Spot light
地球温暖化と核兵器廃絶と原子力発電

三つの主題を並べた長い題名でごめんなさい。三題噺と思って、お読みください。
原子力発電(以下原発)はCO2を出さないという事で、地球温暖化防止の切札として脚光をあびている。

しかし現行の原発技術は核兵器技術の延長線上にあり、オバマ大統領が進める核兵器廃絶とは矛盾する。原発は核拡散の元凶であり、大統領が最も恐れる核テロに繋がる。莫大な処理費を要する核のゴミを排出し続け、地震による大事故の危険はたえず存在する。

三つの主題は一つにまとまらないと思っておりましたら、本年3月IT産業の雄、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が東芝と共同で次世代原発の開発に乗り出すという事を知った。私の直感では、ゲイツ氏が目指す原発は、現行の原発技術とは全く異なる物で地球温暖化防止にも貢献し、核兵器廃絶にも直結するものであろうと思います。ゲイツ氏は自らが設立したベンチャー企業「テラパワー」が開発中の「TWR」原発と東芝が実用化を推進中の「4S」原発を統合する技術を構築せんとしています。私の推測では「TWR」のTはTerra Power(地球の力)のTとThorium(トリウム)のTを意味し、地球内部のマグマと同じ性質を持つ溶融塩を使い、地球上に遍在するトリウムを核燃料の素に使う技術で、東芝「4S」が謳うSuper Safe,Small&Simpleと共通する設計思想を持っています。4Sは電力中央研究所との共同開発技術で、今秋米国当局の認証を得て、2014年には1号機がアラスカのガレナという町に設置されるだろうとの事。

太陽の寿命と共にある地球に住む人類は膨大なエネルギーを必要としつづける。化石燃料は今世紀には使い切り、いずれ太陽エネルギーに全面的に依存する時代になりますが、原発はその間の繋ぎ役をつとめる事になります。

この次世代原発は次のようなものであるべしと私は考えます。
(1)絶対に事故を起こさぬ固有の安全性を持つ(2)核兵器と同じ核燃料は使わない(3)プルトニウムを生み出さない(4)使用済み核燃料の再処理を必要としない(5)溜り続けているプルトニウムと使用済み核燃料を一緒に燃やして消滅させうる能力を持つ。

この夢のような原発は1960年代後半、米国に実験炉として存在し優れた運転実績を残しました。
核兵器と無縁であったため、冷戦下の米国は実証炉・実用炉の段階までは開発を進めませんでした。
今後、IT産業の技術は進展し、核兵器廃絶は確実に進みます。つまり、コンピューターネットワークを駆使した核兵器システムをいかに堅固に構築しても、それを無能力化する技術が必ず開発されるに違いないからです。グーグルをめぐる米中の攻防は、その前兆です。IT産業界のゲイツ氏が、オバマ大統領の時代に次世代原発事業に乗り出し、それに対して日本の技術が貢献する事になりそうだということの意義は大きい。
日本の原発産業は世界に先駆けて地球温暖化防止を謳うだけでなく核兵器廃絶に向けて大きく方向転換すべきではないでしょうか。
三つの主題が見事に結実する時代は、まだ遠い先ですが、必ず来ると信じております。 (渡部研自)

 
 

戻る