NO.172   日本のユネスコ加盟50周年・21世紀の課題 

       加 藤 玲 子
 21世紀の扉が開かれたと同時に「平和の文化国際年」は, 「世界の子どもたちのための平和と非暴力の国際10年」にひきつがれた。
 唐突だが,PTA発祥の糸口は,1895年, アメリカ人,アリス・バーニー夫人がわが幼な児の安らかな寝顔に見入っている時に閃いたという。彼女は,悪と矛盾に満ちた社会から沢山の尊い命を健やかに育むために, 先ず母親が楯となろうと立ち上がった。2年後,それは「全米国母の会」として見事に実現された。しかし,アリス夫人は,子どもの全人格の確立のためには,母親の手にも限界があることを悟った。彼女は,深い洞察力,謙虚な実行力をもって臨み,後に父,先生ともに良い父母,良い教師となるためにとPTAが組織されるにいたったとのことだ。

  そのPTA連合会や目黒区・教育委員会等の協力により,今年も「ユネスコ・世界寺子屋運動」のための「書きそんじハガキ回収キャンペーン」を開始した。呼び掛けの「ちらし」は,区内全児童・生徒に配付された。今回は,その片面に「平和づくりのためのユネスコ運動200と題したカレンダーを刷りこんだ。可愛い絵は自然環境保存をテーマとする画家の勝山千帆さその絵を中央に「私の平和宣言」を巧みにとり込んで創りあげてくださったのは,グラフィックデザイナーの勝岡重夫さん。お二人とも当協会の会員だ。12ヵ月間このカレンダーが各家庭にピンナップされることを願う。学校の教育も大切だが, 子どもには家庭教育がもっとも基本となる。
家庭のもつ暖かさや親の人生への姿勢,哲学,倫理教育は,彼らの行く末に大きな影響を及ぼす。

 ひとりの子どもにとって,家庭教育が基本であるように,世界の平和づくりの基礎は,「ユネスコが語る精神」に尽きる。国連の下部組織としてのユニセフや地域の国際交流協会や民間の大小の国際関係団体等の活動目的も,つき詰めれば, その大方は国連の専門機関としての「ユネスコが語るもの」に行き着くのだ。
 ユネスコの心は,憲章が示すように,すべての人々のものである。ただ,それの認識と正確な理解が, 日本の加盟50年を経た今日も未だ世にいきわたっていない。

 「世界の子どもたち・・」の10年が始まった。その子どもたちこそが,21 世紀の宝だ。今の大人社会は,彼らが,幸せに,輝いて生きるために, 努力を惜しんではならない。その方策の一つとして, ユネスコ精神のさらなる普及運動は21世紀の課題の一つと考える。
 20世紀のあやまちを糧として, 新たな心意気で共にとりくみたい。
                                                 目黒ユネスコ協会会長
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