「武家の古都・鎌倉」国際フォーラムが、文化庁、神奈川県、鎌倉市、逗子市の世界遺産登録推進委員会の共催で、2月1日(日)湘南国際村センター国際会議場で開催されました。このフォーラムに先立ち同会場で3日間に亘って、国内外の文化遺産専門家を招いての「武家の古都・鎌倉の顕著な普遍的価値に関する国際シンポジウム」が開催され、その成果をふまえて、シンポジウムの翌日一般市民のためのフォーラムが開催されたものです。フォーラムには、鎌倉ユネスコからも9名の会員・理事が参加しました。(丸山)
◆シンポジウムと
フォーラムの目的
現在「武家の古都・鎌倉」の世界遺産登録に向けての準備が進められています。この準備段階での検討では、鎌倉の「武家文化の成立と発展の地としての価値」を中心としたコンセプトに基づき「武家の古都・鎌倉」が、提示されています。このコンセプトが現在の世界遺産登録の基準や指針から見てどのように評価されるのかを見極めることが重要です。
そこでシンポジウムでは、鎌倉の「顕著な普遍的価値」・「登録基準の適合性」の証明など世界遺産登録に向けたポイントについて討議・検討されました。
この討議・検討をふまえてフォーラムではシンポジウムに参加した専門家により、世界遺産登録の最近の動向と、鎌倉の登録に向けての考え方を中心にパネルディスカッションが行なわれました。
◆専門家の現地視察
シンポジウム中では、参加した海外の専門家による候補資産の現地視察とそれに基づく意見交換会が行なわれました。参加者は、クリストファー・ヤング(イングリッシュ・ヘリテージ)、レイ・ボンディン(イコモス歴史都市委員会)ル・ズー(中国・精華大学、文化遺産保護専門)の3氏。視察したのは、鶴岡八幡宮、鎌倉大仏、建長寺、称名寺、朝夷奈切通、名越切通(まんだら堂やぐら群)など10箇所。視察の後、海外と日本側の専門家による意見交換会がもたれました。
◆フォーラムの内容
クリストファーヤング氏は基調講演で、世界遺産登録後の管理で問題が起きているケースが増えていて審査自体が厳しくなっている。普遍的価値の充分の説明が必要。なぜ他の遺産ではなくこの遺産なのか充分な比較研究が必要だと強調されました。
ル氏は武家の文化・価値は世界的に観れば個性的で独特なものであるのでこれをどのように外国の関係者に分かりやすく説明することがポイントと指摘されました。
また五味文彦放送大学教授は、鎌倉で築かれた武家政権と文化の普遍的価値を解説されました。
フォーラムのパネルディスカッションでは、東京大学大学院教授の西村幸夫氏の司会により上記3氏に筑波大学大学院教授の稲葉信子氏を加えた4氏による討議が行なわれました。
◆パネリストの意見
・武家のもとにある武士の説明の仕方を考える必要がある。武士・サムライには西欧では戦士のイメージになる。西欧中世の騎士道との比較も必要ではないか。
・武家文化の高い教養性と禅の思想の関係を分かりやすく説明すべきではないか。また、武家文化と礼儀作法や茶道等についても世界に如何に説明し伝えるかも大切。
・三方を山で囲まれた守りやすい地形と都市構造の跡が残っていることは強調できるのではないか。
・資産がよく保護されていることには非常に感銘を受けた。
・登録はゴールではなく保護のスタートであり、厳格な保護・管理計画が必要である。
◆今後の進め方
武家文化の成立と発展という価値をどのように捉え、分かりやすく説明するかが課題であろう。
今後まとめる推薦書原案の熟度を高めることで、確実な世界遺産登録を目指すことが望まれます。
◆鎌倉ユネスコとして
鎌倉に残された貴重な歴史的資産を後の世代に確実に継承していくことは市民の責務です。それには市民の歴史的資産に対する理解と保存管理のための明確な合意が必要です。鎌倉ユネスコは、この歴史的資産保護の原点を世界遺産登録推進活動に生かしていきたいと思います。 |