2011年5月31日。お昼過ぎのことです。
『虹??でてるよ!』
友人から携帯電話に1通のメールが届きました。台風2号が去った翌日の鎌倉の空。見上げると、太陽の周りに大きな虹の輪がかかっていました。まるで光に包まれているように心地よく、いつまでも見ていたくなる光景でした。
この太陽にかかる虹の輪は『日暈(ひがさ,にちうん)』と呼ばれ、太陽光が雲の中の氷の結晶に当たって屈折することで鮮やかな色彩を放つ現象だそうです。関東広域で観測されたとのことですので、ご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ところで、虹は何色でしょうか?
これまで私は「当然7色!」と思っていました。
でも実際に虹を見ていますと、色に境目はなく、美しいグラデーションの中に無数の色があるように思えたり、逆に、2〜3色しか認識できないときもあります。
調べてみたところ、虹の色数には、地域・民族の文化や時代によって、1色から無数の色までさまざまな捉え方があることがわかりました。
世界では、虹が7色というのは必ずしも一般的ではなく、アメリカでは6色(藍色を除く)、ドイツ語圏では5色(赤・黄・緑・青・紫)と答える方も多いと聞きます。
虹を7色としたのは万有引力の法則で有名なイギリスの科学者ニュートンであるといわれています。
ニュートンは、虹の基本色『赤・橙・黄・緑・青・藍・紫』の7色の波長が、『ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ』の7音階に対応しているとしました。当時のヨーロッパでは、音楽は大変権威ある学問で、音楽と自然現象を結び付けることは時代の風潮にも合っていたようです。
日本ではどうでしょうか。
虹が7色とされたのは、江戸時代末期に西洋科学を取り入れてからだと言われています。鎌倉時代の史書『吾妻鏡』には、「五色虹」として黄・赤・青・紅梅・赤の5色の記述があります。五色という考え方は、中国の五行思想の影響を受けているとの説もあります。
また沖縄地方では、虹は明(赤)と暗(青または黒)の2色と言われてきました。明・暗という色の区切りは、陰陽思想を彷彿とさせます。
光学的には、虹は赤から紫までの連続した色の波長ですので、色の数は無限に存在します。国によって全く異なる色の虹が出るわけではなく、人の目の色彩識別能力に大きな差があるわけでもありません。ニュートン自身も、虹の色は無限と知っていたそうです。
同じ虹を見て、その色をどう表現するか。色の表現の多様性は、言語とその背景にある地域・民族の文化,教育を反映しています。
自分が当たり前だと思っていた考え方や感じ方が、一つの見方に過ぎないことに気がつくと、そこから新しい世界が広がるかもしれません。(林真喜子)
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