ヴェトナムの寺子屋建設を現地に見て
                             田島 重雄(目黒ユネスコ協会顧問)
 
 日時と目的:去る39日から24日までの2週間、日本ユネスコ協会連盟の依頼のもと、ヴェトナム寺子屋建設状況を視察すると共に、この夏から開始される寺子屋教育を担当する教員養成講座に、識字教育と併行して、教えることになる農業の内容について、どんなものが果たして適当か、またどうゆう風に教えたら良いかなどについて調査をいたしました。そして夫々の現場で、責任者の奥川所長を中心とし、日本からの我々二人の専門家(農業、養蜂)、現地の行政責任者、農業指導機関の代表・専門家など十数人で検討会を持ち、意見の交換の末、一応の結論を出し帰国しました。
 
 寺子屋の位置:現在ユネスコが建設中の40の寺子屋はどんなところにあるかというと、ヴェトナムの最北・最西の、ラオスや中国との国境に接するライ・チャウ省、その中のトア・チュア郡と更に北のホントー郡の村々にありました。具体的にいうと、ヴェトナムの首府ハノイからプロペラ飛行機で一時間飛ぶとライ・チャウ省の省都、デイエン・ビエン・フウという名の町に着きます。そこから、自動車で走ること約6時間のところにトア・チュア郡があります(この郡内の各村に1学校ずつ、合計11の寺子屋建設を予定)。そして、またデイエン・ベン・フウから別の道をとり、約8時間の所にホントー郡があります(この郡の各村にも一校ずつ、合計29の寺子屋建設を予定)。
一口に、車で何時間といっても、我々のよく知る日本の高速道路とは違います。まず、川沿いの山道を右に左に急カーブを切りつつ登ります。また登ったかと思うと下り、下ったかと思うとまた登るといった調子でした。いったい幾つの峠を越すのかと数え始め、7つ位まで数えたことを覚えていますが、途中で数え切れなくなり止めてしまったくらいです。 つまり、そういう交通不便なところであるから、今まで教育も受けられず、不便な非識字状態にあったと言えましょう。
 寺子屋の建設状況:今回の視察中合計して、10個所ほどの寺子屋を訪ねましたが、建設開始が殆ど同じ時期らしく、校舎建築の進捗状況は大同小異でした。何れも、敷地面積は大きくなく20-30人収容の教室3つずつが予定されていました。 最も頼もしく感ぜられたのは、既にしっかりとした地盤や土台が完成していたこと、そして、がっちりした煉瓦建ての建物が出来つつあり、何処でも、数人の職人達が、せっせと横壁の煉瓦積みから、棟上げに入っているといったところでした。もちろん、本屋の外側にトイレや水飲み場所などが既に作られ、4月一杯には完成といったところでした。
 教育内容や教材:一般の識字教育の内容や必要なテキストなどの教材は、殆どヴェトナム政府によって準備されていましたし、成人教育の専門家も、すでに奥川さんの事務所のスタッフとして働いていますから、8-9割が準備完了というところでした。しかし教育内容のうちの60%を占める農業関係については、殆ど手がつけられていない状態でした。ただ救いは、現地の農業普及所が、ドイツNGO団体派遣のオランダ専門家と協力し、既に色々の作物を試験的に導入し、また一般農民の中にもそれを採用し始めていることでした。もちろん、その中にも、直ぐに幾つかの問題が見つかり、改善の必要がありましたが、農業改善や発展の基本が、指導者側にも、農民側にも分かっている様子なので、案外早く成果が上がるのではないかという明るい予想が立てられました。
 どんな作物や畜産が有望で有利かということについて、茶、バナナ、シイタケ、養蜂など色々の提案が出ました。現地の実際を見た後に慎重に審議し、最も確実に成果のあがるのは、養蜂であろうということに意見の一致を見、それを寺子屋農業授業の第一の中心に置くことにいたしました。
 
 最後に一言:最後にどうしても触れなければと思うのは、現地事務所長の奥川さんのことです。奥川さんはユネスコ代表として、日夜活躍されていますが、31歳という若さで、国際機関一流の専門家と同じ様に、ベトナム政府の各レベルの指導者と堂々と交渉していますし、現地の指導者にも、HiroshiHiroshi!と親しまれていました。また、現地事務所のスタッフからも、深い尊敬を受けていました。私は、海外に働く多くの日本青年の活躍を見てきておりますが、日本人で、奥川さん並のリーダーシッ
プを持つ人は、未だに見かけませんでした。
 
 青年達に: ユネスコの青年、特に目黒ユネスコの青年達は、奥川さんを目標に、奥川さんから実地に学び、奥川さんを通じて、開発協力とは何か? ユネスコ精神の実地展開とは何か?を学ぶことが良いのではないかと思っています。(429日)
 目黒ユ協は、日ユ協連がJICAと合同して行っている上記
 ライ・チャウ省寺子屋普及活動とズアン・タン・コミュニケー ション青年組合に2000年度に合計60万円の支援をを行い ました。
        (2000年度収支報告書より)

次ページへ