お伺いしたのは大寒の肌寒い午後でした。静寂な境内では梅やこぶしの蕾がほのかに色づいていました。東慶寺は1285年に北条時宗夫人・覚山尼が悪縁で苦しむ女性を救うために開創。尼寺として600年程の歴史があり、歴代の住職には名家出身の尼僧が多い。井上さんは明治36年男僧寺になってから6代目住職。今や著名な文化人たちが眠る寺、四季折々の花が美しい寺として有名である。
世界平和を願って
鎌倉ユネスコ協会の大切な行事
「平和の鐘を鳴らそう!」では絶大なるご協力をいただいている。
「禅寺では鳴らし物を大切にします。広域にいる人たちに音で伝達します。鳴らし物は拍子木、鐘、太鼓などありますが、それぞれに大切な意味があります。梵鐘は法要の時と除夜の鐘以外には撞きませんが、この行事で鐘の音が世界平和を喚起するために使われるなら大変意義深い事だと思います」と心強いお言葉をいただきました。「最近は結婚式もやっています。昔は縁切り、今は縁結び。国際結婚もあって世界平和に貢献しています」。ユーモアのある方です。 趣味は写真・登山そして・・・
山登りが好きで南アルプスに登ったことも。そして大自然を写真に撮り現像、焼付けもご自分でなさってきた。登山も写真も本格派。もう一つの趣味(?)は、「下山した後の温泉と地酒が楽しみなんですよ」と。飲むほどに楽しいお酒であろうと拝察しました。
写真には大変詳しく、暗室に籠っての徹夜の作業のことやデジカメのことなどお話は尽きないようでした。
仏様の教え
お話の中から二つ紹介します
@辛い事、いやな事に直面した時の心の持ち方について「人の縁には逆縁と順縁(自分にマイナス縁とプラスの縁)があります。順縁だけで生きてはいけません。苦境に陥った時(逆縁)これは仏様が与えて下さった試練である、仏様の思し召しであると受け止め、頑張って乗り越えた時、人は大きく強く成長する。そしてこの逆縁はありがたい縁だったのだと思えるようになる。仏様はどんな縁も大切にと教えておられます」。
A病老死への不安とどう向き合うか。「照顧脚下(ショウコキャッカ)という教えがあります。遠くばかり見ないで足元辺を良く見なさいということ。山登りでも、まず成すべきは一歩一歩前進すること。そうすればいずれ頂上に着きます。自分の脚下を照らしてよく見て生きることが大切です」。
重いテーマですが、ご尊父様のご苦労やご自分の跡取りとしての葛藤などの経験を交えて、また楽しいジョークを入れながらわかりやすく説いてくださったお姿に度量の広いお人柄を感じました。(文 関根・写真 森井) |