工藤先生は鎌倉ユネスコのメンバーで、日ユの評議員である。世界遺産の調査や保全の支援に長年取り組む第一人者として知られる。1990年当時、日本は世界遺産条約の未批准国だったため、関係省庁に働きかけ、92年にようやく批准された。世界遺産という言葉は広まったが、何のための世界遺産登録なのか、よく理解されていないのが残念、と前置きを述べ各国の危機遺産の現状や国内の実例をスライドを使って話された。
オブス・ノール盆地(モンゴルとロシア)
アジアで唯一の2カ国の国境をまたぐ一つの世界自然遺産。モンゴル最大の塩湖がある一帯は、砂漠から氷河まで中央アジアの主要な生態系が凝集。冬はマイナス55度にもなり、数年前の大寒波では、牛の尾が凍って折れたという話にびっくり。この地の遊牧民の子供たちが寄宿する小学校で不足する暖房器具の購入費を鎌倉ユネスコが支援し大変喜ばれた。
ハンバーストーンとサンタ・ラウラ硝石工場群(チリ、危機遺産)
2005年世界遺産登録と同時に危機遺産となった。肥料や爆薬の原料の天然チリ硝石は20世紀前半まで世界中に輸出されていたが、その後、化学工業の発達で衰退。工場や労働者街などの建造物は崩壊しゴーストタウン化。この産業遺産を守り残し伝えようと設立された民間の博物館財団に、鎌倉ユネスコからの支援金も手渡され保全に役立つこととなった。
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