テーマ 世界文化遺産の考え方講師は東京大学教授、国際記念物遺跡会議(ICOMOS)の前副会長の西村幸夫先生。先生は9年間、約400件の文化遺産を見てこられた方で世界文化遺産の講師としては、わが国においては、もっともふさわしい人といえます。 世界遺産の登録プロセスまず、国が世界遺産条約の締結国になる。暫定リストを世界遺産委員会に提出。国が候補地を世界遺産委員会に推薦、候補地の評価調査(文化財はICOMOS、自然遺産はIUCN)が入る。その評価調査の結果を見て世界遺産委員会が決定する、と。ここで世界遺産委員会のメンバーは、ユネスコ加盟国の中から21カ国が選ばれて、今年は、6月にニュージランドで世界遺産委員会が開かれる予定とのこと。 世界遺産条約の特色ハーグ条約は戦争時のことを考えていましたが、「平時における初めての遺産保護」。条約にはインターナショナルという言葉が使われてきましたが「ワールド」という言葉が使われたこと。文化遺産と自然遺産と二つ一緒にした条約であること。その他「原爆ドーム」のような負の遺産、さらに「危機遺産」についても説明されました。 世界遺産の問題点問題点として「武力紛争時に無力なこと」戦争になるとリストを出して「破壊してくれるな」といっても遺産の中に隠れたりするので、やむをえないケースも出てきます。「文化遺産と自然遺産の数の不均衡」2006年には、830の世界遺産がありますが、文化遺産が644、自然遺産が162、約4対1の比率です。自然遺産は特に世界の中の比較です。知床の例を挙げると、流氷と海洋の生態系が評価されました。「地域的な不均衡」とは、この条約はヨーロッパの石の文化の発想が強い。日本が世界遺産として持ち込んで「木の文化は物質よりも技術の伝承で同じものを作ってきた」という考え方を説明し、木造建築の見方が変わったという話は印象深かった。 世界文化遺産の新傾向 「文化的景観」「産業遺産」「文化の道」「聖なる山」「20世紀建築」「生きた活動との関係」「バッファゾーンのあり方」「無形文化遺産条約との関係」など8つの項目を挙げられていましたが、事例として危機遺産に入っているフィリッピンのコルディリェーラ、ラサのポタラ宮歴史地区の背景の高層建築、チベットにおける中国文化の侵略、イギリス・ブレナヴォン産業用地などの閉山前に残すことを考えた例が話されました。 石見銀山、イコモスの評価 最近の世界遺産のニュースとして、「記載延長 (Deferral)」と言われた石見銀山は、6つの問題点をクリアし,再提出しなければなりません。「文物交流及び文明交流の物証」「伝統的技術による銀生産を証明する遺跡の発掘」「土地利用の総体を表す文化的景観」「資産構成の範囲」「比較研究」「その他の指摘:空家、電線類、開発ほか」。 |