震災(Disaster)・復興(Reconstruction)・減災(Reduction)・レジリエンス(Resilience)の担い手となるためのDR3グループによる研究活動

神戸大学附属中等教育学校

活動の参加した児童生徒数/高校1~2年35人
活動に携わった教員数/5人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/6人

実践期間2018年7月10日~2019年3月22日

活動のねらい

被災地訪問や学校交流、Zoom会議による交流、防災学習プログラムへの参加や発表を通して、大規模震災に対するリスクマネジメントについて多角的な視点から学ぶ。
具体的には、
①身近な地域に起こった、あるいは今後起こるかもしれない自然災害と被災者の思いについて学ぶ
②震災の記憶や教訓をどのように後世に伝えていくかを考える
③人文科学・自然科学の両面から震災を捉え、理解する
④校内の防災学習や避難訓練を生徒が企画し、主体的に進行することで防災・減災の担い手となる意欲や知識、経験を身につける
⑤学校周辺地域の災害発生時の課題を調査し、学校と地域の連携方法を考える
⑥上記の活動を通して、他を思いやり、地域と共生することのできる生徒を共に目指す 

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
①毎月第2・4木曜日昼休み DR3ミーティングとグループ別研究
テーマA 地域コミュニティの実態調査と地域連携の課題
   B 災害ボランティア
   C 校内防災学習プログラムの企画と進行
   D 31年度居住地域別防災プログラムの計画
   E Zoom会議システムを活用した防災交流の拡大
②毎月第2金曜日放課後 多賀城高等学校とのZoom会議による定期交流
・宮城教育大学とNECネッツエスアイが共同開発しているテレビ会議システム“Zoom”の実践研究に協力
・第4回(12月)より北海道浦河高等学校が参加
③10月31日-11月1日 『世界津波サミット』参加
・大阪北部地震時の避難・連絡状況の分析・課題を発表
④12月26日 多賀城高等学校来校・交流プログラム(本校)
⑤1月25日 ローカルラジオ番組出演の中で全国被災地の高校生と交流(多賀城高校、高槻高校、本校
⑥1月31日 校内防災学習の計画と進行
・中学1年 学校周辺地域のハザードマップづくり
・中学2・3年、高校1・2年 「クロスロード(神戸編)」
⑦2月14-16日 宮城研修プログラム
・多賀城高等学校と気仙沼市立階上中学校との交流
・各地域の震災遺構フィールドワーク
⑧3月16日 滋賀県立守山高等学校が来校し、避難訓練について協議  写真2 多賀高交流 独自教材の開発
⑨3月22日 DR3研究活動の成果を全校集会で発表

2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
  昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
 担当教員は阪神淡路大震災で被災した経験から、教訓や感じたことを伝えていく責務があると痛感している。毎年1月17日には震災講話を在校生に向けて実施しているが、生徒がどのように受けとめ、どれだけ防災意識が高まったか不明で、これまでは手応えを感じたことがなかった。9月研修会では神戸には無くなってしまった被災の現実を感じたことだった。言葉でどれだけ伝えても被災地で感じた現実を超えることは絶対にない。一人でも多くの生徒に被災地を感じる機会、被災地と直に交流する機会を提供することが大切であると感じた。
 昨年度までは複数回宮城県を訪ねて、震災遺構を見学し、科学的なアプローチから東北大学を訪問するプログラムを実施していたが、本年度は共に研修を受けた学校・教員とのつながりから生徒交流の場を設けることが可能となった。助成金を活用して9名の生徒と宮城県を訪問し、研修時のルート・プログラムを参考に体験・交流を進められた。また世界津波サミットに3名の生徒を派遣して世界各国の高校生と防災という視点から交流することができた。

3)実践の成果
減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
校内では年2回(6月と1月)防災学習を実施しているが、いずれも危機管理の担当教員が計画し、学級担任が指導する形で実施されてきた。今年度1月と次年度6月は、DR3の2つの研究グループが防災学習プログラムを計画し、DR3メンバー全員が手分けして各クラスの進行役となってプログラムを進めることとした。また計画段階のプログラムは、テレビ会議Zoomや訪問時のワークショップを通して、交流校の生徒から助言を受けて改善を図った。

生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
現在および将来における防災・減災の担い手を育成することを目標としているため、DR3活動では定例会議の議事決定から進行、交流校とのテレビ会議の進行、校内防災学習の計画・進行など全てを生徒に委ねることとした。その結果、主体性が高まっただけでなく、交流校から提供される被災地域が抱える課題に共感できたり、一般生徒に防災学習の目的意識を高める工夫について何度も見直しを図ったりと防災に取り組む当事者意識が大きく高まった。

教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
今年度初めて地域の防災福祉コミュニティ定例会に代表生徒が出席した。95%の生徒が地域外から通学しているため、学校と地域が災害時の連携体制が希薄であった。DR3研究グループの調査とコミュニティ定例会での意見交換から、高齢化が進んでいる地域ならではの災害発生時の課題が明確となった。現在は課題への学校・生徒レベルでの対応方法について研究グループで検討を進めている。
 年1回の宮城県への生徒訪問機会を補うために月1回のテレビ会議Zoomを開催している。昨年度までは互いの訪問時に初めて顔合わせをして短時間で交流・意見交換を進めていたが、今年度は互いの研究課題に対する意見交換や調査依頼がZoomで可能となったため研究活動を効率よく推進できるようになった。また津波サミットを通じて北海道浦河高等学校との交流が追加されている。

4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望   本年度は度重なる自然災害に見舞われ、多くの生徒が被災当事者となった。物理的な被害にあった生徒はいなかったが、災害と関連して発生した交通や通信の障害により生徒の家庭・学校生活に大きな影響があった。DR3で取り組んでいる4つのテーマの研究活動では都市部で発生する様々な災害をカバーすることができない。そのために全校生徒を巻き込んだ取り組みとすることや、3年サイクルで全ての災害を網羅できるように防災学習カリキュラムを作成するなどの工夫が必要である。
 また交流を通して判明した共通課題は、いずれの大災害でも発生直後には必要な情報が不足していることである。行政やマスコミが発する情報による対応では遅く身を守ることができないため、その場に応じた一人ひとりの判断と行動が必要であり、生徒に身につけさせたい能力であると感じた。また二次災害防止と復旧・復興のためには地域コミュニティとの連携が重要であり、交流各校における地域連携の工夫は本校にとって大いに参考となった。

 

活動内容写真

  • 世界津波サミット グループ討議

  • 多賀城高校交流 独自教材の開発

  • 階上中交流 地域連携を協議

  • 南三陸 高野会館より防災庁舎

  • DR3が全クラスで指導

  • ハザードマップを共有

  • クロスロード・ジャッジ場面

活動において工夫した点

すべての防災活動・学習において生徒が主体となるように計画・指導している。校内で実施する年2回の防災学習をDR3メンバーが主体となって計画し、各クラスでの進行もメンバーが中学1年生~高校2年生に分かれて進行している。計画段階では交流校の実践事例を学んだり、交流校来校時に試行から助言を受けたりして計画の見直しを図った。担当教員は活動機会の設定とスケジュール調整、必要物品の調達、環境整備、地域コミュニティへの連絡等でDR3活動や交流校の生徒を支援した。
 学校交流は当初1校のみであったが、9月研修時の教員交流により1校への訪問が実現し、11月世界津波サミットにおいて同じ班で活動した北海道の高校1校ともZoom会議による交流が始まった。2月22日の実践報告会において、さらに2校の高校と今後交流を進めることが決まった。交流する学校の地域で発生した災害はそれぞれ時期や災害の種類が違うため、抱えている課題は異なっている。交流によりこのような実態を生徒が実感することが、様々な災害に対する震災(Disaster)・復興(Reconstruction)・減災(Reduction)・レジリエンス(Resilience)の担い手となるための基礎的な資質・能力になると思われる。

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