自然災害 … そのときあなたはどうする?

釧路市立山花小中学校

活動に参加した児童生徒数/小学1・3~6学年、中学1~3学年19人
活動に携わった教員数/13人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/25人

実践期間2017年6月1日~2018年3月23日

活動のねらい

本校は、釧路市街に位置する小規模の小中併置校であり、児童生徒の80%は、市内の様々な地域から通う特認校である。児童生徒は保護者運転の自家用車による送迎で通学しており、通学時間は平均すると30分以上要する状況である。そのため、登下校途中での被災の可能性も高く、その際の行動様式を個々の通学の状況に応じて保護者と共に考えさせ、それにしたがって行動できる実践力を育てることが重要である。
また、学校が避難所としての役割を有していることから、在校時に災害が発生した場合、避難してくる地域住民の受け入れや児童生徒でも可能な避難所でのボランティア活動等を想定した学習や演習を教育課程に組み入れ、より積極的な防災(減災)の意識や実践力の向上をめざすものである。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
◇減災教育オリエンテーション(9月1日)
児童生徒に対し、日本は地震や津波など大きな自然災害が起きやすいことや東日本大震災の様子を伝えた。その上で、減災教育の必要性や本校で行う減災教育のロードマップを示した。
◇非常食の試食会・減災教育の取組の発表会(10月7日)
収穫祭の中で、中学校3年生が取り組んだ非常食づくりの研究成果発表とその試食会、市教委提供のアルファ米の試食、段ボールベッド体験など、これまでの減災教育の取組を保護者・地域住民と共有した。
◇親子防災教室(10月21日)
親子で自然災害の危険性と有事にどのように命を守るかを考えた。特に、車での登下校時に災害が起きたときの避難経路と避難場所の確認、通常の登下校の経路における高い建物や場所の確認を行った。
◇避難所運営ゲーム(Doはぐ)体験教室(12月20日)
地震やそれに伴う津波などの災害時に「もし学校が避難所になったら、どのように運営をするのか」を運営する側の行動や配慮などについてカードを用いたゲーム形式で学んだ。
◆各教科等における実践
【理科】気象台の職員を講師に、火山の危険性や噴火した際の注意事項等を学んだ。【技術・家庭】紙の模型を用いて強度のある構造について学んだ。また、部屋の家具の配置について、地震を想定したときの正しい配置について学んだ。【数学】津波の速度が水深の1/2乗に比例することから、水深からおおよその津波の速度を求めた。【道徳】福島県の震災に関わる副読本から、被災者の立場や心情を考えることを通して、思いやりの心について考えを深めた。

2)9研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
  昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
被災地での減災教育の視察や研修会での専門的な学びから、減災教育を指導する側として、あるべき心構えをもつことができた。そのため、避難行動の様式を繰り返す訓練から、どのようにすれば自他の命を守ることができるのか状況を判断し、望ましい行動を考えるような活動を増やすことができた。また、助成金を受けることで、通常ならば優先順位が低くなる災害など有事への備えに対する備品や教材の購入が可能になった。そのため、実物を示しながら非常持ち出しグッズの確認ができたり、乾燥野菜による非常食づくりをしたりすることが可能となった。

3)実践の成果
減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
減災教育を各教科等の教育課程の中に位置付け、計画的かつ実践的な授業を十分に確保することができた。そのため、各分掌の仕事に適切に減災教育を振り分けることができ、学校全体で取り組む態勢を整えることもできた。また、減災教育が災害に対する備えに閉じることなく、各教科等と減災教育を関連させることや教科と教科を減災教育をとおして関連させることができ、教育課程を新たな視点で見直すことにもつながった。

児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
減災教育をとおして、改めて生命尊重の気持ちや自他の命を守ることの大切さを学ぶことができた。そのことにより、避難所運営ゲームでは様々な事情に対して細かな配慮ができたり、日常においても思いやりの心をもって生活できる児童生徒が増えた。

教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
保護者や地域の方々からは学校教育評価等で減災教育の取組について高い評価を頂いた。特に、一般の学校ではなかなか取り組めないものではあるが、生きていく上でとても大切な学びを教育課程に位置付け、学校全体で取り組みを進めていることへの評価であった。また、災害の際に、どこに避難するか、どこが安全かを参観日に家族で考える機会を設けたことで、保護者や教員の減災防災意識も高まった。

4)実践から得られた教訓や課題と今後の改善に向けた方策や展望
災害によりどんな甚大な被害を受けようとも、優先されるべきは生命の尊重であり、全ての人が協力して苦難を乗り越えていくことが大切であることを、改めて学ぶことができた。また、そのために必要となる考え方やスキルを少しずつではあるが身に付けることができた。ただ、この取組が一過性のものとならないように適切に教育課程に位置付け、継続した取組を行う体制づくりをする必要がある。ただ、本校における減災教育の質の向上を図るだけでなく、地域に減災教育の必要性やその具体的な方法などを発信できる学校を目指していくことも大切である。

活動内容写真

  • 登校時の経路と経路上の避難施設の確認

  • ミサイルに対するJアラート発令時の避難訓練の様子

  • 非常食試食会、減災教育の取り組み発表会(かぼちゃチップスの試食)

  • 非常食試食会、減災教育の取り組み発表会(段ボールベッド作成の様子)

  • 避難所運営ゲームに取り組む参加者(児童生徒、保護者、地域住民)

活動において工夫した点

本校は釧路市の郊外にあり、自然に恵まれた学校であることから、広大な学校農園を活用した栽培学習を行っている。そのため、学校農園で収穫した大根やかぼちゃ、ごぼう、ニンジンなどを乾燥させ、長期間保存できる食材づくりやその食材を使った非常食づくりは本校の特色を生かした減災教育と言える。また、小規模の併置校であるため、地域や保護者との関係も親密であることから、学校・地域・家庭の三者で集まって行った避難所運営ゲームも本校の特色を生かした活動と考える。

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