「避難経路マップで育む‘主体的・協働的・創造的’な地域との繋がり」~基盤となる当事者意識を涵養する~

京都市立紫野高等学校

活動に参加した児童生徒数/2学年40人
活動に携わった教員数/5人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/20人

実践期間2017年7月4日~2017年8月29日

活動のねらい

①「当事者意識」を持たせることで、防災に対する想像力を養い、普段の生活から「災害により起こりうる被害」を最小限に抑えるために、物心両面の備えをすることができる。
②災害に遭遇した際に、「自分にできることは何か、何が求められているのか」を冷静に判断し、災害現場で求められる「自らを助け」「他者を助ける」ための適切な行動をとることができる。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
〇7月4日(計2時間)
1限目は「防災クロスロード」を実施し、災害時に直面する様々なジレンマの疑似体験をした。それにより、災害対応を自らの問題として考え、様々な意見や物事の捉え方を共有した。
2限目は「ライフライン復旧までの1週間を生き延びるために何が必要か~私たちの防災リュック~」についてグループワークを行った。それにより、自治体が提示する「災害時に必要なもの」を確認するのではなく、生徒自身が自らの生活をベースに「本当に必要なものは何か」を議論することで、「何がなぜどのような場面で必要なのか」を考えた。

〇7月11日・7月18日(計3時間)
「紫野高校の避難経路」の作成のため、フィールドワークを実施した。単に歩くのではなく、1限・2限の授業で培った「実際の災害を想像すること・高校が地域の避難場所であること」を意識し、子供や高齢者の目線も取り入れた上での危険個所、避難場所、避難ルートなどの確認をし、気づきの積極的な交流を行った。

〇7月18日(計1時間)
「フィールドワーク」で得た情報の集約と、意見交流を行い、大きなマップポスターに写真などの情報を落とし込み、避難経路の作成を行った。また運用ルール(例:災害時要援護者の避難誘導など)や、活用法(例:公民館の掲示板に貼るなど)を議論し、「地域に活きる」マップの在り方を考えた。

〇8月29日(計2時間)
「防災・減災・避難生活に必要な物品」を生徒達が実際に手に取り、使い方を学び、「避難訓練」だけでなく「避難生活のシュミレーション」を実施した。実際に「避難や避難生活をしなければならない事態」が生じたとき、率先して判断・行動するために何が必要かを考え、自助だけなく共助の面で、地域の方々への貢献の方法を学んだ。授業は地域の方・保護者・教育委員会・市役所の方々と共に実施した。

〇10月11日(計1時間)
生徒達が作成した避難経路案をもとに、避難経路を作成し直し、職員会議にて変更点と理由を説明した上で、全校生徒で避難訓練を実施した。

2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
  昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
助成金を受けたことで、防災用物品(テント・浄水器・救急セット・トイレ・防災リュック・防災寝袋)を揃えることができた。これにより、これまで画像や動画を見せるだけだった授業から、生徒達が実際に手に取り、使い方を学び、共有するという、実践的な授業が可能になった。

3)実践の成果
減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
防災用品が揃ったことで「災害発生から避難生活まで」の詳細なシュミレーションを初めて実施することができた。どこで被災するかわからないことを考えると、一度生徒がこれを体験できることは、被災現場で自助だけでなく共助の面でも重要であると考える。また、この授業をきっかけに、避難経路の見直しも行われ、学校全体としても防災意識が高まった。

児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
防災を積極的に自分事として捉える当事者意識の芽生えがみられた。防災用品の使い方を学び、他の人に説明できるようになるだけでなく、マニュアルに無い効果的な使い方を提案できるようになった。その意味で、持っている知識や技術をつなぎ合わせて、場に合わせた答えを創り出していく応用力が身についたといえる。

教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
授業には保護者・地域・教育委員会・市役所の方々も生徒と一緒に参加していただいた。参加者からは「生徒の逞しさが伝わってきた。生徒ならではの防災の視点を共有することができ学ぶことが多かった」という意見があった。生徒からも「大人の持っている知識や経験にハッとさせられた。年齢の上下関係なく議論をすることができて良かった」という感想が多くあり、両者にとって防災を学ぶ上で良い機会となった。

4)実践から得られた教訓や課題と今後の改善に向けた方策や展望
防災を自分事として捉える仕掛けを授業にいくつも組み込むことの重要性を改めて認識した。授業が40名ほどだったため、防災意識を広めるという観点で課題を感じる。対策としては、この授業を学校行事に組み込むなど、生徒全体が同じ認識を持てるような仕掛けを作っていくことが望まれる。

活動内容写真

  • 防災授業

  • 防災授業(フィールドワーク)

  • フィールドワーク(調べたことをマップに書き込む)

  • 防災授業(簡易トイレの作り方)

活動において工夫した点

防災物品の使い方を教師が提示することはなく、生徒自身が調べ、周りの人に説明をし、さらに新たな使い方を考案させたこと。災害時から避難生活まで、一連の流れをシュミレーションしたこと。管理職も授業に参加したことで、これまでの避難訓練の経路の課題が学校レベルで共有でき、改訂につながったこと。

資料ダウンロード

資料ダウンロード