『中国残留孤児』裁判
問題だらけの政治解決
菅原幸助著 平原社発行
著者・菅原さんが身元保証人になって日本帰国を果たした「中国残留孤児」は150人にのぼる。
2000年、著者が孤児たちの窮状を見兼ね、彼らとともに10万人の署名を集め国会請願を開始。続いて全国15地域に広がった裁判闘争に、著者は日本語を話せず電車賃も昼食代にもこと欠く孤児たち原告団の代表相談役として私財を投げ打って5年間にわたり先頭にたった。本書はその記録であると同時に、無念やるかたない怒りの告発書でもある。
2007年、衆参両院は全会一致で孤児支援法を可決した。裁判をとりさげ政治解決で落着したかに見えるこの結果は、「国家の謝罪と人間の尊厳」を求めて闘った著者には、ほど遠い決着であった。「いずれ態勢を整え挑戦を再開したい」と著者は語っている。
国策として送り込まれた満蒙開拓団8万人の子女たちが、なぜ餓死、凍死、自決などで曠野に命を絶たなければならなかったか。その影で戦後40年間、捨て置かれた3000人の孤児たち。本書は歴史認識のための必読書でもある。A5判、266ページ、1890円(尾花) |