自分たちの手で創り上げる 地域に密着した「防災ゲーム」

長野県豊丘村立豊丘北小学校

活動に参加した児童生徒数/4学年 14人
活動に携わった教員数/20人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/100人

実践期間2023年5月8日~2026年3月10日

活動のねらい

豊丘北小学校の4年生14名は昨年度より、総合的な学習の時間に防災学習に取り組んでいる。
3年生の社会科の町探検で、自分たちの住んでいる地域に災害の危険があることを知ったことがきっかけだ。この地域には過去に大きな自然災害が起きたことや、近い将来災害が起きるかもしれないことも知った。
過去地域で発生した災害について、砂防ボランティアの方や地域の消防士さんに話を聞いまずは自分にとって一番身近な家族に正しく伝え、家庭での防災意識を高められるようにするために、非常持出袋について考え、各家庭に非常持出袋を準備するよう呼びかけ、もっと多くの人に非常持ち出し袋のことを広めたいと願うようになった。
そんな中で、信州大学教育学部安達仁美先生より、防災ゲーム「なまずの学校」をお借りし、ゲームを実施した。その際、災害時の対策や備えについてゲームを通して楽しく学べることを知り、自分たちもいろいろな人に「ゲームを通して楽しく防災のことを学んでほしい」と願うようになった。
学習のまとめとして、非常持出袋を用意する重要性を全校集会(Googlemeet)で全校に対して「非常持出袋って知ってる?」をテーマに発表を行った。「なまずの学校」の経験から、自分たちもクイズをしたいと願い、発表の中で〇×クイズを出題した。集会前後にはGoogleフォームにてアンケートを実施し、アンケートの結果から全校が楽しく防災について学んだことを実感し、達成感を感じることができた。しかしながら、作ったゲームはすべてインターネットや本からの情報を用いており、「自分たちが作ったゲーム」というところに、納得していない様子もあった。

 昨年度末、子どもたちの中に残った「自分たちの作ったゲームがしたい」という気持ちを再確認し、地域の災害や防災に関わった「自分たちが地域のことや、災害のことを調べて作った問題」の防災ゲームを作ることを今年度の活動の目的とした。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
1学期(4〜7月)

今年度取り組みたいことの洗い出し

防災ゲーム調べ →  購入

2学期(9〜12月)

助成金で購入した防災ゲームで遊ぶ

アクサユネスコ協会防災減災プログラム参加

特定非営利活動法人プラスアーツさんオンライン授業

ゲーム制作

3学期(1月〜)

ゲーム制作

ゲーム実践

2月2日 信州ESDSDGs成果発表会 参加

2月17日~21日 全校にむけて作った防災ゲームを体験してもらう「防災ゲーム週間」実施

3月 活動報告会

2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。

まずは自分たちが豊丘村や飯田下伊那地域にまつわる災害や防災について学び直し、ゲームやクイズを通してどのようなことを伝えたいか考えていくことにした。

そして、10万円の使い道を子どもたちと相談し、まずは世の中にたくさんある「防災ゲーム」を自分たちがやってみようということになり、どんなゲームがあるのか子どもたちと調べ、カードゲームやすごろく、オンラインゲームなど様々な防災ゲームを購入することにした。

早速購入した複数のゲームを体験し、自分たちが創り上げていきたいゲームの種類を決めだしていくなかで、どうしても既存のゲームの真似事感が強く出てしまった。子どもたちの中にも、そして私の中にも防災ゲームの固定概念が生まれており、考えをふくらませることができずにいた。

そんな中で9月に気仙沼市で開催された教員研修会の中で、防災や自然災害を学ぶ上で一番大切なのは「本物から学ぶこと」だと痛感した私は、子どもたちにも「本物から学んでほしい」「本物に出逢ってほしい」と願うようになった。

そこで、子どもたちが初めて遊んだ防災ゲーム「なまずの学校」を製作販売している特定非営利活動法人プラス・アーツさんへ問い合わせをし、子どもたちのために防災や防災ゲームについてお話をしていただきたいとご相談すると、快く引き受けてくださり、オンライン授業が実現することとなった。

プラスアーツさんからは、防災において効果的なプログラムを作るヒントとして、楽しみながらもしっかり学べるような工夫をすることや、どんなことも見方や考え方を「防災」にすることでクリエイティブな発想が生まれることを教えていただいた。

3)実践の成果
減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
活動が始まると、自分たちが豊丘村や飯田下伊那地域にまつわる災害や防災について学び直し、ゲームやクイズを通してどのようなことを伝えたいか考えていくようになった。しかし、子どもたちとの学びの中で、担任の私自身が災害について不勉強であること、地域に起こる災害の危険性、子どもたちの学びを支えられる知識のなさを痛感し、子どもたちの学びを支える知識を習得したいと考え、私が学生時代から関わっている飯田ユネスコ協会の皆様にご協力いただきながら、『アクサ ユネスコ協会減災教育プログラム』へ申し込むことにした。

プログラムに参加したことで私自身が得たこと

・現実的な知識とスキル

①地域特有の災害リスクの理解: 被災地ならではの災害の特徴や、過去の災害事例を学ぶことで、より具体的な防災対策を知ることができた。

②災害時の行動: 自宅や学校、地域における災害時の行動を、実際の体験談や復興に向けての取り組みから学ぶことができた。

・精神的な準備

①心理的な安定: 災害に対する何となくあった不安を明確にし、心の準備を整えることができた。

②コミュニティとのつながり:プログラムに参加されている先生方と災害について共に学ぶことで、新たなネットワークが生まれた。

・地域社会や学校への貢献

①地域防災力の向上: 学んだ知識やスキルを子どもたちに還元し、子どもたちの防災力を高めることができた。

児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
  • 防災行動力・情報発信力
この地域でおこりうる災害や防災に対して、個人が、家庭が、地域が、それぞれが命を守るために取るべき行動について考える力を身につけることができた。そして、考えるだけで終わらずに、実際に非常持ち出し袋を用意したり、防災ゲームを作ったりと行動に移していく力も身につけることができた。

自分たちが聞いたり集めたりした情報に対して、自分なりの考えを持ち、思いを言葉やカタチにまとめて発表する情報発信力を、3学期のまとめ活動を通して身につけていきたい。

②正解のない問いに向き合う力

間違えることや失敗することに対して不安を抱き、正解や模範的な答えばかりを求めてしまう児童たちが、過去の震災やこれから起こるであろう災害について考えることを通して、普段の学校の学習では学ぶことの少ない「正解のない問い」「考えてもなかなか答えの出ない問い」に向き合う力を身につけていくことができた。

③地域愛

災害に係る仕事に就く方の話を聞いたり、防災ゲーム作りに携わる方々の話を聞いたりすることで、何かをするときには必ず「人」が関わり、「人」が助けてくれることを感じることを通して、自分たちの生まれ育った豊丘村や飯田下伊那の地域や人に愛着を持ち、自分たち自身の手で、自分や家族だけでなく、周りの人の命や地域全体を災害から守っていこうとする防災意識を育むことができた。
  • 教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
・家族への影響

①防災意識の向上: 子どもたちがゲームを作ることを通して、子どもが防災について真剣に考え、学んでいる様子を見ることで、保護者自身も防災の重要性を改めて認識し、家庭での防災対策を見直すきっかけとなった。子どもたちが呼びかけた非常持ち出し袋を用意したり、災害について家族で災害の話題をしたりする様子がみられた。

②親子間のコミュニケーション促進: 子供どもたちがゲームの内容や防災に関する質問をしてくることで、親子で防災について話し合う機会が増えた。家族の会話の役に立つように、学級通信をこまめに発行して学習した事や、ゲーム制作の途中経過を発信した。

③子どもの成長を実感: 子どもたちがゲームを通して知識やスキルを習得し、成長していく姿を見ることで、保護者としての喜びや達成感を感じている様子だった。

・地域社会への影響

①地域全体の防災意識の向上: 学校を通して、地域の子供たちが防災について学んでいることを知り、地域住民全体の防災意識が向上する可能性がある。飯田ユネスコ協会の会長がゲーム制作の途中経過を参観にきてくださり、理事会に報告してくださったり、長野県ESDコンソーシアム(2月開催)にて活動発表を行なったり、子どもたちの実践を広げていけるようにしていく。

②新たな防災活動の創出: 子どもたちが作ったゲームを参考に、地域全体で防災に関するイベントや取り組みが企画されるようになるよう、新聞などの媒体を利用して広報を行った。

4)実践から得られた教訓や課題と、次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
①柔軟な思考と発想の大切さ

子どもたちは、大人とは異なる視点から問題を捉え、ユニークな解決策を提示してきます。子どもたちの発想の発想はとてもユニークで、新しいアイデアを生み出すきっかけとなった。

②好奇心と探究心

子どもたちは、何事にも興味を示し、自ら進んで学ぶ姿勢を持っていました。私自身も、子どもたちのように学ぶことの楽しさを再認識できた。また、子どもたちは、未知のことに対して恐れずに挑戦し、新しい発見をします。私自身も、子どもたちと一緒に学び、成長することができた。新しいことを学び実践することの楽しさ、大人も子どもも同じなのだと感じた。

③ 創造性と想像力

子どもたちは、既成概念にとらわれず、独創的なアイデアを生み出すことができ、言葉だけでなく、絵や音楽など様々な手段で自分の考えたことを「ゲーム」という形で表現している。大人から見ると「それは無理なのでは?」と思うようなアイデアも、子どもたちの創造性と想像力で実現させている。

次年度への課題

今回の実践は、4年生が総合的な学習の授業の中で単独で実践しており、学校全体に普及することが難しいと感じていたが、新聞に掲載されたことで、多くの人に活動を知ってもらうことができた。地域に知ってもらうだけでなく、学校内の職員の中にも、4年生の活動を知らないものも多かったため、とても良い機会となった。

大きな課題をあげるとすると、今回の研修で学んだ事や感じた事を学校内の職員や、保護者に報告する時間はなかった。自分自身の所属するユネスコクラブ(新ユネスコクラブ設立準備委員会)のオンラインイベントや、飯田ユネスコ協会理事会で実践報告を行った。防災は学校全体で取り組んでいく必要があることを今回のプログラムで痛感したので、次年度は、管理職や他の教員とも連携し、防災学習をより充実させていく必要がある。

活動内容写真

活動において工夫した点

子どもたちが制作したゲームは以下の3つである。
①楽しい防災訓練
災害物資に見立てた段ボールをバケツリレーのように運び、段ボールを高く積み上げていくゲーム。
防災訓練というと、厳しく、楽しくないというイメージを払拭するために企画している。
②着せ替えゲーム
災害時避難する際に相応しい服装を選んで、人形を着せ替えるゲーム。
災害時は避難する際、服装や持ち物に気をつけなければいけないことを呼びかけるために企画している。
③災害バトルゲーム
子どもたちの中で流行っているカードゲームから発想を得て、災害というボスを倒すゲーム。

子どもたちは「多くの人に自分たちの作ったゲームを知ってほしい、遊んでほしい」と願っていたため、長野県 ESDSDGs成果発表会に参加し、活動発表を行った。その結果、たくさんの人の前で発表することができ、新聞社2社から取材の依頼があり、新聞に自分たちの活動やゲームが掲載されたことで、子どもたちの実践を広げていくことができた。学校内でも「防災ゲーム週間」を企画し、全校児童にゲームで遊んでもらうことができた。

年度末には、お世話になったプラスアーツさんに向けて活動報告会を開き、自分たちの作ったゲームについて説明した。感想だけでなく、改善点やプロから見た視点をお話しいただき、さらにゲームをよくしていこうという意欲をもって年度を終えることができた。

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