
次世代の担い手でつなぐ防災・減災コミュニティの創出
岩手県立岩泉高等学校
活動に参加した児童生徒数/2学年 37人、3学年 40人ほか、岩泉小学校児童28人、岩泉中学校生徒15人
活動に携わった教員数/19人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/保護者・地域住民・その他(自治体関係者、町議会員議員)約1000人
実践期間2024年6月12日~2025年2月14日
活動のねらい
単純な防災・減災教育ではなく、今や日本全体の課題ともなっている地域格差、消滅可能性のある地域を克服するための人材育成のなかに、防災・減災に向けたねらいや育成すべき資質・能力を包括する。具体的には、地域の大人が啓発して育成する防災・減災ではなく、高校生をリーダーに、地域の中学生・小学生と協働して防災・減災リテラシーの醸成や防災・減災に即応できる強固なコミュニティづくりをねらいとしている。資質・能力については、取り組みを通じて想像力・洞察力・コミュニケーション力・企画力・実行力・探究力・創造力・発信力・自己実現力の9つの力を本校では「9進力・究心力(きゅうしんりょく)」(=求心力)と称し育成していきたい。
活動内容
1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
ア 小学生と協働する「防災ジオラマ教室」(実施日:8月28日)
高校生をチューターに、小学生を対象として、岩泉町のジオラママップを作成して地域の地理的な姿を見える化し、そのジオラママップ上に自然災害の発生が考えられる箇所をマーキングしていくワークショップを行った。活動を通して地域の担い手となる若い世代に防災・減災リテラシーを育成・醸成することをねらいとした。
イ 中学生と協働する「郷土芸能フェス」(実施日:7月28日)
本校生徒が同好会として取り組んでいる郷土芸能(中野七頭舞)と岩泉中学校が取り組んでいる和太鼓演奏をツールに、県下の他の高校郷土芸能団体の協力・参加も仰ぎ開催した。郷土芸能を通じたイベントを基軸として、地域住民参加型の取り組みを拡充することで、住民に活力を与えるとともに、二度の甚大な被害からの復興を支え、地域コミュニティをいっそう強めることをねらいとした。
2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
ア 研修会の学びから
「N助」の観点から、異校種間での連携、地域との繋がりを意識したコミュニティづくりに重点を置いて実践できた。次回以降の課題として、学校間の交流だけではなく、地元企業・団体等との連携、活用を促進していくこと、実践の場が一時的もので終わらないよう、日々の教育活動の中に落とし込むことが挙げられる。
イ 助成金の活用で可能になったこと
・「防災ジオラマ教室」は今年度はじめての企画であったが、ジオラママップそのものに費用がかかり過ぎたため、計画上、経費をほかに回せなかった。しかし、助成金により実践のアセスメントのため、外部から来賓を招聘する交通費に充てることができた(実際は来賓が急病のため叶わなかった)。昨年度に引き続き取り組んだ「郷土芸能フェス」では、出演する郷土芸能団体を県外から呼ぶ費用が膨大であったため、県下高校の出演団体を縮小せざるを得ない状況であったものの、助成金によりその交通費に充てることができたため、前回以上の規模で行えた。さらに能登半島地震の復興支援にもつなげられ、取組そのものをより意義深いものにすることができた。
・前述の「防災ジオラマ教室」来賓交通費の余剰分が生じたため、助成金を活用して3学年にも専門家を活用した防災・減災を考える復興教育を実施した。地元・岩手大学の地域防災研究センターから坂口奈央准教授を招聘して、東日本大震災、能登半島地震の現状報告をふまえた地震・津波への対応と復興のあり方を「地域と共に生きる」というテーマでご教示いただいた。また地元NPO法人クチェカ代表の鈴木悠太氏から共助のあり方を講演いただいた。台風などによる河川氾濫・洪水、土砂災害だけではなく、地震・津波も含め幅広い防災・減災のあり方を深めることができた。
3)実践の成果
①減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
「防災ジオラマ教室」では、高校生がチューター役となり小学生に伝達する形式をとったことで、教える側である高校生自身が自分たちの認識していた防災意識を改めて見直す機会となった。また、上意下達のような行政主体の減災・防災活動とは違い、子どもたちが考える、子どもたち目線の教育活動を試みることができた。「郷土芸能フェス」では、高校生が地域の伝統継承のために取り組んでいる郷土芸能を媒体として、減災・防災を見据えた地域コミュニティの創出を見出すことができた。減災・防災教育や地域コミュニティを自分事として考える上で、高校生が日頃より行っている身近なもの(こと)がその素材となり得ることに気づくことができた。
②児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
本校生徒は、取り組みを通じて育成したい「9進力・究心力(きゅうしんりょく)」のうち、実践した「防災ジオラマ教室」「郷土芸能フェス」という取組を作っていく過程の中で、想像力・企画力・実行力を磨くことができた。また、学校以外の関係者とのやり取りを通してコミュニケーション力、実践後の振り返りや実施報告資料の作成などを通して探究力・発信力・自己実現力を育むことができた。さらに「防災ジオラマ教室」を協働した小学生は災害に対するリテラシー、「郷土芸能フェス」を協働した中学生はイベントに参加した地域住民の反応を通して、地域コミュニティの一員であることの自覚やコミュニティ創出の実効性を養うことができた。
③教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
実践として取り組んだ「防災ジオラマ教室」「郷土芸能フェス」を通じて、地域コミュニティの創出に向けた意識を育成・涵養することができた。「防災ジオラマ教室」については、町内で最も大きな小学校にて実践し、高学年児童への伝達が、やがては小学校内における高学年から中・低学年への伝達の道筋になったと捉え、次回は他の小学校へ実践の場を移そうと考えていたが、小学校児童の保護者の反響が大きく、来年また自分たちの子どもの学年でも!と、その下の学年の保護者からも要請の声が挙がっている。また、若い世代で防災士を増やしていく取組を行っている地元NPO法人からも、地域担い手の卵たちである高校生・小学生たちからこのような試みが行われること自体に大きな意味がある、と好評を得ることができた。一方、「郷土芸能フェス」では、能登半島地震の被災県である富山県からの郷土芸能出場チームを招聘・出場させたことで、地元の来場者から災害からの復興を共に支え合うきっかけになれば…との声も聞かれた。
4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
ア 小学生と協働する「防災ジオラマ教室」
ジオラママップにより地域の地理的な姿を可視化したことで、小学生も自然災害がどのような場所で発生し、どのように災害を避けなければならないかを具体的に意識することができた。ジオラママップのようなツールがいっそう深い学びにつながることが分かった。今回の小学校だけではなく、他の中山間地、海岸沿いにある小学校でも同様な取組を行い、町内全域をキャラバン的に巡って減災・防災を考える実践にしていきたい。
イ 中学生と協働する「郷土芸能フェス」
昨年度第1回は本校生徒と高校生の団体のみ、今年度第2回は本校と地元中学校、さらに高校3団体と、郷土芸能を基軸に地域住民参加型の取組として地域コミュニティが強まってきていると実感している。今後この取組は地域住民自らが企画・運営できる持続可能なイベントとていくうえでも、演舞・演奏を見せるだけのイベントに留まらず、出演する郷土芸能を体験できるような演出を行ったり、企画をはじめとした準備段階から地元の大人や自治体などを巻き込んだりしていきたい。
ア 小学生と協働する「防災ジオラマ教室」(実施日:8月28日)
高校生をチューターに、小学生を対象として、岩泉町のジオラママップを作成して地域の地理的な姿を見える化し、そのジオラママップ上に自然災害の発生が考えられる箇所をマーキングしていくワークショップを行った。活動を通して地域の担い手となる若い世代に防災・減災リテラシーを育成・醸成することをねらいとした。
イ 中学生と協働する「郷土芸能フェス」(実施日:7月28日)
本校生徒が同好会として取り組んでいる郷土芸能(中野七頭舞)と岩泉中学校が取り組んでいる和太鼓演奏をツールに、県下の他の高校郷土芸能団体の協力・参加も仰ぎ開催した。郷土芸能を通じたイベントを基軸として、地域住民参加型の取り組みを拡充することで、住民に活力を与えるとともに、二度の甚大な被害からの復興を支え、地域コミュニティをいっそう強めることをねらいとした。
2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
ア 研修会の学びから
「N助」の観点から、異校種間での連携、地域との繋がりを意識したコミュニティづくりに重点を置いて実践できた。次回以降の課題として、学校間の交流だけではなく、地元企業・団体等との連携、活用を促進していくこと、実践の場が一時的もので終わらないよう、日々の教育活動の中に落とし込むことが挙げられる。
イ 助成金の活用で可能になったこと
・「防災ジオラマ教室」は今年度はじめての企画であったが、ジオラママップそのものに費用がかかり過ぎたため、計画上、経費をほかに回せなかった。しかし、助成金により実践のアセスメントのため、外部から来賓を招聘する交通費に充てることができた(実際は来賓が急病のため叶わなかった)。昨年度に引き続き取り組んだ「郷土芸能フェス」では、出演する郷土芸能団体を県外から呼ぶ費用が膨大であったため、県下高校の出演団体を縮小せざるを得ない状況であったものの、助成金によりその交通費に充てることができたため、前回以上の規模で行えた。さらに能登半島地震の復興支援にもつなげられ、取組そのものをより意義深いものにすることができた。
・前述の「防災ジオラマ教室」来賓交通費の余剰分が生じたため、助成金を活用して3学年にも専門家を活用した防災・減災を考える復興教育を実施した。地元・岩手大学の地域防災研究センターから坂口奈央准教授を招聘して、東日本大震災、能登半島地震の現状報告をふまえた地震・津波への対応と復興のあり方を「地域と共に生きる」というテーマでご教示いただいた。また地元NPO法人クチェカ代表の鈴木悠太氏から共助のあり方を講演いただいた。台風などによる河川氾濫・洪水、土砂災害だけではなく、地震・津波も含め幅広い防災・減災のあり方を深めることができた。
3)実践の成果
①減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
「防災ジオラマ教室」では、高校生がチューター役となり小学生に伝達する形式をとったことで、教える側である高校生自身が自分たちの認識していた防災意識を改めて見直す機会となった。また、上意下達のような行政主体の減災・防災活動とは違い、子どもたちが考える、子どもたち目線の教育活動を試みることができた。「郷土芸能フェス」では、高校生が地域の伝統継承のために取り組んでいる郷土芸能を媒体として、減災・防災を見据えた地域コミュニティの創出を見出すことができた。減災・防災教育や地域コミュニティを自分事として考える上で、高校生が日頃より行っている身近なもの(こと)がその素材となり得ることに気づくことができた。
②児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
本校生徒は、取り組みを通じて育成したい「9進力・究心力(きゅうしんりょく)」のうち、実践した「防災ジオラマ教室」「郷土芸能フェス」という取組を作っていく過程の中で、想像力・企画力・実行力を磨くことができた。また、学校以外の関係者とのやり取りを通してコミュニケーション力、実践後の振り返りや実施報告資料の作成などを通して探究力・発信力・自己実現力を育むことができた。さらに「防災ジオラマ教室」を協働した小学生は災害に対するリテラシー、「郷土芸能フェス」を協働した中学生はイベントに参加した地域住民の反応を通して、地域コミュニティの一員であることの自覚やコミュニティ創出の実効性を養うことができた。
③教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
実践として取り組んだ「防災ジオラマ教室」「郷土芸能フェス」を通じて、地域コミュニティの創出に向けた意識を育成・涵養することができた。「防災ジオラマ教室」については、町内で最も大きな小学校にて実践し、高学年児童への伝達が、やがては小学校内における高学年から中・低学年への伝達の道筋になったと捉え、次回は他の小学校へ実践の場を移そうと考えていたが、小学校児童の保護者の反響が大きく、来年また自分たちの子どもの学年でも!と、その下の学年の保護者からも要請の声が挙がっている。また、若い世代で防災士を増やしていく取組を行っている地元NPO法人からも、地域担い手の卵たちである高校生・小学生たちからこのような試みが行われること自体に大きな意味がある、と好評を得ることができた。一方、「郷土芸能フェス」では、能登半島地震の被災県である富山県からの郷土芸能出場チームを招聘・出場させたことで、地元の来場者から災害からの復興を共に支え合うきっかけになれば…との声も聞かれた。
4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
ア 小学生と協働する「防災ジオラマ教室」
ジオラママップにより地域の地理的な姿を可視化したことで、小学生も自然災害がどのような場所で発生し、どのように災害を避けなければならないかを具体的に意識することができた。ジオラママップのようなツールがいっそう深い学びにつながることが分かった。今回の小学校だけではなく、他の中山間地、海岸沿いにある小学校でも同様な取組を行い、町内全域をキャラバン的に巡って減災・防災を考える実践にしていきたい。
イ 中学生と協働する「郷土芸能フェス」
昨年度第1回は本校生徒と高校生の団体のみ、今年度第2回は本校と地元中学校、さらに高校3団体と、郷土芸能を基軸に地域住民参加型の取組として地域コミュニティが強まってきていると実感している。今後この取組は地域住民自らが企画・運営できる持続可能なイベントとていくうえでも、演舞・演奏を見せるだけのイベントに留まらず、出演する郷土芸能を体験できるような演出を行ったり、企画をはじめとした準備段階から地元の大人や自治体などを巻き込んだりしていきたい。
活動内容写真
地域の地形をジオラママップに可視化してどのような避難が必要か小学生と共創した
地域の地形をジオラママップに可視化してどのような避難が必要か小学生と共創した
関心を持った多くの地域住民が来場
本校郷土芸能同好会「中野七頭舞」
富山県から招待した南砺平高校「越中五箇山民謡」
地元岩泉町の中学生による「岩中太鼓」
坂口准教授への質疑
「助け合いゲーム」で共助を考える

地域の地形をジオラママップに可視化してどのような避難が必要か小学生と共創した

地域の地形をジオラママップに可視化してどのような避難が必要か小学生と共創した

関心を持った多くの地域住民が来場

本校郷土芸能同好会「中野七頭舞」

富山県から招待した南砺平高校「越中五箇山民謡」

地元岩泉町の中学生による「岩中太鼓」

坂口准教授への質疑

「助け合いゲーム」で共助を考える
活動において工夫した点
高校生のみの減災・防災の教育活動ではなく、小学生であったり中学生であったりと、地域連携を意図した異校種間協働を前面に出して取り組んだ。ジオラママップを使った、小学生ならではの防災教室、地域住民誰しもが愛着の念を抱く郷土芸能を素材にした地域コミュニティを強化する取組を実践の特徴としている。