防災・減災を考える~「問い」を活かした授業で防災・減災に迫る~

川崎市立新作小学校

活動に参加した児童生徒数/1~6学年412人
活動に携わった教員数/16人

実践期間2020年6月~2021年1月

活動のねらい

防災リテラシーの育成を通して、児童だけでなく、教職員も含め「災害時に生き抜く力」に気づき、
またその力を育成する。
※防災リテラシーとは
自然災害の発生メカニズム、地域の自然環境や過去の災害、防災体制の仕組みなどをよく理解し、
災害時における危機を認識して、日常的な備えを行うとともに、的確な判断の下に自らの安全を
確保するための行動を迅速に取れる能力。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
防災教育チーム 学校危機管理チーム
6月 ・各学年のカリキュラムの中で、どのような防災教育ができるか検討
・指導計画立案
避難訓練の計画立案
物品購入計画作成
7月~1月 授業実践
1年 特別活動
「へやの中のあぶないポイントをみつけよう」
2年 特別活動
「じしんから自分をまもろう」
3年 社会
「地いきの安全を守る~火事からまちを守る~」
4年 国語「もしものときに そなえよう」
5年 理科「わたしたちのくらしと災害」
6年 理科「大地のつくりと変化」
避難訓練の実施(全6回)
・地震発生時における初期行動
・火災発生時における初期行動
・避難経路の確認
・授業時における避難行動
・休憩時における避難行動
・6都市合同防災訓練参加
保護者引き渡し訓練(1年生)
班別での集団下校(2~6年生)
・不審者が校内に侵入してきたときの初期行動
・職員体制の確認
・児童への事前通知はしない抜き打ち訓練
危機管理マニュアルの作成
2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
  
昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
【研修会の学びから】
本校での昨年度までの防災教育は、主に年数回の避難訓練の事前・事後指導で実施していた。本プログラムへの参加により、今年度は教科・領域の学習の中で防災リテラシーを高めることを目的とした学習活動を実践することができた。授業計画においては、9月の研修会の資料として頂戴した気仙沼市教育委員会の「防災学習シート」が大変参考となった。
【助成金の活用】
○講師を招いての研修
課題を自分事として考え、課題に対する問いをもち、主体的に学びに向かう姿勢を育成するための授業改善を狙いとし、立正大学心理学部特任教授 鹿嶋真弓先生・桜美林大学教職センター教授 石黒康夫先生を講師に招いて、「問いを創る授業」について職員研修を行うことができた。
 
○大型ホワイトボード
グループでの話し合いに活用することで、友だちの意見に触れて自分の考えを広げたり、深めたりする姿が見られた。
 

3)実践の成果
減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
実際に地震が起きたとき、大人の目が必ずあるとは限らない。避難訓練も学校では計画的に行っているが、避難の仕方とは別に、「自分の命を守る方法を考える」という意味で、今回全クラスでの一実践を行ってよかった。
全体を通して、児童一人一人が主体的に学習に参加して課題に取り組むことができたとともに、先生の指示を待つのではなく、地震が起きたときに自分から避難行動をとる方法を考えたり、自分の住んでいる地域の特徴を踏まえて自然災害から身を守る方法を考えたりすることができた。

児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
【低学年】
「部屋の中ではどんなところが危険か」や「通学路で地震が起きたらどうするか」という内容の学習を通して、避難訓練の合言葉「おかしも」の他に、「おちてこない、たおれてこない、いどうしてこない」ところで身を守るということは、どの場所でも共通する避難行動だと気付きが広がっていた。
 

【中学年】
単元の初めに近年起こっている自然災害について、知っていることを話し合うことで、いつか自分の身に起こるかもしれない自然災害についての知識や備えの必要性について気づくことができた。
自分が知りたい自然災害のテーマを選ぶ中では、「おじいちゃんの家が雪国だから大雪のことを調べたい。」「台風に備えて家の人が、食料を備蓄していたから、台風の備えについてもっと知りたい。」など、自分と関係があるテーマを選ぶ児童が多くいた。そのため、調べ学習にも意欲的に取り組むことができた。調べて考えたことを友だちと伝え合う学習においては、自然災害に対する友だちの考えを聞くことで、さらに防災に対する意識が高まった。
  
【高学年】
5年生の実践では、教科書に載っている資料や写真だけでなく、自分たちの地域のハザードマップや避難所マップを活用したことで、防災や減災が身近でしっかりと行われていることを知ることができた。また、自分たちの命を守るためにはどんな行動をとったり、どんな備えをしたりすることが必要なのかを具体的に考えることが
できた。
6年生は、理科の校外学習での地層見学と関連付けて実践を行った。「こんなに身近に地層が見られる場所があったなんて驚いた。」というものもあり、自分たちの住んでいる地域の大地について学ぶことで、防災や減災に関して、深く関心をもつことができたように感じている。
 

教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
児童だけでなく、まず教職員が防災教育への意識を高めるとともに、その指導法を学ぶために、全クラスでの1実践を行った。学年で授業計画を話し合ったり、授業を実践したりすることを通して、教科・領域の学習活動において防災教育を行うことの効果について実感することができた。

 

4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
今回はインターネットのホームページからイラストを出力したものや、購入した防災教育用の教材を掲示したが、より学習課題を自分事として捉えさせるのであれば、実際の通学路の写真を撮って教材にするのもよいと思った。そうすることで、より具体的に自分の命を守る方法を考えることができると感じた。
また、事前に一人一人の防災意識について家庭ではどんな取り組みをしているか等のアンケートをとり、学校での防災教育の活動についてお知らせする機会をつくると、地域としての防災意識も高まると考える。
今後、小学校生活6年間を通して防災リテラシーを身に付けていくため、毎年の実践を見直していくとともに、本校独自の防災教育カリキュラムを作成していきたい。

 

活動内容写真

活動において工夫した点

本校は、本プログラムへの参加以外にも、川崎市教育委員会の防災教育研究推進校として防災教育の推進に取り組んだ。その拠出金で購入した防災教育用教材(大型絵本、防災カードゲームなど)も活用して実践に取り組んだ。
また、本校の校内研究として取り組んでいる「課題を自分事として捉え、課題に対する問いをもち、主体的に学びに向かう姿勢を育成するための授業改善」の視点から、子どもの興味・関心や既存の知識とのずれから生まれる「問い」を大切にした授業づくりを意識しながら防災教育の実践を行った。

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