NO.182
2001.11.14

いま、平和を考える
奥澤行雄
 「いま、平和を考える。」この「いま」は、「21世紀の初頭」としての今ではない。「日本がユネスコに加盟して50周年」の今でもない。9月11日を境にして、なんとこの言葉が大きな意味を持ってしまったことか。

 目黒ユネスコ協会は9月17日の理事会で、このことをテーマに「ユネスコ講座」を12月に開催することを決めた。12月になれば一応の見通しも立つと、その時点では思った。しかし「事件」は世界中を巻き込んで、ますます迷路に入ってしまい、人々の心を暗くしている。「いま、平和を考える。」ことのなんと難しいことか。

 タリバーンがバーミアンの巨大な石仏を爆破したのは3月であった。世界中の中止の願いもむなしくあっけなく石仏は崩れ去った。そのとき私たちは美しい仏像の喪失をどんなに悲しんだことか。そして非難もした。しかしそのとき、その陰に数百万の人々の「飢え」の深刻さがあることを少しも知らなかったと言えるのだろうか。そのときイスラムの人々のみならず「第三世界の人びと」の嘆きや訴えに気がつくべきではなかったのか、と今、思う。

 事件の背景が次第に明らかになりつつある。数世紀にわたって築かれてきた「不平等」「不公平」が根底にあるという。人間を奴隷・「商品」として扱った歴史にはじまり、一つの体制(文明・宗教・国家・政治...)が他の体制を征服し破壊して当然と考える習慣、この罪の深さに気づこうとしない業の深さ、いや気づいてもなお、解決への手がかりが見つけられない愚かさに気づいて愕然とする。

 今回の「ユネスコ講座」* の実施に際し、目黒ユネスコ協会の理事会はその企画の大半を青年の手に委ねた。青年達がいち早くこの事件に反応し、真剣に取り組み、必要な学習を始め、自分たちに何が出来るかを問い始めたからである。「真の解決」のために青年達が真摯に取り組んでいることを高く評価したい。解決には長い時間と忍耐が必要であろう。12月1日の「ユネスコ講座」に多くの会員が参加し、自分に出来る平和への取り組みの糸口が、どんなに小さいものであっても、見いだすことを期待する。
                                       目黒ユネスコ協会 副会長
*参照p3&p2@d : (12月1日(土)14:00-16:00 ユネスコ講座 「いま、平和を考える」中目黒スクエァー内青少年プラザ)

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