考えよう 私たちにできること ~平成30年7月西日本豪雨災害の教訓を生かすために~

岡山県倉敷市立薗小学校

活動に参加した児童生徒数/2~6 学年  158人
活動に携わった教員数/15人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/保護者・地域住民・その他( 岡山県立矢掛高等学校生 ) 63人

実践期間2024年5月21日~2025年3月17日

活動のねらい

被災の記憶を継承し教訓とすることで、自分の命は自分で守るために、必要な災害対応能力を育てていくことをねらいとしている。
第6学年では、小学校で学んできたことのまとめとして、総合的な学習の時間(以下 総合)に「考えよう、私たちにできること」の単元を設定し、被災以降継続して取り組んでいる。今年度も、「学ぶ」「伝える」「残す」活動に取り組むことで、下学年や地域の方の災害に対する意識を高めるとともに、被災の記憶の継承を行った。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
1学期

↓  西日本豪雨災害について学ぶ

↓  課題設定 → 情報収集

夏休み

↓  個人研究

2学期

↓  整理・分析→まとめ・表現→新たな課題設定→情報収集→整理・分析→まとめ

↓  グループ(教室用非常持出袋・地震・ライフライン・語り部・実験・防災グッズ・地域の方)ごとに探究

3学期

↓  まとめ・表現【薗学ぼう災(下学年・地域)】

↓  振り返り

2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
研修を受け、実際に体験することの意義の大きさを感じ、本校の活動にも取り入れたいと考えた。今年度の6年生の児童から、「学校の体育館を利用して、避難所体験を行いたい。」と、1学期末に提案があったが、倉敷市内では学校としての取組例が無く、実施するには課題が多かった。しかし、研修を受け、体験することの意義の大きさを考え、いただいた助成金で対応できることも多いことから、児童の思いを実現できるよう支援した。

また、昨年度までは予算が少なかったため、児童が実施したい企画内容が絞られていた。しかし、今年度は、本助成金をいただけることになり、金銭面を心配することなく自由に企画したり、数年前に企画していた内容に対しても、予算付けができたため、今年度の児童が意思を引き継ぎ実施したりすることができた。例年行っているNPO法人との連携で行っている「薗っ子だっぴ」を継続することもできた。

3)実践の成果
①減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から 
平成30年の被災以降、本校では防災・減災教育に積極的に取り組んでいる。しかし、一部の地域住民は、被災から5年を過ぎると、忘れかけたりどこか他人事になったりしているように感じられた。そこで、小学校の最終学年である6年児童が、小学校生活でのまとめとして防災・減災教育に取り組み、その成果を地域にも発信していくことで、地域の防災・減災意識を高めることに貢献できたと思う。

西日本豪雨災害では、6年児童33名中15名が被災しているが、当時は年長園児だったため、ほとんど記憶に無い児童もいる。そのため、この学習を通して防災・減災教育の大切さを実感し、多くの児童が自分事と捉えることができた。また、災害は豪雨災害だけではなく、地震をはじめ様々な災害が考えられるが、他の災害についても理解を深めることができた。そして、災害死者を出さないために、自らが率先避難者になろうという気持ちや、避難所では、自分ができることを考え行動したいという意欲が高まったと思う。

②児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
第6学年の総合「考えよう、わたしたちにできること」の単元では、被災の記憶の継承と災害対応力を育てることをねらいとして取り組んでいる。毎年、児童の思いから課題設定を行うため、取り組む内容が少しずつ異なっている。
  • 避難所体験
今年度は、避難所体験をすることで、課題を考えたいということであったが、体育館に宿泊することを考えると、夏休み中は難しく秋の実施とした。そして、避難所での生活を体験することで、災害時にも冷静に判断できる力を身につけたり、どんな備えが必要かを考えたりすることを目的とした。当日は、地区の防災士の方から、当時の様子や各自が持ち寄った防災バッグについての話を聞いた。児童は、自分が持ってきた防災バッグの中身と比べたり、教室用防災バッグの中身について見直したりする視点をいただいた。また、絵本の読み聞かせから、避難所には様々な立場の人が居るため、多様な考えが必要なことを学ぶこともできた。そして、実際に体験したことを通して、避難所設営の運営側と避難者の両者の苦労を知ることができた。また、本当に避難所に行かなければならないとき、衣食住の様子を事前に知っておくことで、素早く対応できる力を身につけることができた。
  • 薗っ子だっぴ
6年目となった「薗っ子だっぴ」の体験である。地域の方や高校生と一緒に、被災当時のことを語りあう経験を通して、地域の方の思いに触れたり、自分の考えを伝えたり広げたりすることができた。
  • 薗学ぼう災(下学年・地域の方)
1月17日(金)に2~5年生に向けて、1月29日(水)に地域の方に向けての「薗学

ぼう災」を実施した。下学年については、自分たちが学んだことや伝えたいことを、グループごとにポスターセッション形式で行った。

・教室用非常持出袋グループ

3年前から作成中だった「教室用非常持出袋」のグループは、先輩の意図を引き継ぎ、袋を完成させた。当日は、非常持ち出し袋を作った目的や中身の紹介、使い方などを示した。また、避難訓練では、実際に持ち出しを行い、下学年へ伝えることができた。

・地震グループ

児童は、今までは地震についてあまり調べていなかったが、夏の「南海トラフ地震臨時情報」が発表されたことを受けて、地震について詳しく調べた。その結果、地震の少ない岡山県でも、被害予想は思った以上に大きいことに驚いた。そのため、下学年に動画等を使って地震が起こった時の行動や備えることの大切さを伝えた。

・ライフライングループ

災害が起こり、もし水や電気が止まったらどのような行動をとるとよいかを、クイズ形式で、下学年に伝えた。また、非常用トイレの使い方を説明し、簡易トイレに座ってみることも行った。事前に体験をしておくことは、いざというときの助けとなると考えての コーナーで、始めて使う児童が多く意義は大きかった。

・語り部グループ

平成30年7月西日本豪雨災害について、自分たちが調べたことや実際に体験したことから、下学年に伝えたい内容を選び、スライド資料を活用して発表した。

・実験グループ

西日本豪雨災害が起こったのは、バックウォーター現象が原因だったことを知り、難しい内容ではあるが実験を行ったり模型を作ったりして伝えた。

・防災グッズ体験グループ

いざというときに使える、新聞紙スリッパやごみ箱づくりを行った。スリッパは、低学年児童と一緒に作成し、実際に履いてペットボトルキャップを敷きつめたところを歩いてもらった。たった一枚の新聞紙でも、足の裏が痛くないし安全ということが学べたようであった。

また、地域の方へのグループは、学んだことを伝えるだけでなく、自作のクロスロードゲームを体験していただいた。様々な場面で「自分だったらどのような選択をし行動するか」、「その理由はどうしてか」を、じっくりと語り合うことができた。その話合いは、児童にとっても地域の方にとっても、深い学びの時間となった。

それから、避難所体験で防災士の方の話を聞いたことから、「グループで一つの非常持ち出し袋を作るとしたら、何を入れるか」というカードゲームを考えた。数の制限を設け、グループのみんなが納得できるものを作るという工夫もみられた。台風で避難する場合の想定で行ったものの、「季節はいつか」など設定が不十分な点もあった。季節によって準備するものが異なるということも知ることができ、非常持ち出し袋は、一度作ったらいつでもそれを持ちだせばよいのではないことにも、気付くことができた。

(エ)3.11東日本大震災についての特別授業

3月11日の朝、現地研修で学んだことを特別授業として6年児童に伝えた。今年度の6年生は、西日本豪雨災害で同級生を亡くしている経験がある。保育園年長の時のため記憶になかったり知らなかったりする児童もいるが、そのことを思い出したり知ったりすることで、命の重さを感じ、災害から自分の命を守れるようになってほしいという願いも込めて行った。

【以下児童の感想(一部)】
  • 東日本大震災について、あまり詳しく知らなかった。高校生が、予定外の所まで避難してたくさんの人が助かったので、自分たちも予定していなくても安全な場所に避難できるようにしたい。
  • 東日本大震災があったとき、私はまだ生まれていなくて、話を聞くまでは「東日本大震災」という言葉でしか知らなかった。(略)震災にあった人の考えや思いを受け継いでいきたい。そのために、自分で考えて進んで行動できるようになりたい。
  • 今朝のニュースで東日本大震災について話していても、14年にもなるんだなと思っただけだった。でも話を聞いて、改めて地震・津波ってこわいことを実感した。(略)東日本大震災は他人事ではなく、災害から生かせることは何かを考えて行動していきたい。
  • 私たちの地域には、津波が来ることはないけれど、今後どこに住むかによって津波のことを知ることは大切だと思った。自然災害は、予想外のこともあるからとても怖いと改めて実感した。
授業後の感想を見ると、教師側の思いとは随分と異なり、6年児童は東日本大震災のことが分かっておらず、改めて教えることの大切さを感じた。来年度以降は、6年で行う防災教育の中に、地震についての内容を含め東日本大震災の教訓を伝えたい。そして、今後起こる南海トラフ地震への備えを学んでいく場の設定をしたいと強く感じた。

児童は、これらの活動を通して様々な災害を知り災害対応力の大切さや、小学生の自分たちでも地域の一員としてできることがあることを学ぶことができた。もしもの時には、率先避難者として声掛けができる判断力も身につけることができたと考える。

③教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
今年度は、薗地区まちづくり推進協議会と連携を取りながら行った。地区で行われている「薗防災の日」(7月実施)、「薗防犯・防災の日」(10月実施)に、6年生が積極的に参加した。また、参観日には3年・5年が防災についての授業を行い、保護者へ発信した。3年生が作成した、「防災安全マップ」は、地域の公民館などへ掲示をしていただき、地域の方にも見ていただくことで、学校での取組を知っていただくとともに、地域の方にも防災についての意識も高めていただきたいと考えている。

10月18日に倉敷市内の小学校に授業公開を行う機会があった。そこで、本校で取り組んでいる防災・減災教育の授業を示すことで、指導内容や取組方法を広げることができたと考える。

倉敷市の中でも、真備・船穂地区内の小学校のみ「防災部会」が設置されており、防災・減災教育について各校での取組を共有し、地区内で高め合っている。また、現地研修での学びを報告することで、災害に対する教師の視野を広げることができた。

4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
  今年度は、本助成金を6年生の取組に使わせていただいた。実際に体験することで知ることができた気づきや学びはとても大きかった。今後も、できるだけ継続していく方法を考えていきたい。

また、本校の防災・減災教育の取組は、学校全体で取り組んでいる内容もある。特に本校が行っている、実践的避難訓練をもう一歩進めることで、低学年から災害対応能力を高めていき、いつ起こるかわからない南海トラフ地震等でも生き抜く力を身につけさせたい。

それから、今回の避難所体験では、様々な関係機関への依頼が必要であった。倉敷市教育委員会をはじめ、管轄の警察署・消防署、倉敷市防災危機管理室、倉敷市自然の家など多くの関係機関の理解と協力を得ることで、実現することができた。関係機関との連絡調整をするには、担任だけの力では難しい。そこで、校長・教頭の管理職が積極的に関わることで計画をよりスムーズに進めることができた。今後も、チーム学校として防災・減災教育に取り組む必要を強く感じた。

来年度以降は、平成30年7月西日本豪雨災害後に生まれた児童が入学し、災害を知らない児童がほとんどになる。児童にとっては、歴史の一コマであり名前だけの物のため、自分事となりにくい。そこで、風化させないためにも、地域や同じ地区の学校と連携し、防災・減災教育をすすめていきたい。

さらに、本校の防災教育では、今までの「学ぶ」「伝える」「残す」に「つなぐ」を加え、児童を中心に家族と「つなぐ」、地域と「つなぐ」ことができるよう活動を広げたい。また、「過去」と「つなぐ」ことから、「未来」を考え「未来」につなげるために、「今」を大切にし「今」できることを児童自身が考え取り組めるよう仕組んでいきたい。

活動内容写真

活動において工夫した点

助成金をいただけたことで、児童や担任の思いを十分に活動に生かすことができた。特に、避難所体験では、関係機  関に児童が直接お願いの連絡をする体験もでき、今後、自分たちで何かの活動を行うときの段取りも体験できたことは、大変有意義だった。自分たちで試行錯誤しながら、やりたいことを実現させていくことは、災害が起きた時など様々な場面で率先して行動できる人を育てることにつながると感じた。
  避難所体験を学校が中心となって実施したことは、市内でも初めての取組のため、今後他の学校や団体が開催する際のモデルになると考える。被災地区をもつ小学校として、新しい取組にもチャレンジし、常に最新の知識をもち続けられる学校でありたい。

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