「誰もが幸せになれる未来社会の創りかた」~防災・減災の視点から自分にできることを考えよう~

新潟市立内野中学校

活動に参加した児童生徒数/3学年 255人
活動に携わった教員数/13
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/5人

実践期間2024年6月12日~2025年1月16日

活動のねらい

防災・減災に関わる課題を自分事として捉え、他者と協働して課題解決に向けて活動に取り組む防災・減災教育を目指した。今回の活動を通して、当校の教育目標(目指す資質・能力)である「自主・他敬・自愛・創造」をESDの視点に立った学習指導で重視する能力・態度と関連させて育成するとともに、生徒自身が成長を実感できることをねらいとした。
【自主】多面的・総合的に考える力/進んで参加する態度
【他敬】コミュニケーション力/他者と協力する力/つながりを尊重する態度
【自愛】批判的に考える力/感情をコントロールする力
【創造】未来を予想して計画を立てる力/意見の対立や理解の相違を解決する力

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
活動 内容
6 課題設定講座 新潟大学工学部小浦方格先生の講義を通して,身近な事例から現状を把握・分析して問題を見つけていく視点や課題を設定する方法を学ぶ。
防災講義&ワークショップ 新潟大学工学部上田和孝先生による事前復興の考え方についての講演を聴くことを通して,災害について知る。
避難所開設シミュレーション体験 NPO未来創造堂による避難所開設のシミュレーションを通して,避難所としての学校の役割を知り,自分たちができる活動を考える。
地域交流活動 地域の方々との意見交流を通して,内野地域の防災・減災に関わる課題を共有する。
7 グループ探究課題設定活動 専門家から講演やコーチングを受け,探究課題を広げたり深めたりすることを通して,各グループの課題を設定する。
7~11 情報収集活動

プレゼン資料作成
調べ学習・試作・インタビュー活動・地域調査・アンケート集計などによって得た情報を整理・分析する。
11 中間発表会 専門家からご指摘、ご意見をいただき、グループの提案を練り直す。
12 グループ探究まとめ 防災・減災に関わる探究学習を探究サイクルに照らし合わせて振り返って評価する。
1 探究学習発表会 探究活動の提案を後輩に伝えることを通して、先輩として目指す姿を示す。
2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
9月の研修会では、減災教育におけるN助の意義や在り方を学ぶことができた。本年度の3学年の総合的な学習の時間では「防災・減災」×ものづくり,「防災・減災」×国際理解,「防災・減災」×まちづくり,「防災・減災」×動物保護の4つの分野から生徒自身が選択して,探究学習を進めた。課題設定の場面や情報整理、解決策を練り直す活動において、助成金を活用して各分野の専門家を講師として招いたり、インタビューしたりして外部との連携を図った。活動に協力いただいた外部機関は以下の通りである。

防災に関わる4つの探究分野

【 ものづくり 】新潟大学工学部准教授、学生

【 国際理解 】新潟大学工学部准教授、大学院生、留学生/新潟国際ボランティアセンター

【 まちづくり 】新潟大学工学部准教授、内野地区自治会長、防災士

【 動物保護 】新潟動物ネットワーク/新潟市動物愛護センター/動物病院/水族館/ペットショップ

3)実践の成果
減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から 
昨年度は日々の生活の中から身近な問題を見つけ、探究課題を設定した。課題を自分事として探究することができていたが、課題の内容が広範囲であるため、生徒も教員もどのような活動をしたらよいのか見通しをもつことに困難さを感じ、授業者として丁寧な伴走支援ができなかった。本年度は探究課題を防災・減災に関わる4つの分野に焦点化することで、見通しをもちながら探究活動を進めることができた。「継続していく」という意識のもとで立ち上げたカリキュラムであるため、次年度どのように実施できるか、実施するために年度当初から準備していくかなどの来年度の見通しをもつことができた。

また各分野でそれぞれの専門家と外部連携を進めることで、より深い知識を得たり、改善点を見いだしたりすることができた。

児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
生徒の課題解決策の提案の際、専門家からの指導・助言をもらうことによって、現在起こっている問題をより深く捉え、考案した解決策をさらに練り直し、自分たちができることは何かを見つけようとする姿勢もみられ、「自分事」として防災・減災の課題解決に向けて活動していた。また生徒自身、資質・能力の向上を感じており、特に「コミュニケーション力(他敬)」、「他者と協力する力(他敬)」の向上を感じている生徒が多数いた。

教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
教員として外部連携をする中で、人と情報、人と人、人と学習資源を適切に結びつけ、「調整」を行うコーディネート力が求められていることを実感した。また、外部連携を図ることで、教員の防災・減災教育への意識、知識が高まったことはもちろん、「教える」から「生徒とともに考え学ぶ」という探究活動における教員の学びの伴走者としての役割の変容を感じた。

4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
各分野の外部連携を図ることにより、生徒の考案する解決策の提案性が一段と高くなったことから、N助の意義を強く感じた。ただし、継続するためには外部連携にかかる費用を確保していかなくてはならない。

今年度は課題解決に向けた提案を考案する活動で終わってしまい、生徒が考案した提案を実践することまでは進めることができなかった。時間の設定や探究サイクルの見通しができていなかったことが要因である。今年度の活動を基にして来年度のカリキュラムを編成するとともに、生徒が提案を実施して、学校・地域の防災力の向上を発信させていきたい。また教職員間で探究サイクルをどのように回すと効果的なのか、どのような活動を組織するとよいのかなど、生徒の学びをさらに支援できるような研修を実施していきたい。

活動内容写真

活動において工夫した点

3年間の総合的な学習の時間の学習内容のつながりを意識して各活動を組織した。特に2年次の修学旅行では、陸前高田や気仙沼など東北をフィールドとした震災学習をおこなっているため、その学びを生かせるように前年度の学びを振り返りながら探究活動を進めた。
 近隣の新潟大学と連携を図りながら、カリキュラムの編成を行った。大学生・大学院生が中学生に専門知識や経験を語ったり、一緒に解決策を考案したりする活動を通して、中学生にとってはキャリア教育の観点と学習支援の観点から効果があったと考えられる。

資料ダウンロード

資料ダウンロード