防災士と連携した防災・減災教育

京都府立南山城支援学校

活動に参加した児童生徒数/中学部1~3学年 16人・高等部1~3学年 19人
活動に携わった教員数/23人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/保護者・地域住民・その他( 木津川市防災士  )

実践期間2024年10月8日~2025年1月29日

活動のねらい

 本校には、知的障害、肢体不自由のある児童生徒が在籍しており、これらの障害特性から、災害発生時に迅速な避難が困難な者も多い。特に、緊急時にパニックに陥りやすい児童生徒も多く、防災・減災教育の必要性は極めて高いと考えられる。また、在籍する児童生徒の発達段階が幅広いため、各発達段階に応じた適切な対応能力(自らの安全を確保できる力、適切に助けを求める力、災害発生時に主体的に行動できる力等)を身に付けることが重要である。
ところで、本校は、「南山城らしい 地域に開かれ、地域とともにある学校」を目指し、昨年度から重点的に取り組みを進めている。また、昨年度から地域の課題や要望の集約に努めてきた中で、木津川市の防災士から、「障害のある人々の災害発生時におけるニーズの把握が不十分である」という声が上がっている。
よって、活動の目的は、【① 児童生徒が、防災教育を「自分ごと」として捉え、実践的な活動を通して、災害発生時における知識や技能を身に付けるため】、また、【② 防災士に、障害のある人々の災害発生時におけるニーズの理解を深められるような機会を提供するため】と設定した。
そのために、今年度からは、『MINAMI単元』と題して、防災士と連携した防災教育を進めている。活動の目的に向かって、学校と地域が「Win-Win」となるような連携を進めていきながら、地域全体の防災力の向上を目指していく。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
実施月 実施内容・ねらい 対象
令和5年度

3学期
① 令和6年度より「Win-Win」な形での授業連携を目指すため、地域の方々に課題や要望の聞き取り調査を開始。

② 校区内の木津川市の防災士から、「障害者の災害発生時のニーズ把握が不十分」との声が上がり、『MINAMI単元』内で防災士と連携した防災・減災教育の実施を決定。
令和6年度

4月
『MINAMI単元』を全校に提案。中学部・高等部の一部クラス・グループから参加希望が上がる。
10月 ① MINAMI単元・防災教育
木津川市防災士と連携し、防災・減災教育『非常食を作ろう』を実施。防災士による災害時の説明後、ポリ袋を使った非常食作りを行う。
中学部3~5組
2月 ➁ MINAMI単元・防災教育
 助成金を活用して購入した段ボールベッド、段ボールトイレ、シェルター等を使用し、避難所体験を木津川市防災士と連携しながら実施。災害発生時に自分の身を守るだけでなく、周囲の人々を助け、避難所で主体的に行動する等、地域のリーダーとしての役割を果たせるようなスキルを身に付けることを目指す。
高等部8~10組
 29月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
9月研修会の学びを受けて、地域とともにある学校として、地域資源をより有効に活用した防災教育を進め、防災教育をそれぞれの児童生徒なりに、「自分ごと」として捉えることができるような指導を意識して行った。今年度は、地域の防災士と連携しながら、非常食の調理活動(10月)を行ったり、避難所生活を再現する活動(2月)を計画したりすることができた。その際、いただいた助成金で、非常食を調理するための食材や材料や、避難所生活を再現するための段ボールベッドや組み立てトイレ等の教材、本校の非常食等の備品の購入に充てることができた。

3)実践の成果
①減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から 
  地域の防災士に来校していただき、「防災食はなぜ必要なのか」「防災食を備えておくことの大切さ」などについても教えていただきながら防災食の調理活動を行ったことで、ただ調理して食べるだけでなく、防災食の意義や役割についても学ぶ機会を作ることができた。また、日本で起こる災害の種類やその多さや、災害に備えて日頃から準備しておくと良いもの、災害が起きた際に復旧に時間がかかり、多くの被災者が困るものは水であるということ等、防災に関する専門的な知識を合わせてお話していただいたことで、防災についての新たな学びを深めることにも繋がった。

また、いただいた助成金で防災教育を行うにあたっての教材を購入したことによって、より実際の避難所生活を想定した実践的な学びができるようになった。また、様々な発達年齢に応じた防災に関する書籍を購入し、図書室に置いたことによって、全ての児童生徒が防災に関する本を閲覧することができ、今年度『MINAMI単元』の防災教育を行う生徒に関わらず、全校で防災に対する意識を深める機会を作ったり、今年度のみに留まらず、将来に渡って持続可能な防災・減災教育を提供するための基盤を構築したりすることに繋がった。

②児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
防災士による、防災に関する専門的な知識を含んだ講話は、災害による被害をほとんど受けたことのない本校の生徒にとって、あまり馴染みがなく、想像しにくい内容であった。そのため、始めは難しそうな表情をしながら聞く生徒も見られたが、災害時の実際の写真や体験談を通して、「自分ごと」のように真剣に話を聞いたり、進んで災害について質問をしたりする姿が見られた。また、防災食の調理に必要な食材や材料の種類や数量を考え、スーパーで購入する活動も合わせて行った。食材や材料を0から自分たちで準備して防災食を作る経験から、より、災害時には自分たちから進んで行動しようとする意識を高めることにも繋がった。調理活動時には、自分で買った食材を嬉しそうに友達や指導者に見ながら調理活動に取り組み、達成感に溢れた表情で美味しそうに食べている姿が多く見られた。

③教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
教師の視点では、9月研修会を受けて、防災教育をそれぞれの児童生徒なりの「自分ごと」として捉えることができるような指導を意識していくことができた。防災士の講話のように、教師自身も、いずれの活動においても、「なぜそのような行動をとるのか」という解説を必ず加えることで、被災経験のない子どもたちにもしっかりと知識を身に付けられるように工夫して防災教育を進めていった。

防災士の視点では、説明を視覚的に分かりやすくすることや実際の状況にできるだけ近い体験的な活動を設定することで、本校の生徒が、防災について「自分ごと」のように真剣に学習する姿に驚き、感心されていた。支援方法や手立てを工夫して防災教育を行うことで、障害の有無や重さに関わらず、防災に対する意識を全ての人々が自分なりの方法で持てるようになるということの理解にも繋がった。このように、防災士と連携した教育を行うことで、障害のある人々に対する防災士の意識の変容が見られた。

4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
  本実践では、学校と地域が「Win-Win」となる連携を進めることで、地域全体の防災力の向上を目指した。今回の連携を通じて、本校の児童生徒や教員にとっては、より実践的で専門的な防災教育の機会となり、地域の防災士にとっては、障害のある人々について理解を深めるきっかけとなった。しかし、実施回数や参加したクラスが限られていたため、活動の目的の一つである「②防災士に、障害のある人々の災害発生時におけるニーズの理解を深める機会の提供」については十分に達成できず、地域の方々を巻き込む取組も不十分であったことから、地域全体の防災力向上には課題が残った。そのため、次年度以降も、引き続き防災士と連携した防災教育を進める中で、地域の方々と協力し、避難所生活の再現を行う等の取組を実施していく。これにより、避難所生活が苦手な児童生徒も含め、全ての児童生徒が災害発生時の行動を具体的にイメージできるようになったり、地域の方々においても、災害時に迅速かつ適切な避難ができるような備えが深まったりすることを目指していく。

9月研修会では、「防災・減災に関する意識の底上げと共有化」が大切であり、その共有は児童生徒だけでなく、指導者間でも行うべきだということを学んだ。障害の有無や重さに関わらず、防災教育をそれぞれの児童生徒なりの「自分ごと」として捉えながら、災害発生時に臨機応変かつ主体的に行動できるような指導を行っていくためには、教員間でも防災・減災教育に対する意識を共有し、教師自身も「自分ごと」として捉えられるようにしていくことが大切である。

また、発達段階に応じた単元を設定することの大切さや、防災教育を単発で終わらせず、系統的に継続して行うことの重要性も学ぶことができた。よって、次年度以降、学年や学部間で連続性・系統性のある内容を設定し、障害の程度に関わらず、全ての児童生徒が防災教育での学びを積み重ねられるようにしていく。そのためにも、防災教育に関する教材を作成することで、指導者が代わっても確実に学びを積み重ねられるように工夫していくことが求められる。しかし、障害のある子どもたちへの指導方法について今はまだ確率しておらず、今後、実践を通して有効な方法を模索していく必要がある。発達段階に応じた防災教育として、具体的には、例えば、災害発生時でも落ち着いて大人の指示に従う練習や、困ったときに助けを求める練習、地震や火事等の災害体験等を通して、「災害発生時に自らの安全を確保し、避難する能力」や「普段と異なる環境でも落ち着いて生活できる適応力」を身に付けたり、避難所での生活を想定した体験学習を通して、自分だけでなく、周りの人を助けることにまで視野を広げ、「災害状況下で自己の役割を理解しながら、主体的に行動できる判断力と行動力」を培っていくことを目指していく。連続した学びの機会を設定することで、児童生徒にとって成長のモデルとなる先輩の姿を直接見ることができ、自らの防災意識を高め、主体的に行動するきっかけとなることが期待できる。

このようなことを踏まえて、次年度以降も、学校と地域が『Win-Win』となるように、防災士と連携したより発展した防災教育を進めていきながら、地域全体の防災力の向上へと繋げていけるような『MINAMI単元』を目指していきたい。

活動内容写真

  • 防災士による防災に関する講話の様子

  • 防災食(乾パンチョコクランチ)の調理活動の様子

  • 防災食(乾パンチョコクランチ)調理活動の様子

活動において工夫した点

 今回の実践におけるポイントは、『MINAMI単元』と題して、学校と地域が「Win-Win」となるような防災教育を地域の防災士と連携しながら進めていったことである。この実践を通して、本校の児童生徒に、防災教育を「自分ごと」として捉えていくための学びを深めたり、地域の防災士に、障害のある人々に対する理解や意識の変容におけるきっかけ作りを行ったりすることができた。

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