地域とともに進める防災教育 ~つながりを大切に できることを行動に~

大田区立大森第六中学校

活動に参加した児童生徒数/1~3学年362人

実践期間2014年4月26日~2015年3月25日

活動のねらい

首都直下型地震が近い将来起こると言われている。東日本大震災では自然の圧倒的な力の前に、人間の無力さも十分に味わった。しかしその中で人々が協力し、知恵を出し合い乗り越えていくことができることも知ることができた。中学生にとってこれからの人生の中で自然災害だけでなく様々な大きな壁があるはずだが、社会の中で自分ができることを一生懸命やり、人と協力し力を合わせることで人の役に立つ喜びや自分自身の成長を促すことになる。防災という命を守る人間として一番大切なことに取組ことで、社会の一員としての自覚を養うことを目的とした。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
〇4月26日(土)総合防災訓練
1・2年生 首都直下型地震が発生したと想定。保護者への引き渡し訓練。
3年生 学校防災訓練・・・発災直後5時間を想定し、9班に分かれ仮設トイレ・テント設置・発電機投光器の操作・ストレッチャーでの怪我人搬送・備蓄倉庫の物資運搬・避難者への対応・トイレ用水のバケツリレー・アルファ化米の炊き出しと配布・災害電話設置・初期消火B・C・D級ポンプで放水訓練
〇7月7日(月)2年生 まちなか点検 2年生120名が参加をした、今年度新たに始めた取組である。
目的:自分たちの住む地域を大田区防災課、自治会、消防署、消防団の方と歩き、集めた情報をマップにまとめることにより防災の視点で町を知るきっかけを作る。また地域の方と共にこの活動に取り組むことで地域の方に学び、将来の地域の担い手の成長につなげることを目的とする。
方法:自治会ごとに生徒と地域の方が一緒にまちを歩き、防災の視点で町を点検する。自治会の方、大田区防災課、消防署、消防団、大学生のボランティアで、1班10名ほどのグループを作る。1時間ほど地域を歩き、消火器、消火栓、AED設置場所、避難できる広い駐車場など災害時に役に立つことと、狭い道路、崩れそうなブロック塀、急な階段などの危険箇所など、町の災害における強みと弱みについての情報をカメラで記録し、メモをとる。学校に戻ってきてから、撮ってきた写真をプリントアウトし、地域の強みと弱みに関する情報を、地図の中に書き込みをしてまとめる。できあがったマップを使い、自治会ごとにリーダーの生徒がまとめたことを発表する。防災のマップは、自治会の集まりの時に地域の方に見てもらって今後に役立ててもらう。
〇9月10日(水)3年生 「普通救命講習」受講 救命技能認定を受ける
〇9月15~17日 アクサユネスコ協会減災教育プログラム 教員研修会に2名の教員が参加
〇10月3日 1年生 社会科見学 東京臨海広域防災公園そなエリアで防災体験学習 「72時間どう生き残るか?」体験を通して学習する。
〇10月7日 2年生 社会科見学 本所防災館で防災体験  暴風雨体験・消火体験・煙体験・阪神淡路大震災の地震体験・東日本大震災の防災映像の体験学習を通し、防災の知識を深める。
〇3月7日 学習成果発表会において各学年の取組を発表した。

2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
  昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
9月の研修後、教員向けと生徒向け別々にパワーポイントを作成し、研修報告をした。東日本大震災の現状を知り防災に対する意識が変わったと思う。生徒も避難訓練や日頃の意識の大切さを知り、訓練における真剣さが増した。助成金は「スミスライト」を購入し、いつでもだれでも使用できるように職員室に設置した。また近隣の夜間訓練や大田区防災課にも貸し出しを行なっている。H27年5月に行われる学校防災訓練では体育館の避難所で使用予定である。

3)実践の成果
減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
鹿折中学校の防災の取組を聞き、生徒が中心になって動く訓練の必要性を感じた。毎年3年生が避難所開設訓練を行うが、H27年5月の訓練に向けて現在の2年生が主体的に動けるように準備を進めている。各班のリーダー、サブリーダーを生徒会と学級委員、各委員長で組織し、その中から全体の長を決め伝達や連絡など今まで教員がやっていたことを生徒ができるような組織にする予定である。また今までは3年生のみの参加であったが、来年後輩がそれをつなげられるように2年生の代表の参加を考えている。

児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
本校の取組は全て生徒が主体的に動くことを目標としている。地域の方の協力はもちろん欠かせないものであるが、全生徒が自分の係をしっかりやることで責任感が芽生え、また終わったときに達成感が生まれる。たとえば学校防災訓練では、炊き出し班、仮設トイレ班、災害電話設置班、避難所班、地域活動班などの班に分かれるが、その中で全員が一生懸命自分たちの任された仕事を自主的に取り組む。今年度始めたまちなか点検も、生徒はリーダー、サブリーダー、カメラ係、記録係と仕事が分担されているので、任されたことをまず責任を持って行うが、それだけではなくお互いに協力し合って、みんなで一つのものを作りあげようという雰囲気がある。それはいままで積み上げてきたものがあり、先輩から後輩へ確実に受け継がれているからである。2年生になれば、これをやる、3年生になったらこれをやる、生徒達の中に先輩が行ってきたことを引き継がなければならないという気持ちが強い。

教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
本校では防災に関する取組だけでなく2年生の職場体験、学区域にある大岡山駅前花壇のボランティア、地域の祭りへの参加、本校に隣接する洗足池の環境を考えたホタル復活プロジェクトなど、地域とのつながりがなくてはできない取り組みが多い。防災の面でも学校防災訓練に加え、今年度新たに取り組んだまちなか点検は、地域の人と一緒に自分たちの町を歩くことで様々な情報を集める内容だが、まさに地域と共に行った取組だと思う。地域の方も初めは学校防災訓練では、どのように関わったらよいのか手探り状態であったが回数を重ねていったり、今年度初めての試みであるまちなか点検で約1時間生徒と一緒に歩くことでコミュニケーションをとり、つながりをより一層深めることになった。防災訓練の参加者も年々増えている。

4)実践から得られた教訓や課題と今後の改善に向けた方策や展望
今後は、様々な状況を想定した避難訓練の実施、教員の動きの訓練、生徒の企画・立案からの参加、1・2年生や小学生を含めさらに地域が参加する避難所開設訓練の推進、HUG体験・クロスロード体験などの新しい取組の実施を課題とした。

活動内容写真

活動において工夫した点

本格的に防災学習を始めて5年目を迎えるが、毎年新しいことを取り入れながら中学校3年間の大きな流れが整った。1年生では「そなエリア」の社会科見学、2年生では「本所防災館」での体験学習と、地域の方と行う「まちなか点検」、3年生で学校が避難所になったことを想定した「学校防災訓練」と「普通救命講習」受講。このように3年間を通し徐々に、より実際の災害時の状況に近くなり、役立つ内容を段階的に学習できるような流れになっている。学年ごとに防災に関する取組が確立していると、教員のメンバーが替わっても継続して行うことができる。資料・情報は必ず共有のものとし、いつでも見ることができるようにする。同じことを繰り返すだけでは発展性がないので、一つの取り組みが終わったら必ず振り返りを行い、来年度に申し送りと改善点を伝えるようにする。このように各学年で体験することがはっきりしていると、生徒も来年はこれをやるという意識が生まれる。また今の学年で取り組んでいることが、どのように来年つながってくるのかということを考えながら取り組むと心構えも違ってくる。この5年間で中学校3年間の防災学習が系統だって確立し、全校体制が整った。今後はさらに内容を充実させることができるように改善していく。

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