低中学年児童も防災・減災に関する知識に日常的に触れることができる学習環境づくり
山梨学院小学校
活動に参加した児童生徒数/1学年76人、4学年76人
活動に携わった教員数/4人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/152人
実践期間2020年8月31日~2021年3月5日
活動のねらい
①活動の目的
本活動の目的は「低中学年の段階から、児童の内面に一定程度の防災・減災に関わる知識(whatやwhy)や関心を培うこと」にある。それによって、従来から行っている避難訓練(how)や高学年の教科における防災・減災の学習の効果を高めていきたい。
②目的の設定にいたる背景
自然が豊かな山梨県は、防災・減災の観点から見ると津波以外のほぼすべての自然災害のリスクを抱える地とも言える。甲府市に位置する本校には、南北100kmを超える広範な範囲から児童が通学しており、近年では、台風や大雪による公共交通機関の停止や臨時休校を複数回経験している。
このような地理的・社会的な条件をもつ本校では、災害時に、いかに行動するか(how)を学ぶ防災訓練は計画的に設定されているものの、この地にどのような災害リスクや災害の歴史が存在し(what)、なぜそれがリスクなのか(why)を学ぶ学習の機会は、対象となる災害が多種広範囲にわたることから、必ずしも十分ではない。特に低中学年においては、上記のwhatやwhyを学ぶ機会や教材、そして時間は決して十分とは言いがたい。
そこで、広く全校児童(特に低中学年児童)が防災・災害に関わる多様な知識を身につけたり、関心を持ち続けたりするために、「学校全体の学習環境づくり」によって、「朝の登校時から休み時間を含む下校時までの日常生活全般の中」で、これらの知識に触れることができるようにする。また、これをベースに教科の時間における学習をリンクさせ、上記の目的を達成したいと考えた。
活動内容
1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
※資料参照
①「防災・減災学習パネル」の作成……地震、火山噴火、台風・大雨、大雪の4つのカテゴリーで、災害の概要や過去の被害等をまとめたパネル(A1サイズ24枚)とその学習ガイド計30枚を作成した。
②「防災・減災学習パネル」の校内各所への日常的な掲示……作成した学習パネルを、校内の階段やスロープ等、児童や来校者の目に触れる場所に掲示した。
③「防災・減災学習パネル」を利用した学習……1年生と4年生、計152名を対象に「防災・減災ウォークラリー」を各学年とも2回実施した。1年生は生活科「あんぜんなくらし」と、4年生は理科「雨水の行方」と関連づけて実施した。
④保護者への取り組みの紹介……コロナ禍による保護者来校行事の中止や変更が生じたため、全校の保護者を対象としての紹介は3月上旬の参観日に実施した。また、児童の学習時期に合わせて学校ホームページでも紹介した。
2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
昨年度まで(助成金・研修受講前)と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
①「発達段階を踏まえたカリキュラム開発」の視点を学び、「防災・減災ウォークラリー」の問題数やふり返りの設問を1年生と4年生で変えて実施した。また、「防災学習シート」の冊子を参考に「防災・減災学習パネルの見方・学び方」のパネルを追加作成して、児童自身によるパネルの内容読み取りをうながした。
②「震災後の避難状況」を学び、「防災・減災学習パネル」の内容に火事や停電、交通機関の麻痺等、災害の後に顕在化する二次的な被害を取り上げた。
③助成金により、これまで構想にとどまっていた今回の活動を初めて実践に移すことができた。
3)実践の成果
①減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
・パネルの掲示という「学校全体の学習環境づくり」によって、低中学年を含む全校児童に対して、当地に存在する自然災害の種類や過去に生じた被害等の知識を得ることができる環境を整備することができた。
②児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
・作成した「防災・減災学習パネル」を日常的に掲示することで、掲示後の半月で半数の児童が一定程度、内容に目を通した。さらに、実施方法に変化をつけた2回の「防災・減災ウォークラリー」によって、参加した全員の児童が、この地に存在する災害リスクや災害の歴史を学ぶ経験を積んだ。
・学習後のふり返りから、児童が特に印象的に学んだ内容は、①富士山噴火の歴史や可能性、②当地における過去の災害の様子(洪水や大雪)、③自然災害(地震や大雨、噴火)の際に生じうる被害の内容であった。このことから今回の活動が、低中学年の児童を、従来の教科学習では扱いきれていなかった防災・減災につながる内容に興味をもって学ぶ上での橋渡しの役割を果たしたと考えられる。
・「防災・減災学習パネル」の内容は、低中学年の学習指導要領で扱う範囲を超えた発展的な内容であるが、校内ウォークラリーの形式を取り入れたことにより「難しいけれども(知ることが)楽しい」(児童談)という意識で学び、自然災害についての興味を持つことができた。特に、4年生のふり返りからは、1回目から2回目へと学習を重ねることで、理解を深め、より多くの興味をもつようになった様子がうかがえた。
③教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
・「防災・減災学習パネル」作成の過程で、教師自身がこの地における過去の災害の歴史や、現在の各市町村のハザードマップの内容について、多くを知ることができた。
4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
①「学校の博物館化」をうたった校内各所へのパネル掲示は、日常生活の中で防災・減災にかかわる情報に触れるという意味で有効である。一方で、掲示しただけでは、内容の読み込みに至らない児童も一定の割合でいるので、今回のように授業での活動と組み合わせることが効果的である。
②「難しくはない」「難しいけれども楽しい」という意識で学んだ児童が多く見られた一方で、パネルの内容の読み取りに難しさを感じた児童も一定の割合で見られた。居住する地域における自然災害のリスクや過去の被害について、いかに平易な表現で伝えるかは、さらに検討を要する。
※資料参照 ①「防災・減災学習パネル」の作成……地震、火山噴火、台風・大雨、大雪の4つのカテゴリーで、災害の概要や過去の被害等をまとめたパネル(A1サイズ24枚)とその学習ガイド計30枚を作成した。
②「防災・減災学習パネル」の校内各所への日常的な掲示……作成した学習パネルを、校内の階段やスロープ等、児童や来校者の目に触れる場所に掲示した。
③「防災・減災学習パネル」を利用した学習……1年生と4年生、計152名を対象に「防災・減災ウォークラリー」を各学年とも2回実施した。1年生は生活科「あんぜんなくらし」と、4年生は理科「雨水の行方」と関連づけて実施した。
④保護者への取り組みの紹介……コロナ禍による保護者来校行事の中止や変更が生じたため、全校の保護者を対象としての紹介は3月上旬の参観日に実施した。また、児童の学習時期に合わせて学校ホームページでも紹介した。
2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
昨年度まで(助成金・研修受講前)と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
①「発達段階を踏まえたカリキュラム開発」の視点を学び、「防災・減災ウォークラリー」の問題数やふり返りの設問を1年生と4年生で変えて実施した。また、「防災学習シート」の冊子を参考に「防災・減災学習パネルの見方・学び方」のパネルを追加作成して、児童自身によるパネルの内容読み取りをうながした。
②「震災後の避難状況」を学び、「防災・減災学習パネル」の内容に火事や停電、交通機関の麻痺等、災害の後に顕在化する二次的な被害を取り上げた。
③助成金により、これまで構想にとどまっていた今回の活動を初めて実践に移すことができた。
3)実践の成果
①減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
・パネルの掲示という「学校全体の学習環境づくり」によって、低中学年を含む全校児童に対して、当地に存在する自然災害の種類や過去に生じた被害等の知識を得ることができる環境を整備することができた。
②児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
・作成した「防災・減災学習パネル」を日常的に掲示することで、掲示後の半月で半数の児童が一定程度、内容に目を通した。さらに、実施方法に変化をつけた2回の「防災・減災ウォークラリー」によって、参加した全員の児童が、この地に存在する災害リスクや災害の歴史を学ぶ経験を積んだ。
・学習後のふり返りから、児童が特に印象的に学んだ内容は、①富士山噴火の歴史や可能性、②当地における過去の災害の様子(洪水や大雪)、③自然災害(地震や大雨、噴火)の際に生じうる被害の内容であった。このことから今回の活動が、低中学年の児童を、従来の教科学習では扱いきれていなかった防災・減災につながる内容に興味をもって学ぶ上での橋渡しの役割を果たしたと考えられる。
・「防災・減災学習パネル」の内容は、低中学年の学習指導要領で扱う範囲を超えた発展的な内容であるが、校内ウォークラリーの形式を取り入れたことにより「難しいけれども(知ることが)楽しい」(児童談)という意識で学び、自然災害についての興味を持つことができた。特に、4年生のふり返りからは、1回目から2回目へと学習を重ねることで、理解を深め、より多くの興味をもつようになった様子がうかがえた。
③教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
・「防災・減災学習パネル」作成の過程で、教師自身がこの地における過去の災害の歴史や、現在の各市町村のハザードマップの内容について、多くを知ることができた。
4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
①「学校の博物館化」をうたった校内各所へのパネル掲示は、日常生活の中で防災・減災にかかわる情報に触れるという意味で有効である。一方で、掲示しただけでは、内容の読み込みに至らない児童も一定の割合でいるので、今回のように授業での活動と組み合わせることが効果的である。
②「難しくはない」「難しいけれども楽しい」という意識で学んだ児童が多く見られた一方で、パネルの内容の読み取りに難しさを感じた児童も一定の割合で見られた。居住する地域における自然災害のリスクや過去の被害について、いかに平易な表現で伝えるかは、さらに検討を要する。
活動内容写真
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活動において工夫した点
①「防災・減災学習パネルの作成」では、低中学年児童にも分かりやすいものとなるよう、1枚のパネルにつき1つのテーマに絞り込み、「問い→答え→解説」の3段階を基本のフォーマットとした。 また、平易な言葉遣いやふりがな、図や写真の多用に努め、“目で見てわかる”ように心がけた。
②「防災・減災ウォークラリーの実施」では、児童の興味・関心を喚起し、なおかつ理解が深まるよう、方法に変化をつけて2回にわたって実施した。
1回目は24枚のパネルについて大づかみにとらえることをめざし、2回目は各々の内容について具体的な読み取りをめざした。そのために、1回目は「驚いた」「ためになった」「詳しく知りたい」などのカテゴリーを設けた学習カードに、第1位、2位を探してメモする方式とした。また、2回目は、各々のパネルに対応した「問題」を追加で掲示し、ビンゴカード形式の学習カードを用いてポイントを競うことを楽しむ方式とした。
資料ダウンロード
資料なし