大地震・原発事故・放射線の基礎知識とリスクマネジメント
7月16日(土)14:00から鎌倉・カトリック雪ノ下教会レベックホールにおいて表題のユネスコサロンが開かれた。講師の白木大五郎氏は、企業リスク研究所代表を務めるリスクマネジメントの専門家であり、鎌倉ユネスコ協会理事に就任された方である。出席者40名。
講演の内容は1)今回の大震災の状況と影響。2)核と放射線の基礎知識。3)原発事故に関する代表的質問・疑問。4)政府・東電の原発事故対応から見えた問題点。5)今回の大災害から何がわかったか?6)非常時における放射線防護心得。7)これからのエネルギー政策の在り方。の順番で進められた。
大震災を数字で見る
マグニチュード9.0、地殻変動は1.2m低下して、横に5m移動、この時のエネルギーは阪神大地震のときの178倍。海底の揺れが50mと言われている。死者・行方不明者の数が28,868名(7月16日現在)。漁船の9割の12,000艘が使えなくなり、津波による被害は山手線内の面積の7倍。地震発生後1ヶ月後、国際原子力機関(IAEA)の基準のレベル7が発表された。国民が心配したのは、1986年のチェルノブイリの事故を思い浮かべたから。
レベル7以上はないので、福島も同じレベルにはいっているが、放射能はチェルノブイリに比べて、福島は1/7といわれている。
放射線の基礎知識
ベクレル(Bq)とは放射能の強さを表す単位。1秒間に1個の核分裂が起きて放射線が出る量を1ベクレルという。シーベルト(Sv)は放射線により、体が受ける影響の大きさを表す単位。したがって同じ強さ(ベクレル)の放射能を持つ放射性質でも体から距離が離れていれば、体が受ける影響の大きさ(シーベルト)は減少する。放射線による内部被曝は放射線と年齢による差がある。大人と子供を比べると同じ放射線量を浴びても子供は5倍の影響がある。赤ン坊だと8倍になる。
放射能とは放射線を出す能力のこと。放射線を出す物質を放射性物質という。放射線には、「非電磁性放射線」(紫外線・赤外線・レーザー線等)と「電磁性放射線」(アルファ線・ベータ線・ガンマ線・えっくkす線・中性子線等)の二種類がある。原発から出る放射線は、「電磁性放射線」で被曝すると細胞にダメージを与え、大量だとガンになりやすくなる。
原子力の技術は残念ながら未完成の技術。世界的にも核廃棄物の処理技術はまだ確立してはいない。地中ふかく土に埋めるしか方法がない。IAEAは、100mシーベルト(Sv)/年を緊急時被曝量の基準としているが、低線量の放射線(30mSv、50mSvなど)を長期間被曝が人体に与える影響はまだ医学的には正確には解明されていない。
これからの問題点
@エネルギー政策の見直し、A農水産物への影響、B被災地復興のための26兆円と言われる資金調達、C10年以上と言われる原発廃炉へのシナリオである。
特に印象に残った話
危機管理体制のフランスの事例:「事故後指揮委員会」を設置、すべての権限を握り、原子力事故の場合は、15キロ圏内の住民に対しては安定ヨウ素剤と小冊子を配布、「被曝医療専門チーム」を配置、放射能廃棄物の処理まで一元的におこなうことになっている。
国内の素早く行動した例として、関東大震災のときの日本政府の対応が説明された。内務大臣後藤新平が中心になって、四つの方針を発表 @遷都はしない A新都建設 B復興費30億円 C地主の権利制限。注目するのは復興費30億円、今の貨幣価値では120兆円相当という大きな決断だった。
もたつく政府の動きに対して民間の企業の動きは鮮やかであった。上からの指令ではなく現場の指導者の判断で行動している。また、世界各地からの「日本人の行動に称賛と激励の言葉」が寄せられている紹介があり、「非常時における放射線防護心得」を細かく述べられた。最後は講師の自慢の川柳が披露され会場を沸かした。 (鴇澤)
(川柳3句)
被災地に 爽やか笑顔のボランティア
危機対応 後手後手後手の 情けなさ
忘れまい 自然の力の 恐ろしさ
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