
「防災×環境」オリジナル防災笛を作ろう!
逗子市立池子小学校
活動に参加した児童生徒数/4・6学年 102人
活動に携わった教員数/5人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/保護者・地域住民・その他(三菱ケミカル・湯本電機・高山商会) 6人
実践期間2024年9月2日~2025年3月20日
活動のねらい
「防災×環境」として以下の目的を達成できるようプロジェクトが立ち上がりました。
目的
① 「プラスチックを陸上で止め、海洋生物の命と棲家を守ろう!」
② 「集めたプラスチックで、人の最後の防災アイテム"オリジナル防災笛"を作り、人の命も守ろう!」
① について
・陸上のプラスチックを海に流出させてないで地上でリサイクルをする!熱しても、無害なPP(ポリプロピレン)を成形し直し、ゴミとなるプラスチックを資源に生まれ変わらせよう!という活動
② について
・6年生と合同で行った「*防災DAY」で防災士の梶谷さんがお話しくださった中の言葉「笛は息がある限りふけて、ここにいます!」と伝えることができます。その言葉から、児童が「笛がほしい!」となり、プロジェクトが始まりました。
*「防災DAY」・・・本市の市役所「防災安全課」の防災士2名と、地域の安全サポーター・社会福祉士の方1名をお招きして、「目黒巻き(震災想定)」や「市の活動」、「防災食・飲料の実食」、「防災トイレ設置」等を専門家と共に学ぶ授業
総合学習テーマに「防災」が共通としてある4年生・6年生とで合同で行いました。
活動内容
1)実践内容・実践の流れ・スケジュール(※図表等を使用して分かりやすく記述してもよい)
「でも、笛ってもちたい?」という疑問点から、「命を守るため、みんながどんな笛だったら持ちたくなるか。」について、みんなでアイディア出し合って、オリジナル防災笛をつくれないかとプロに相談することからはじめました。そして、金型をデザインして、ベトナムにある工場に依頼するという方法があることを知りました。
「プロジェクトチーム“PUZZLE”の結成」
企業の蓮見さんから“ミッション”を受ける児童
【ミッション】
「海に行かせない!!地上でプラスチックを止めよう!」そのために、まずは、生活でたくさん出るペットボトルキャップを集めよう! ️だからって新しく買わないよ!
・集めたキャップを洗浄・色ごとに選別し、粉砕していただくために工場に依頼
・同時に「どんなデザインだったら、みんなが持ちたい“防災笛”」
になるかを考え、デザイン案を企業に送りました。1月中に金型が完成し、2月に生成する予定です。
2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
・9月の2泊3日の研修を受講させていただき、最も強く感じたことは「その土地ごと、地区ごとにこだわりがある」ということです。研修会の中で私がキーワードとして思ったのが「当事者意識」という言葉でした。講師のみなさまのお話の中に、この「当事者意識をどう高めるか。どう持たせるか。」という問いがありました。「被災を経験した地域でも、そうした意識にはばらつきがある。」、「自身が経験をしていない未災地のなかで、どれだけイメージをもつことができるか。」そのような投げかけに対して、ではわたしのいる地域ではどのようにアプローチすることが「当事者意識を持ってもらうこと」につながるだろう。と、研修中、考えを巡らせました。
学校に戻り、教職員向けの研修会を設けさせていただく上で、私が最も伝えたいと思ったことは「地域が違えば“文化形成はちがう”」ということでした。こちらが見てきたこと、聞いてきたことを伝えても、一時的にその大切さを理解してもらえたとしても、「当事者意識」へと変容することは難しいのではないかと思い、自分事として捉えて考えてもらうには、その地域・土地に根付いていることと掛け合わせて考えてもらうことで、その一歩目を踏み出せるのではないかと思いました。教員向け研修会では、「教育×防災×地域文化」として、ワークショップを行いました。
本市は、海を持つ市として自然と密接に関われる環境にあると同時に、海洋問題(ゴミ・磯焼け等)や地震・津波への備えなどを意識することは日常的にあります。そうした町のもつ社会課題から、減災や防災とは一見関係があまりない視点からアプローチすることで、時間を掛けゆっくりと取り組み「気が付いたら、いつの間にか減災や防災のことを考えている状態」に向かえたらと思いました。
海を汚してしまう「プラスチック問題」を始まりに、プラスチックリサイクルの先に「防災」という視点と出会うことが本市には合うのではないかと思い、活動として取り組みを始めました。
「減災・防災意識」は、どんな国にも地域にも当たり前なことであることはみんなが理解しています。しかし、当たり前だからこそ、どこか「当事者意識」になれないところもあります。ですが、その地域ならではの、大切にしていることや受け継がれてきていること、独自のもつ社会課題やこだわっていることは必ずあります。そうした課題やこだわりは時代とともに変化していきます。現代の「今」を生きる人だからこそ「何が大切か」を考えるためにも、その土地ごとの特徴を理解する必要があると思いました。地域ごとに何を大切にしているのか、それは「お祭り」かも知れないし、「スポーツ」かもしれない、そして「減災・防災」かもしれません。そうした、その地域が長い年月を掛けて深めてきたことをもとに、よりよい暮らしを見つめていくことが大切だと思いました。今回の研修の中で宮城県の各地区が思う「減災・防災」の深さを知れたことは、とても大きな意味がありました。幸せに豊かに生きることは「他を知ること」からはじまるのかもしれないと思いました。
そのため、本市では社会課題としてある「プラスチック問題」と「減災・防災」を掛け合わせて取り組むこととしました。いただきました助成金は、その「オリジナル防災笛作り」の金型代に使用させていただきました。
この取組は、今年度だけの活動にせず、本校の全児童、また、新たに入学する児童にプレゼントしていくことを続け、オリジナル防災笛を通して、「当事者意識」をもつことを継続させていく取組に発展させていきました。
2024年2月27日(木)に、湯本電機さんと高山商会さんをお招きして、ベトナムの工場から届いた金型を使って、廃プラスチックを溶かし、インキュベーターを使用して実際に射出しました。児童は、笛に合うデザインを描いたり、取り付け用の紐を編んだりして、オリジナリティー溢れる笛が出来上がっていきました。
3)実践の成果
①減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
・最も課題と感じていた「当事者意識への変容」として、この取組が本校の伝統的文化として根付き、「意識」が途絶えることなく、伝承され続けることをねらいたいと思います。今年度、中心として取り組んでいる4年生からは、「自分たちができることは全部やっていきたい。」と、とても前向きな言葉が聞かれました。また、笛作りを通して「オリジナルの笛を見る度に、学んできたことを思い出したい。」と、学習を日頃の生活に活かそうとする前向きな言葉も聞かれました。
- 児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
・「減災・防災」は、誰かがやってくれることという意識から、自分たちが「行動する」という意識へと変容しました。児童の感想の中にも「防災学習を始めてから社会科が好きになった。」や「防災は大人がやることだと思っていたけど、自分にもできることがあることを知れてよかった。」、「自分だけでなく、町にいる様々な人(障害のある人やペットを飼っている人)のことも考えて、避難の仕方を学びたい。」と、視野の広がりが見られました。
③教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
・教職員向けの研修会に、地域の防災士の方や安全サポーターの方々も参加くださり、多くの方でこれからの池子地区の防災について対話することができた。その後の会の中でも、学校行事として「1日防災の日」という日を定め、学校・保護者・地域みんなで避難所の設営をしたり、炊き出しをしたりして、それぞれの立場でできることについて体感する会を作っていこうという話も出ています。時間は掛かるかも知れませんが、毎年、継続して行っていくことで、学校だけでなく「地域一帯」となった減災・防災の力が高まっていくことをねらいたいと思います。
4)実践から得られた教訓や課題と、次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
・課題として、防災学習という括りで考えてしまうと広がりやつながりが持てず、単発の学習で終えてしまうことがあります。それが「当事者意識」を高められない教育的課題でもあると思います。今年度も「防災DAY」を6年生と共催で行ったのですが、目的の共有や調整が難しく、それ以降の関わりをまだ上手く持つことができていません。今回の「オリジナル防災笛作りプロジェクト」を継続させていく中で、学校文化として、「減災・防災への意識」が高められるような取り組みに発展させていきたいと思います。
「でも、笛ってもちたい?」という疑問点から、「命を守るため、みんながどんな笛だったら持ちたくなるか。」について、みんなでアイディア出し合って、オリジナル防災笛をつくれないかとプロに相談することからはじめました。そして、金型をデザインして、ベトナムにある工場に依頼するという方法があることを知りました。
「プロジェクトチーム“PUZZLE”の結成」
企業の蓮見さんから“ミッション”を受ける児童
【ミッション】
「海に行かせない!!地上でプラスチックを止めよう!」そのために、まずは、生活でたくさん出るペットボトルキャップを集めよう! ️だからって新しく買わないよ!
・集めたキャップを洗浄・色ごとに選別し、粉砕していただくために工場に依頼
・同時に「どんなデザインだったら、みんなが持ちたい“防災笛”」
になるかを考え、デザイン案を企業に送りました。1月中に金型が完成し、2月に生成する予定です。
2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
・9月の2泊3日の研修を受講させていただき、最も強く感じたことは「その土地ごと、地区ごとにこだわりがある」ということです。研修会の中で私がキーワードとして思ったのが「当事者意識」という言葉でした。講師のみなさまのお話の中に、この「当事者意識をどう高めるか。どう持たせるか。」という問いがありました。「被災を経験した地域でも、そうした意識にはばらつきがある。」、「自身が経験をしていない未災地のなかで、どれだけイメージをもつことができるか。」そのような投げかけに対して、ではわたしのいる地域ではどのようにアプローチすることが「当事者意識を持ってもらうこと」につながるだろう。と、研修中、考えを巡らせました。
学校に戻り、教職員向けの研修会を設けさせていただく上で、私が最も伝えたいと思ったことは「地域が違えば“文化形成はちがう”」ということでした。こちらが見てきたこと、聞いてきたことを伝えても、一時的にその大切さを理解してもらえたとしても、「当事者意識」へと変容することは難しいのではないかと思い、自分事として捉えて考えてもらうには、その地域・土地に根付いていることと掛け合わせて考えてもらうことで、その一歩目を踏み出せるのではないかと思いました。教員向け研修会では、「教育×防災×地域文化」として、ワークショップを行いました。
本市は、海を持つ市として自然と密接に関われる環境にあると同時に、海洋問題(ゴミ・磯焼け等)や地震・津波への備えなどを意識することは日常的にあります。そうした町のもつ社会課題から、減災や防災とは一見関係があまりない視点からアプローチすることで、時間を掛けゆっくりと取り組み「気が付いたら、いつの間にか減災や防災のことを考えている状態」に向かえたらと思いました。
海を汚してしまう「プラスチック問題」を始まりに、プラスチックリサイクルの先に「防災」という視点と出会うことが本市には合うのではないかと思い、活動として取り組みを始めました。
「減災・防災意識」は、どんな国にも地域にも当たり前なことであることはみんなが理解しています。しかし、当たり前だからこそ、どこか「当事者意識」になれないところもあります。ですが、その地域ならではの、大切にしていることや受け継がれてきていること、独自のもつ社会課題やこだわっていることは必ずあります。そうした課題やこだわりは時代とともに変化していきます。現代の「今」を生きる人だからこそ「何が大切か」を考えるためにも、その土地ごとの特徴を理解する必要があると思いました。地域ごとに何を大切にしているのか、それは「お祭り」かも知れないし、「スポーツ」かもしれない、そして「減災・防災」かもしれません。そうした、その地域が長い年月を掛けて深めてきたことをもとに、よりよい暮らしを見つめていくことが大切だと思いました。今回の研修の中で宮城県の各地区が思う「減災・防災」の深さを知れたことは、とても大きな意味がありました。幸せに豊かに生きることは「他を知ること」からはじまるのかもしれないと思いました。
そのため、本市では社会課題としてある「プラスチック問題」と「減災・防災」を掛け合わせて取り組むこととしました。いただきました助成金は、その「オリジナル防災笛作り」の金型代に使用させていただきました。
この取組は、今年度だけの活動にせず、本校の全児童、また、新たに入学する児童にプレゼントしていくことを続け、オリジナル防災笛を通して、「当事者意識」をもつことを継続させていく取組に発展させていきました。
2024年2月27日(木)に、湯本電機さんと高山商会さんをお招きして、ベトナムの工場から届いた金型を使って、廃プラスチックを溶かし、インキュベーターを使用して実際に射出しました。児童は、笛に合うデザインを描いたり、取り付け用の紐を編んだりして、オリジナリティー溢れる笛が出来上がっていきました。
3)実践の成果
①減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
・最も課題と感じていた「当事者意識への変容」として、この取組が本校の伝統的文化として根付き、「意識」が途絶えることなく、伝承され続けることをねらいたいと思います。今年度、中心として取り組んでいる4年生からは、「自分たちができることは全部やっていきたい。」と、とても前向きな言葉が聞かれました。また、笛作りを通して「オリジナルの笛を見る度に、学んできたことを思い出したい。」と、学習を日頃の生活に活かそうとする前向きな言葉も聞かれました。
- 児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
③教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
・教職員向けの研修会に、地域の防災士の方や安全サポーターの方々も参加くださり、多くの方でこれからの池子地区の防災について対話することができた。その後の会の中でも、学校行事として「1日防災の日」という日を定め、学校・保護者・地域みんなで避難所の設営をしたり、炊き出しをしたりして、それぞれの立場でできることについて体感する会を作っていこうという話も出ています。時間は掛かるかも知れませんが、毎年、継続して行っていくことで、学校だけでなく「地域一帯」となった減災・防災の力が高まっていくことをねらいたいと思います。
4)実践から得られた教訓や課題と、次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
・課題として、防災学習という括りで考えてしまうと広がりやつながりが持てず、単発の学習で終えてしまうことがあります。それが「当事者意識」を高められない教育的課題でもあると思います。今年度も「防災DAY」を6年生と共催で行ったのですが、目的の共有や調整が難しく、それ以降の関わりをまだ上手く持つことができていません。今回の「オリジナル防災笛作りプロジェクト」を継続させていく中で、学校文化として、「減災・防災への意識」が高められるような取り組みに発展させていきたいと思います。
活動内容写真





活動において工夫した点
・学校だけでの活動にせず、学校・保護者・地域・企業をつなぎ、児童の主体的な活動を循環させていくためのプログラムが組めたことは、今後のつながる大きな動きになっていくと思います。児童から出たアイディアを実現するために、企業にアプローチし、相談や対話を通して活動のベースラインを作成し、保護者には「ペットボトルキャップの回収」の協力を依頼する意図を伝えることで、「減災・防災への意識」をもってもらい、この活動の実働を地域の安全サポーターに依頼することで、持続性のある活動へと導いていきたいと思います。
・専門家を招くことで、より根拠や信頼のある活動になったと思います。
今回のプロジェクトでは「環境」を守ることを同時に行ってきましたが、
専門家の方々からも「プラスチックは決して“悪者”ということではありません。プラスチックでないとできない医療や地域の安全・安心を守る取り組みもあります。」と実例と共にお話をいただきました。プラスチックを使用する人間が、そのことを理解し、正しく活用・循環していくことも同時に大切にし、現代の社会課題となっている気候変動や海洋問題にも当事者意識が向くよう、継続した取り組みを続けたいと思います。