鎌倉の世界遺産登録についての
鎌倉ユネスコ協会の考え方

理事長 丸山 泰世

 
 1992年日本国政府が世界遺産条約を批准し、 「文化遺産暫定一覧表」( 暫定リスト)を世界遺産委員会に提出し、「古都鎌倉の寺院・神社ほか」もそのリストに含まれていました。
 その後鎌倉は現在まで、国による世界遺産委員会への推薦の前提となる、関係自治体の準備の段階にあります。
その間、鎌倉では学術(発掘)調査の実施、県と市との共同の「古都鎌倉の世界遺産登録検討連絡会議」開催、学識者による歴史遺産検討委員会設置等の施策が行われ、昨2004年には「武家の古都・鎌倉」というコンセプトがまとめられました。
 世界遺産登録のためには、国レベルで遺産の保護・管理体制がしっかりと出来ていることは勿論必要ですが、遺産のある地域の住民が「世界的に顕著な普遍的価値」を有するものとして遺産を認識し、これを人類共通の遺産として未来に引き継ぎ保護・保全しようとする共通の意識が必要です。
 鎌倉ではこれまでのところ世界遺産登録に向けての地域住民としての市民の共通的な盛り上がりは必ずしもみられませんでした。
 そこで、市民の立場から鎌倉の世界遺産登録に関する議論を深める為の「鎌倉の世界遺産登録に関する市民の準備会」が市内各界有志の呼びかけで6月10日にもたれました。この準備会は鎌倉市が将来的に立ち上げようとしている市民組織について、各界各層から忌憚のない意見を出してもらうための会合ということになっています。 
  この準備会は7月に1回、後年内に1〜2回開催の予定です。
  鎌倉ユネスコ協会は、民間ユネスコ協会の立場をふまえ、理事会の審議を経て次のような考え方を表明して準備会に臨んでいます。

「ユネスコによる世界遺産の運動は、アスワンハイダムによってエジプト文明の貴重な神殿遺跡が水没することから、国際的な支援と援助を世界に呼びかけたことに始まる。
このように、戦争・災害・開発などから自然や文化財を守ることが第一の目的であり、国際協力を通じて世界の平和を願う心が育成されることが重要である。
従って世界遺産登録とは、対象物件の存在する地域の住民と国が、自らの責任において人類の遺産を保全し、後世に伝えていくことを世界に向かって宣言することに意義がある。
鎌倉ユネスコ協会は、国連の専門機関であるユネスコの活動を民間レベルで協力していく団体である。
鎌倉の文化財が世界遺産に登録されるか否かにかかわらず、地域の自然や文化を大切にし、守り伝えていく運動には積極的に参加するが、鎌倉を世界遺産登録するための、我が田に水を引くような誘致運動に加わることはない。
この準備会がどのような方向に進むかを見極めたうえで、鎌倉ユネスコ協会の最終的な対応を判断したいと考えているので推移を見守りたい」

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