地域防災ネットワークプロジェクト~避難所体験をしよう~

愛知県立一宮東特別支援学校

活動に参加した児童生徒数/高等部3学年46人
活動に携わった教員数/体験型授業15人、避難所見学コーナー70人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/4人

実践期間2021年1月8日~2021年1月29日

活動のねらい

・防災活動を通じた交流を進め、学校、PTA、地域の地域防災ネットワークづくりをする。
・避難所見学コーナーを設置し、模擬避難所や非常食の見学を通して、全校児童生徒の減災への意識を高める。
・家庭の備蓄に関するアンケートを行い、保護者の意識向上を図り、家庭での備蓄の大切さを啓発する。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
実践内容
2020.9 ・職員打ち合わせ会議にて本プログラム助成校決定連絡
2020.10 ・市役所訪問、協力依頼
・NPO法人レスキューストックヤードへの本プログラムアドバイザー依頼
・PTA会長との打ち合わせ、本部役員参加の依頼
2020.11 ・生徒指導部打ち合わせ会議にて「避難所見学コーナー」詳細案提案
・職員打ち合わせ会議にて「避難所見学コーナー」詳細案提案
2020.12 ・管理職打ち合わせ会議にて体験型授業「避難所体験をしよう」計画案提案、新型コロナウイルス感染症対策確認
・体験型授業計画案について、レスキューストックヤード、PTA会長との打合せ
・一宮市役所へ防災用品等借用申請
・全校保護者対象「家庭の備蓄状況に関するアンケート」調査実施、集計
・一宮市障害者自立支援協議会での講演「発達障害の理解と支援~障害児とかかわる人の災害への備え~」のYouTubeを使用した期間限定配信を避難所見学コーナーでお知らせ、地域支援部と連携。
2021.1 ・一宮市役所にて防災用品等借用
・「避難所見学コーナー」設置、保護者アンケート結果の掲示
・一宮市障害者自立支援協議会での講演「発達障害の理解と支援~障害児とかかわる人の災害への備え~」のYouTubeを使用した期間限定配信のちらし配布(地域支援部)
・一宮市井端地区民生委員及び本校学校評議員へ、体験型授業「避難所体験をしよう」への参加依頼
・学年打ち合わせ会にて体験型授業「避難所体験をしよう」計画案提案
・体験型授業「避難所体験をしよう」実施
2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
  昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
①9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと
・本プログラムの連携のため、積極的に外部へ働き掛けた。一宮市役所危機管理課を訪問、避難所見学コーナーで使用する掲示用ハザードマップの提供、避難所設営用パーテーション等の借用という形で連携できた。PTA本部役員の方々とは、防災体験授業への参加協力、保護者への減災に関する啓発活動についての相談等、こまめに連絡を取り合い、連携できた。1月の緊急事態宣言発表を受けPTA主催の避難所体験が中止になったが、来年度も連携し合い、保護者への啓発活動を行っていくことを確認した。

②研修会を受けての自校の活動の変更・改善点
・学校全体と関連させた活動とするために、「避難所見学コーナー」を本校体育館ステージに15日間設置し、全校児童生徒が見学できるようにし、減災への意識を高める活動を追加した。
・一宮市役所危機管理課に本校の考える地域との連携について伝えたところ、県立学校である本校は、災害が起きたときに地域の避難場所の拠点として機能することは不可能であること、障害者への配慮などはほとんど想定されていないため、市民の非常食や毛布等も人数分の備蓄はされていないため、市民の自助や県や国の支援に期待している部分が大きいことが分かった。つまり、自助力の向上が必要であると実感し、児童生徒の減災意識を高めるだけでなく、保護者への啓発も必要不可欠であると痛感した。よって「家庭の備蓄に関するアンケート」を行うこととし、集計結果を見学コーナーに掲示した。

③昨年度までの実践と今年度の実践で変わった点
・減災教育プログラムに採択されたプランということで、生徒指導部を中心として、学年や学校全体で取り組むことができ、多くの協力が得られ、実践の対象を全校児童生徒に広げられた点。
・他の校務分掌とも連携ができた点。地域支援部からの情報提供があり、一宮市障害者自立支援協議会主催、愛知県立大学看護学部准教授 柴 邦代氏による講演会「発達障害の理解と支援~障害児とかかわる人の災害への備え~」のYoutubeを使用した期間限定配信のちらしを避難所見学コーナーに置き、保護者への啓発を行えたこと。

④助成金の活用で可能になったこと
・本プログラムのアドバイザーとして、NPO法人レスキューストックヤードとの連携ができたこと。早くから被災地に入って活動されている経験に基づいたアドバイスは、非常に参考になり、勉強になった。
・避難所見学コーナーでは、より実際に近い形で避難所を再現することができたり、アウトドア用品を活用した備えについての提案ができたり、学校で備蓄している非常食に加え、様々な非常食を掲示したりできたこと。
・ 購入したテント等を使用した体験型授業が可能になり、NPO、地域の方、保護者の方と一緒に授業実践ができたこと。

3)実践の成果
減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
・一日のみの体験ではなく、学校全体で取り組める活動となるように改善したことで、全校児童生徒を対象に実践することができたこと、全校を対象としたことで、PTAとの連携をより深めることができたこと。
・積極的に外部へ働き掛けたことで、NPO、行政との連携が新たにできて、地域との連携も継続できた。行政の話から、当初考えていた連携が難しいことが分かり、本校の児童生徒とその保護者にとって、どのような減災教育活動が必要か、学校全体で考えることができた。
・生徒指導部中心に実践の展開を行ってきたが、「避難所見学コーナー」を設置したことで、校務分掌を超えて地域支援部とも連携することができた。

児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
・レスキューストックヤード浦野様の講演の場面では、東日本大震災の実際の映像を見て、机の下に避難することや「大丈夫だよ」と声を掛け合うことの大切さを知ると、話を聞きながらうなずいたり、顔を見合わせたりしていた。想像することが難しい生徒たちであるが、考えながら話を聞いているのがよく分かった。体験の場面では、体育館で横になる、足音を聞く、アルミシートで暖を取る、模擬避難所で寝てみる、少ない水で手をきれいにする、非常用トイレに座るというような体験を通して、何かを教えてもらうのではなく、自分で感じよう、考えよう、自ら進んで取り組もうとする主体的な態度が見られた。振り返りの場面では、ここで一晩明かすのは嫌だと感じたこと、何があれば自分は安心できるか考えたこと、協力したり声を掛け合ったりすることが大切ということなどを自ら感じ、学び取ったことを積極的に発表できた。
・「避難所見学コーナー」を見学したり、授業で活用したりする中で、避難所とはどのようなところかを知るだけではなく、防災頭巾のかぶり方や災害時の避難の仕方も合わせて確認できた学級もあった。小学部、中学部の児童生徒たちも、自分の命を自分で守ろうとする意欲的な態度が見られた。

教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
・体験型授業や見学コーナーでの実践を一緒に行うことで、生徒達の反応を間近に見ることができ、体験を共有できることそのものが貴重な機会となったこと。災害が起きたとき、児童生徒は、地域の方々と避難したり、避難所で過ごしたりすることとなる。今回は、新型コロナウイルス感染症予防のため、地域の方も保護者も限られた方しか参加していただくことができなかったが、授業の中で災害が起きるという非日常なことを体験することそのものの重要性を実感した。

4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
・今年は新型コロナウイルス感染症予防策を取る必要があり、見学の仕方や防災授業の実施方法、参加者等、制限しながら取り組んだ。新型コロナウイルス感染症の拡大は、私たちの生活を変えるだけでなく、災害への備えや防災訓練、減災教育の在り方まで変えようとしている。今後は、新たな視点で取り組む必要がある。今年度、新型コロナウイルス感染症予防のため、職業・家庭や生活単元学習の授業において調理実習が全くできなかった。来年度も同じ状況が続くのであれば、調理実習の代わりに減災教育を取り入れ、今年度実施した体験型授業を中心に年間指導計画に位置付けたいと考える。

5)その他
・本校の児童生徒は、災害弱者である。日常のほんの少しのイレギュラーで情緒不安定になることもある児童生徒にとって、災害という巨大なイレギュラーによる不安の大きさは計り知れない。さらに、ここ何十年もこの地域には、大きな災害が起きていない。目の前に起きていない災害を想像し、児童生徒の生き抜く力を育てる、それが我々の使命だと考える。本プログラムの実践は、その小さな第一歩である。この学びを次につなげ、災害弱者である児童生徒がただ守られるだけの存在ではなく、学校や地域社会の安全活動に進んで参加・協力し、貢献しようとする気持ち、仲間や地域の力となる担い手として役割を果たそうとする気持ちを育んでいきたい。

活動内容写真

活動において工夫した点

・「避難所見学コーナー」では、展示物に手書きのポップをつけ、児童生徒の興味を引き出したこと。アンケートの集計結果の掲示や地域支援部と連携したちらしの設置など、保護者へ向けて、災害時だけでなく、災害時に備えた平素からの準備を啓発できるような情報を提供したこと。
・体験型授業「避難所体験をしよう」では、一宮市から借用した防災用品で作った「一宮市コーナー」と家にありそうなテント等アウトドア用品で作った「テント型コーナー」の2種類用意し、プライバシーの確保や安心感、防寒など快適さなどを比較できるようにしたこと。

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