今年の8月から、鎌倉・二階堂でカフェを始めました。よく「以前もどこかでカフェを?」と訊かれますが、それまでの私は、損害保険の会社で8年間、営業の仕事をしていました。主な仕事は、大企業向けの保険提案や、保険を販売する代理店さんのサポートでした。東京で4年、大阪で4年、社内外でさまざまな出会いに恵まれました。
入社当時、同期100名中、女性は3名。社内では、「損保の営業は女性には難しい」というのが専らの風潮でした。それなのに、同期の中でも引っ込み思案なタイプの私が営業部署に配属されるとは・・・。
取引先の方も、女性の営業担当者を見るのは初めて。明らかに戸惑われているお顔を拝見し、こちらが申し訳ないような気持になったことも一度や二度ではありませんでした。
そんなわけで、入社後しばらくは、妙なプレッシャーの中、半ば怯えながら仕事をしていました。訪問した取引先の受付で、緊張のあまり自分の名前さえ何度も言い直さなければならないほどでした。
それでも、少しでも役に立ちたいと必死で働くうちに、次第に仕事が楽しくスムーズに進むようになっていきました。少しずつ分かってきたのは、自分の怯えは、単なる自分の思い込みだったということ。
今思えば、形になった仕事は全て、周囲の協力や後押しがあっての結果でした。私が周りの方の温かい気持ちに気がつき始めて、本当は、怯えるものなど、どこにも無かったのだと気がつきました。
自分の見方が変わると、自分を取り巻く環境が変わる― それは、周囲が変化したのではなく、自分が見えていなかったものに気がつくからだと思います。
同じ相手でも、今日のその人と、今日の自分との出会いはこの一瞬だけ。昨年、鎌倉へ住まいを移してからも、ユネスコの皆様をはじめとする数々のご縁を戴きました。その出会いに感謝するとともに、これからのカフェでの一期一会を楽しみにしています。
(林真喜子) |