未来の七郷~荒浜からの学びを生かして~

仙台市立七郷小学校

活動に参加した児童生徒数/6学年164人
活動に携わった教員数/9人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/61人

実践期間2018年4月27日~2019年3月15日

活動のねらい

旧荒浜小学校の側にある「冒険広場」は,東日本大震災で被災し大規模な改修工事を行っている。海から約300メートルの場所にあったため,津波でたくさんの樹木がなぎ倒され,裸同然になった公園だが,種が落ち実生の苗が育っていた。しかし,工事によってその場所も埋め立てられてしまうことを聞き,当時4年生だった児童はその苗を保護することにした。2年間学校で世話をしてきたが,平成30年7月の冒険広場のオープンに合わせて植樹し,防災林の再生に関わることで,自分たちの町の防災に役立つ活動をしているという意識を持たせたい。最終的には「未来の七郷の町作り」の学習に繋げていきたい。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
1次 「荒浜編」20時間 荒浜の良さを調べ,地域住民のつながりの良さが防災面でも役立つことに気付き,七郷の良さを再発見するとともに地域の一員として自分たちにできる行動を考えて取り組む。
2次 「福島編」16時間 防災の視点から城下町会津の特徴や工夫を捉えるとともに,同じ被災地である福島の人々の思いを知る。
3次 「七郷編」10時間 七郷の町を歩いたり地域の人にインタビューしたりして,その良さや課題に気付き,次単元の町作りの活動に生かす。
4次 「未来の町作り編」24時間 15年後の七郷・荒浜の姿を模型にする活動を通して,これからの社会に夢や希望を持ち,保護者や地域の方へ自分たちの思いを伝える。
第4次の「未来の町作り」は,ただの夢物語に終わらないよう,地域の方の声を聞くことに重点を置いた。七郷小周辺は実際に児童が聞いて回ったが,荒浜地区に住んでいた人は,現在,様々な場所に家を再建しており,実際に聞いて回ることが難しいため,沿岸地区再開発の際に行った住民アンケートを全員が読むことにした。100枚以上アンケートを読み,荒浜地区がどのように復興して欲しいか,住んでいた人の思いを理解することができた。その上で,①セーフティ(安全性)②サスティナブル(持続可能性)③ユニバーサル(普遍的・共通)の3観点を意識した町を模型で表現することにした。

2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
  昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
職員向けにESDの研修会と気仙沼・石巻の現状を報告する会を設けた。防災教育の重要性について職員全体で再確認することができた。次年度以降も七郷小では防災・安全の学習を続けていく。
6年生は,昨年度までは,学校周辺を探索して見付けた「ふるさと自慢」「もっとこんな物があったらいい」と考えたものを「未来の七郷」の模型に反映させてきた。今年度は,助成金を活用したことで,6年生全員が荒浜を訪問できたので,荒浜の未来についても考えることができた。そこで,七郷と荒浜周辺の2部構成で模型を作ることにした。また,現在の海岸整備や再開発の様子にも興味を持つことができ,地域の復興の様子も感じることができた。

3)実践の成果
減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
本校独自で製作している防災・安全の学習で扱う目標や内容は,新指導要領とも合致している。各学年で実施した単元で,継続が難しいものについてのみ内容を改訂していくことにした。(1月下旬に次年度の防災学習について校内で検討会を実施予定,そこで取捨選択していく。)

児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり,どのような力(資質・能力・態度)を身に付けたか。
荒浜を訪れ,防災林について「守ってくれてありがとう」「30年後の防災林のためにこれからも植樹活動をがんばりたい」という児童が多く見られた。植樹活動は,長く故郷とつながるきっかけになると考えられる。自分にできることを具体的に考える力も付いてきた。また,防災の視点や地域の人の思いを取り入れた「荒浜カルタ」を作成した。自分が植えた松の木に対する思いや,復興への思いが反映されていた。(当日実物持参)

教師や保護者,地域,関係機関等(児童生徒以外)の視点から
植樹の活動については今後も継続したい。複数年にわたる学習活動になることも考えられるので,学校全体での取組と仙台市百年の杜推進室をはじめ,関係機関に協力してもらいながら活動していきたい。市民活動として植樹に参加している児童も年々増えているので,学校としてもサポートしていきたい。
児童の考えた「未来の町」は,「七郷の地域の方へ向けて」,「荒浜の方へ向けて」,「保護者へ向けて」の3回に分けて発表会を行った。(5年生も発表会に参加した。)招待した荒浜の方は高齢の方が多く「震災のことを早く忘れたいと思ってきたけれど,若い人たちはこうやって未来のことを考えていて,すごいと思ったよ。」と感想を述べていた。「発表会を見に行った日の夜はうれしくて眠れなかった」という手紙もいただいた。被災後は,仙台市の様々な場所で生活しており,コミュニティが解体してしまった現在,発表会に招待することで荒浜地区に住んでいた方の顔合わせの機会となった。8年経った今も,荒浜地区へ足を運ぶことができない人もいるそうで,そのような方にも,児童の作成した「未来の町」を見せたいというご意見をいただいた。児童の活動が,荒浜の方の心の復興につながればと思う。
童の考えた「未来の七郷」は,例年,地下鉄荒井駅に隣接している3・11メモリアル交流館に展示してもらい,地域の方へも児童の思いを伝えている。今年度は,若林区民参画イベントにも展示され6年児童もそれに参加した。

4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
震災後から取り組み始めた本校の防災教育は次年度から大きな転換点を迎える。これまでは、震災を体験した児童を対象としてきたため,児童の心のケアに配慮し,尚且つ復興に向けて前向きな気持ちになれるような学習プログラムを考えてきた。次年度以降は,震災の記憶のない子供たち,震災時まだ生まれていない子供たちの世代になる。心のケアだけでなく震災をどのように自分事として捉えることができるかが重点課題になってくる。そのため,既存の学習プログラムを変更していく必要がある。多重防災の一端を担う松林の再生として植樹活動を行ってきたが時間も費用もかかる。関係機関に協力してもらい今後も継続できるように働き掛けていきたい。 また,アクサ・ユネスコ減災プログラムに参加した,全国の先生方とのつながりを大切にして,今後も情報交換をしながら防災教育を推進していきたい。

活動内容写真

活動において工夫した点

本校独自で開発した防災安全の学習の指導要領があり,それを基に授業を展開している。(別紙資料)その際,発達段階に応じて必要な知識・技能を習得できるように,6年間でどのような内容を指導していくか系統立てて取り組んでいる。また,各学年の教科と関連させた横断的な取組ができるように単元を構成している。

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