NO. 200-4

 
リトリートの講義は青年たちの要望によりグローバリゼーションと決まり、平田副会長から下記の通り非常に充実したレクチャーがあった。以下はその講義のレジメである。


 

グローバリゼーション
 


 
1 グローバリゼーションとはなにか
経済、政治、文化など人間社会のあらゆる側面において進行しつつある、地球規模での「均質化」へむけての過程(プロセス)をいう。プロセスとしてのグローバリゼーションは不可逆的な現象である。
2 グローバリゼーションに対する賛否
肯定論:市場経済化の推進
否定論:国家の枠組みと伝統をおびやかす(極右派、左派)
    反市場主義の立場から全面的に否定(旧左翼、伝    統的保守主義者)
中間派:市場経済化の点で歓迎、文化の面で批判的(新保    守主義)
    経済の面では是々非々、政治、文化、環境、技    術などでは積極的に支持(欧州中間左派政権)
3 グローバリゼーションの発展過程                 写真:右端:平田副会長
アメリカの経済の繁栄の根拠(金融政策と情報技術革新)
インターネットの普及で情報は国境を越え、瞬時に往来。本来文化は多様であるが、ITによりアメリカ文化が世界的に広がった。この流れは双方的ではなく、一方通行。このため、政治、経済、文化面でアメリカナイゼーションがとめどなく進行。つまりグローバリゼーションとはアメリカナイゼーションのことだった。
4 東アジアの工業化とグローバリゼーション
東アジアの発展途上国 1980年台の工業化(資本、労働、技術)
 人口が多い、識字率が高い、優れた勤労倫理の労働力(台湾、韓国等)
 地球規模での市場経済化という点でグローバリゼーションの推進役を担い、恩恵を受けた。
経済発展の特徴:欧米の資本主義を丸ごと受け入れるのではなく、構成する部分を選択的に取り入れ組み立てる。(日本、シンガポール、台湾、韓国、香港、マレーシア)
5 市場主義者の主張
市場を万能視。効率性を至上の価値とする。平等は「市場の錆」で優勝劣敗がダイナミズムの源泉(論証抜き)
6 グローバル資本主義の危機と対応
オーバー・キャパシティ(工業製品の供給能力が需要を上回り過剰になる)
発展途上国への資金援助 ODAの効力(多様な文化との調整)
発展途上国の所得分配 不平等の現実(民主主義の生育)
7 地球環境問題
地球環境の汚染と破壊がローカルからグローバルな問題となってきた
酸性雨、海洋汚染、森林破壊、地球温暖化への対応→グローバル化
市場経済の問題点→外部不経済を内部化できるか
グローバルな市場経済化→地球規模の汚染、破壊を防除する力学を内臓していない。
大量生産、大量消費、大量廃棄という産業文明の見直し
市場主義者の論では自然の自己修復機能に頼るか、内部化を拒否することになる
もう一つの考え方:環境保全は経済成長を抑制するどころか、新しい経済成長の源泉とすらなりうる。(ドイ         ツ社会民主党の路線転換)
市場経済の機能:資源の「効率的な配分」をかなえる半面所得格差の是正、環境の保全、「排除」としての不         平等を無くす機能を持ち合わせていない。
         市場の補完をするのが政府の役割。では国際的な補完は誰がするのか。
8 文化とグローバリゼーション
市場主義と文化・市場主義は文化の画一性を求める。反文化相対主義、文化侵略主義となる。
9 整理(グローバル資本主義の矛盾点)
国家間の不平等を拡大する。
短期資本の動きは発展途上国の通貨危機を頻発させかねない。生産能力の過剰はグローバルなデフレの長期化をもたらす。均質化を目指し、異なる「型」の資本主義相互の摩擦がさけがたくなる。
地球環境の汚染・防御を防除する力学を内蔵していない。特別な対策が求められる。
 (グローバルな市場経済のガバナンスを行なう国際機関が必要となる。)
10 体験的視点から
開発途上国への経済援助の意義と問題点・教育面での画一化の傾向と問題点・軍事的支配と民主主義
国際機関の重要性(新たな組織の構築の模索)と地域民主主義の役割
ネパールから世界を見る・(IT化の推進状況、教育、文化の変容、農業、政治・経済と指導者)
WTOなど最近の事例(農産物の輸入の自由化と制限)         
 
レクチャーをまとめるに際し平田副会長は 『ユネスコ憲章前文にある「相互の風習と生活を知らないことは、人類の歴史を通じて世界の諸人民の間に疑惑と不信をおこした共通の原因であり、この疑惑と不信のために、諸人民の不一致があまりにもしばしば戦争となった。」との言葉こそ、グローバリゼーションを考えるに当たって、私たちの忘れてはならない原点であり出発点であると思う。』としめくくられた。

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