JRや国道がストップしこの判断は非常に的確で正しいものとなった。
当該生徒も「この時の判断は、防災減災研究を自分たちが主体となって実施したおかげだ」と語っていた。本校の実践で生徒のこのような判断力がついたことは、プログラムの実践内容、方向性がいざというときに発揮できるものであることを示したと言える。
③教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
本校の課題研究における防災・減災プログラム自体は2年目となり、その年度に担当する教員から次の年度の担当教員への引継ぎがスムーズに出来るようになった。研究を進める上でのポイントや流れを文章化して共有することができた。
保育園、病院との連携についても、初年度の振り返りで出てきた、課題設定の問いのレベルが高すぎる等の問題点を2年目は改善して取り組むことができた。
4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
・継続的なプログラムの実施と各年度の研究内容の蓄積
・連携可能な外部機関の検討
・外部への実践の報告と共有
活動内容写真
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保育園でのフィールドワーク
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保育園でのフィールドワーク
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病院でのフィールドワーク
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病院でのフィールドワーク
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避難場所の検証
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避難場所の検証
保育園でのフィールドワーク
保育園でのフィールドワーク
病院でのフィールドワーク
病院でのフィールドワーク
避難場所の検証
避難場所の検証
活動において工夫した点
本校実践の大きな特徴は、テーマを明確にし、高校生が「自分たちが主体となった行動が求められている」と意識できるプログラムにしていることである。
・保育園・病院との連携
連携先は、学校のように多人数が集団生活を送り、災害時の避難所や避難経路が高校生と同じで、共助が必要な施設にお願いした。
・能動的な動きにつながるテーマ設定
テーマ設定に関しては、担当部署内で検討会をもち、生徒たちが災害発生時に受動的に行動するのではなく、地域で高校生が必要とされる時に能動的に行動ができるような、具体的な動きを考えることのできるテーマを設定した。また、連携先から聞き取った、高校生に対するニーズもテーマに反映した。その結果、保育園では「一時避難した園児たちに安心感を与え、保護者引き渡しまでの時間に高校生の自分たちが出来ること」、病院では「入院患者を院内の別の場所に移動させるとき高校生の自分たちが出来ること」がテーマとなった。
資料ダウンロード
資料なし