No.205-3

おひなさまをつくろう

「あかりをつけましょ ぼんぼりに〜お花をあげましょ 桃の花」♪
 子どもが幼い頃よく口ずさんでうたっていました。私も知らず知らずにこのメロディーをうたってしまいます。
 春のような暖かい日差しが教室の中までさしていました。15名の母と娘たちが三月三日の桃の節句を迎える為におひなさまのちぎり絵を楽しく作りました。作りながら和紙の美しい色彩、手触りの繊細さにふれられました。慌ただしい日々を送っている私にとって日本の伝統行事にふれることができて、とても心が満たされました。そして、どれもみんな個性あふれるすてきな作品ができあがりました。
 この会を準備してくださったユネスコのメンバーの方々に感謝します。又、今後も日本の文化にふれるような機会をつくってくださればうれしく思います。
              林 玲(台湾 日本語Sクラス在籍 原文通り)

※その後は、折紙で三方を折り、雛あられを入れ小さなひな祭になりました。みんな楽しそうでこの会を企画した交流活動委員たちもほっといたしました。
2月28日五本木小学校ランチルームで
写真:良くできた作品に皆さんにこにこ。 下:筆者 林(リン)さん

第4回世界社会フォーラム参加報告

中野佳裕     目黒ユネスコ協会青年会員・英国サセックス大学・開発学博士課程

1月中旬(1月16日?21日)にインドのムンバイで開催された世界社会フォーラムに参加してきました。今回、同フォーラムは様々な変動の中で運営されました。

 第一に、開催地の変化。昨年まではブラジルのポルトアレグレで行われていた同フォーラムは、今回、心機一転しアジアの大都市に拠点を移しました。開催地の移動の理由の1つには、会場へのアクセスの地理的条件を公平にする配慮がありました。地球規模での民衆参加型フォーラムといえども、例年ではラテンアメリカからの参加者が中心となり、アジア、アフリカからの声が会場に直接反映されることが困難でした。ムンバイに会場を移動することで、今年はアジアからの参加者が圧倒的に増加しました。ダリット(インドにおける不可触民)、フェミニスト団体、共産党系団体、社会主義系団体、児童労働問題に取り組む団体、チベット独立運動団体、労働者団体など。また、日本からも約500人が参加しました。伝統的な団体としては、原水協、反差別国際運動(IMADR)、部落解放研究所、レイバーネット、JR労働組合、Peace Boat。新しい団体としては、ATTAC Japan(グローバル資本取り引きに課税をかけ、社会正義を追求する団体。フランスが本部)、World Peace Now!(対イラク戦争を期に組織された平和運動NGO)などがありました。
 第二に、目的の自立。従来までは、世界経済フォーラムと同日に開催され、市場経済主義のグローバル化に反対する戦略的な意味合いが強かった世界社会フォーラム。ところが今年は、経済フォーラムより一週間早く開催され、独立したフォーラムという含意が出てきました。開催者側も同フォーラムを「世界中の人々が「もう一つの世界」について共に考えるための「出会いの場所(a meeting place)」だ」と再定義し、より多くの人々が参加しやすい空間となってきました。
 第三に、声の更なる多様化と新たな地平の創出。創設以来、同フォーラムは、市場経済主義の拡大によって引き起こされている様々な問題を吸収する間口の広いものでした。失業、国際債務、人権、文化の自立、ジェンダー、教育などが毎年議題となっていました。ところが昨年2003年は、英米政府(日本を含む)の対イラク戦争が大きな影響を与え、反戦運動がフォーラムの中心的な議題となりました。今年は、戦争が既に起こってしまったという事実を受け止めて、もう一度世界中の様々な問題を見直そうという方向転換が見られました。戦争問題も、イラク問題に対する英米の責任を単に追及するのではなく、核兵器問題、基地問題、植民地問題、人種差別、階級差別など、過去の人類史の中で起こった様々な暴力を見直していく流れの一要素として位置づけられる方向性が見られました。これは、前述したアジア地域からの参加者の声が、、植民地主義、帝国主義、各社会で歴史的に再生産されている暴力など、最近10年に始まった市場経済化や昨年の戦争には還元されない長期的な歴史的背景を帯びていたからだといえます。
 今回最も嬉しかったことは、日本から多くの参加者が得られたことです。フォーラムに参加した世界中の人々が、日本の政治や社会状況について知りたがっています。日本については、経済面や文化芸術面の情報が主に海外に流れて、日本国内の平和問題、社会問題、市民運動などについてはなかなか知られていません。しかし、世界の人々はそのような「日本の現実味のある問題」こそ知りたいのだということがよくわかりました。
 同フォーラムの反戦集会は、3月20日を世界規模での反戦マーチの日と設定しました。英国でも学生をはじめ多くの団体がこの日に向けて活動をしています。また、今年の秋にはヨーロッパ社会フォーラムがロンドンで開催されます。英国の同僚達と一緒に、今回はホストとして何かイベントを行う予定です。

  中野佳裕君は「リトリート」に参加し触発された青年の一人で「第三回世界社会フォーラム参加報告」はショートニュース195号に掲載されています。

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