NO.184
2002.2.13

アフガニスタン復興支援会議に思う
目黒ユネスコ協会顧問 田 島 重 雄

 アフガニスタン復興支援会議が1月21日、22日の両日、アフガニスタンを加えた61ケ国とEU、21国際機関によって、そして世界の59のNGO代表によるNGO会議がそれに先だって東京で開催された。これらの会議は特色が多く、その意味もなかなか深い。

 第一の特色は、昨年9月11日に米国に起った同時多発テロ事件の発生以来、世界が固唾を飲んで見守るうちに、テロ実行者及びテロ支援勢力と見なされたタリバンへの軍事制裁活動が一応の成果を収め、事件処理の第2段階としてのアフガニスタン復興が論じられるようになったことに関連する。こうした成果がきわめて急速に得られた背景には、今回のようなテロを、世界に蔓延させないという各国首脳の意見一致が、米英NATOを中心とする軍事制裁を容認し、国際機関をはじめ各国の協力支援となったこと、またアフガニスタン内部にタリバン制圧に協力するいくつかの軍事勢力が存在したこと、圧倒的な軍事力の格差とともに、アフガニスタンの国民感情などを配慮し、地上部隊の派遣を少数に止めたことなどがプラスに働いたと考えられる。たしかに、国際的な軍事制裁活動が、これほどまで早く展開され一応の成果と共にその復興支援に転じられたことは、例が少なく、また、何かと利害が反しがちな国際社会が、これほど一致協力したこともきわめて珍しいことである。

 第二の特色は、日本の迅速な対応があったことで、実際的協力活動や周到な復興会議に対する準備が素早く行なわれたことである。具体的行動の第一は、自衛隊を海外に派遣することであった。日本国内には、憲法上、自衛隊を海外に派遣することについては、たとえ、その任務が補給業務に限られるとしても、戦闘に巻き込まれる恐れがあるという理由で反対もあったが、今回は政府に、湾岸戦争の二の舞を踏むまいという固い決意と、目に見える貢献をするということで、素早く自衛隊のインド洋派遣が実行された。また復興支援会議についても、かねてから、戦闘は米軍その他が行なうが、復興支援は日本が責任を担うべきであるという政府の決意が早くから表明され、国内世論もこれを支持していたので、素早い準備が可能であった。更に良かったことは緒方貞子という、アフリカ内戦やユーゴスラビア・コソボ内戦その他において、国連難民高等弁務官として、その手腕が既に国際社会で評判の高いベテランを、日本代表、また米国国務長官と並ぶ議長の一人として送り込めたことであった。日本としては、好運に恵まれたと言ってよいであろう。

 第三の特色は、復興支援会議の成果が、会議2日目に、各国の具体的な拠出金額として発表されたことであった。従来、この種の会議では、総論は賛成となるが、各論の各国の貢献案となると、とかく不鮮明なことが多くなり、また時間もかかったが、今回の復興支援会議では、主要国をはじめ、一部途上国さえも積極的にその拠出金額を会議期間中に発表した。その結果、今年度内に18億ドル、5年間に45億ドルに達する各国の拠出金が明らかにされた。この中で、特に目立つのは途上国のイランの5億ドル、インド1億ドル、パキスタン1億ドルなどで途上国としていまだ前例のない高額な貢献である。しかし他方、関心が深いことは好ましいが、それぞれの国が、アフガニスタンに影響力を残そうとする野心も含まれている恐れもあるとして、警戒を要するといわれている。

 第四の特色は、われわれの全国組織「日本ユネスコ協会連盟」の対応の速さと対応の内容である。タリバンによるバーミヤン仏像の爆破という悲しい思い出があったためもあろうが、今回のテロ事件に対する声明をいち早く行い、その態度を明らかにし、さらに復興支援会議と関連しては、年末に急遽募金活動を行い、理事長ほか二人をパキスタンに派遣し、かねてから現地に活躍する日本のNGO「ペシャワール会」の医療活動に200万円を提供するとともに、難民の教育事情を素早く視察し、現地教育関係者と協力の上、5教室の寺子屋設立準備をもそつなく行って帰国している。

 こうした国および日ユ協会連盟の動きに対し、われわれの目黒ユネスコ協会は如何に考え、対応すべきであろうか? 第一に、アフガニスタンやイスラム教理解の促進が考えられる。青年の一部は既に始めているが、目黒ユ協としても正規に学習事業を進めるべきではなかろうか。第二は、アフガニスタン難民に対する募金活動である。書き損じハガキの収集の強化と共に、新たな募金も考えるべきであろう。第三は、「目に見える貢献」として難民キャンプの寺子屋活動への協力がある。現地状況や日ユ協会連盟の準備にもよるが、この夏にもボランティアの派遣募集が考えられる。今からその派遣を考え、出来れば参加者に対する経費的支援なども考えておく必要もあろう。ともあれ、目黒ユネスコ協会に必要なことは、アフガニスタン問題の「より深い理解」と復興支援に対する「行動」ではなかろうか。

 写真提供日ユ協会連盟:日本ユネスコ協会連盟がイスラマバードの難民キャンプ・マスキナバード(貧乏な町の意)で開始した寺子屋で。
キャンプには10万人の難民が居住、うち6万人が子ども。2ヶ所5教室の寺子屋で200人が学び始めた。大海の一滴ではあるが偉大な第一歩と考えたい。                              


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